「マスカレード・ナイト」巧みなミスリード
好評であった「マスカレード・ホテル」に引き続き、木村拓哉さん・長澤まさみさん主演での第二作目となる「マスカレード・ナイト」です。
刑事という仕事は犯人を探すという職務であることから人を疑うのが仕事です。
木村さんが演じる新田は敏腕刑事であり、まさにそれが徹底されているからこそ、今まで結果を出してきたのだと思います。
対してホテルマンが目指すのはお客様に最高の時間を過ごしていただくことであり、そのためには人を信じなくてはいけません。
長澤さん演じる山岸はまさにそのホテルマンの理想を徹底的に追求し、人を信じ抜こうとします。
前作では二人がその正反対の価値観をぶつけ合い、そして次第にお互いに認めあっていくという大きな流れがありました。
本作ではそれを前提とし、新田と山岸は自分の行動基準はしっかり持ちつつも、お互いの価値観も認め合っています。
警察側がホテル側から思うように協力を引き出せないことを苛立つ中で、彼らの立場を説明するのは新田ですし、ホテル側が警察のやり方に不満を持った時に、警察側が目指すことを話すのは山岸です。
前作は主人公ふたりの対立でしたが、本作では組織として警察とホテル側が対立している様子がより強く出ていたように思います。
その中で、新田・山岸の二人は相手の組織の価値観も理解して動こうとしています。
ミステリーとしてのストーリーもなかなかのものでした。
前作の時もそうでしたが、容疑者となる人々は演技の実績もある名俳優たちです。
そのためキャスティングだけでは犯人の想像はできません。
本作は演技巧者を巧みに配置しているんですよね。
なんとなくこの人はこんな役柄が多いといったステレオタイプなイメージで犯人が想像できてしまう場合がありますが、本作はその手はなかなか難しい。
例えば、木村佳乃さん。
この方は最近出演している作品でも、非常に振れ幅の大きい役柄を演じています。
良き妻の時もあれば、冷酷な殺人者の時もある。
最近はその振れ幅を大きさを利用したキャスティングであっと言わせたミステリーもありました(「ドクター・デスの遺産」)。
ミステリー作品の犯人当てはストーリーやトリックなどから論理的に導き出すのが筋ではありますが、あまりに疑わしそうな登場人物はミスリードと見て、犯人ではないと考えたりしますよね。
本作はそのようなミステリーを見る者の習性すらもミスリードのために使っています。
詳しくは語れませんが、この点はこちらの作品を実際に見てストーリテリングの見事さを味わってみてください。
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