「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」籠の中の鳥
前作「ザ・ファブル」は岡田准一さんの邦画とは思えないほどのアクションが見応えがあり、次回作があるということで期待していました。
「SP」の頃から岡田さんのアクションはただの俳優のレベルを超えていましたが、本作も全てご自身でアクションシーンを演じています。
さらには本作では岡田さんが一人でファイトコレオグラファーを務めています。
まさに日本のジャッキー・チェンと言ってもいいでしょう。
冒頭の車の暴走アクションも見応えありましたが、なんと言っても本作はマンションの足場が崩れる中でのアクションシーンですね。
足場でのアクションと言えばジャッキーの「プロジェクトA2」が思い浮かびますが、立体的な空間でのアクションが見どころです。
岡田さんのアクションもかなり立体的なんですよね。
さらに彼の場合はアクションも高速なので、さらにスピード感があり、見応えがありました。
なかなか邦画では味わえないアクションシーンでした。
本作に登場したキャラクターで興味深かったのは、敵役となる宇津帆です。
彼は表の顔は子供たちの安全を守るNPO団体の代表ですが、裏の顔は過保護に育てられた若者を拉致監禁して金を奪うという極悪な男です。
表の顔の立場の時、彼は子供たちの安全を守るために、転がっている石も拾っていかなくてはいけないと言います。
これは表の顔の時のただのお題目のように彼は言っているように感じるかもしれませんが、そうではありません。
宇津帆を中心に、足が不自由な佐羽ヒナコ、殺し屋の鈴木は同じマンションで暮らしていますが、彼はチームのメンバーをまさに家族のように扱っています。
中でもヒナコは障害があるためか、娘のような気の使い方をしているようにも見えます。
その反面、実際は彼はヒナコに対して日常的に暴行を加えているようですし、さらには彼女の両親を殺して彼女の行き場を奪った張本人でもあります。
彼は彼女を傷つける者でありながら、かつ彼女の最大の庇護者でもあるというアンビバレントな存在なのです。
ヒナコは宇津帆にとって「籠の中にいる鳥」なのかもしれません。
そもそも宇津帆は弟を殺さたため、ファブルに復讐をしようとしていました。
彼にとって家族はかけがいのないほど重要なのです。
そしてファブルを見つけたと同時に、彼が大事にしている家族であるヒナコの籠の鍵を開けられようとしていることに気づきます。
再び家族が奪われようとしているように宇津帆は感じたのかもしれません。
そもそも彼は他人の家族を食い物にしているわけですから、都合がいいことこの上ないわけですが、そこは彼の中では成立しているというのが、アンビバレントな異常性なのだと思います。
ヒナコに対しての愛情と残酷性もそうですが、ある意味人間の情の深さみたいなものを持ちすぎた男だったのかもしれません。
そういう意味で感情がほぼ抑えられているファブルとも対照的な存在であるように思えました。
アクションも見応えあり、ドラマとしても堪能できたので、今後もシリーズとして展開してくれてもらえると嬉しいです。
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