「オールド」 時間は有限
「シックス・センス」のM・ナイトシャマランの最新作です。
彼の作品は登場人物もそして観客も何も情報がない状況に置かれた中で、じわじわと不穏な出来事が起こり、次第に主人公も追い込まれていくということが描かれていくことが多い。
見ている我々も登場人物と同じように、追い込まれていく気分を味わうことになります。
この辺りの感覚を描くのがナイトシャマランは非常にうまく、本作でもその腕は健在だと思います。
心理的に追い込まれていくスリラーの感覚と並んで、彼の作品では「どんでん返し」の要素もとかく言われます。
最後まで見て「えっ!」となって、終了!という展開がいくつかの作品でありましたよね。
映画が終わってもモヤモヤした気分は残るという印象です。
それは高い評価として受け止められることもあれば、投げっぱなし感もあるため不親切に感じる方もいたかと思います。
本作について言うと種明かしはありますが、非常に親切です。
これもナイトシャマランのどんでん返しが好きな方には物足りなく感じられるかもしれません。
ただ最後にきちんと着地しているため、モヤモヤは残さずすっきりとした印象で映画を見終えることはできます。
ここは彼がどんでん返しのこだわりを捨て、映画として観客にメッセージをちゃんと伝えることを意識したと言う点で円熟してきたとも言えるかもしれません。
何組かの家族が訪れたのはプライベートビーチ。
彼らはバカンスを楽しみますが、しばらくすると異変に気づきます。
そのビーチでは通常よりもものすごいスピードで老化が進んでいくのです。
幼かった子供たちはみるみるうちに成長していきます。
彼らはビーチから脱出を図ろうとしますが、そうしようとすると頭を圧迫される感覚を覚え、気絶してしまうのです。
そこで過ごすと1日あたり50年程度老化が進むらしい。
人間のほぼ一生分です。
人生があと1日で終わると知った時、人は何を思うのか。
ビーチを訪れた主人公夫婦は彼らの間にトラブルを抱え、離婚の危機にあります。
諍いがある前提として、人は残り時間はまだまだあるというように皆が思っているということがあるかと思います。
だから目先の小さな不満に目がいく。
けれど時間がないことがわかった時、何が本当に大切なことなのかにようやく目がいくのです。
この夫婦も自分たちの時間がもうないと悟った時、ようやく本当に大切なことに気づきました。
だからと言って二人が救われることはないのですが、えてして時間は残酷なものです。
ですが、気づけたいうこと自体はよかったのかもしれません。
元のままだったら気づくことすらできなかったのかもしれないのですから。
私はかなり歳をとってから娘を授かったので、なんとなく娘が大人になり子供を産むまで生きていられるのだろうか、と考えるようになりました。
一人っ子ですし、娘の成長の過程を見ることはたった一回のかけがえの無いものとして考えています。
だから一緒に過ごす時間をなるべく取りたいと考えていますが、これも時間が有限だと感じているからです。
普通に生きていると時間が有限であるという感覚はあまりありません。
無駄な時間も過ごしてしまいます。
しかし、限られたものであることを認識した時、何が大切か改めて考えることになるのだと思います。
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