「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」 強いモチベーション
東京オリンピックの是非が問われている昨今ですが、本作は20年以上も前の長野冬季オリンピックのスキージャンプの実際のエピソードを元にしたお話です。
というかもう20年経っているのか、つい最近の印象だったけど・・・。
大逆転勝利で金メダルを獲ったスキージャンプ団体戦は覚えています。
特に原田選手のインタビューは印象深かったですよね。
「俺じゃないよ、みんなだよ、みんな」
これはチームメイトのことを言っていたのかと思っていましたが、金メダルの舞台裏にこのようなエピソードがあったとは知りませんでした。
主人公の西方選手は原田選手とリレハンメルオリンピックでチームメイトでしたが、金メダルを逃し、銀メダルという結果となってしまいました。
その後、長野オリンピックを目指しますが、怪我に悩まされ、惜しくも代表を逃してしまいます。
その彼が長野オリンピックのテストジャンパーのひとりとして大会に参加しました。
人はスポーツでも仕事でも勉強でもしんどいことをおこなっていく時に、なんらかのモチベーションが必要です。
そうでないと辛さになかなか立ち向かえません。
名誉だったり、地位だったり、はたまたお金だったり、そのモチベーションは様々だとは思いますが、その多くは自分のためだということが多いと思います。
自分のため、というのは悪いことではありません。
それは強いモチベーションになるからです。
西方選手は元々はジャンプが好きでジャンプを飛んでいた。
そしてオリンピックに出場し、金メダルが間近になった時、その獲得がモチベーションとなりました。
しかし、その金メダルを逃し、そして代表の座も逃した時、自分が何のために飛ぶのかがわからなくなります。
彼は勧めもありテストジャンパーとなりますが、内心はずっともやもやとしたものを引きずっていました。
しかし、彼はテストジャンパーの同僚たちと出会い、彼らの純粋なモチベーションに触れます。
聴覚障害がある選手が飛んでいる時に自由になれることが嬉しいという言葉、オリンピックに採用されていない女子スキージャンプの選手の想い。
彼らは純粋に自分自身の想いをモチベーションにして飛んでいます。
それはかつて西方選手も持っていたものでした。
そしてオリンピックの団体戦本番時、悪天候により競技続行するかどうかをテストジャンパーのジャンプによって判断することになりました。
競技続行しなければ、日本の四位は確定し、再び金メダルを逃してしまう。
彼らが成功しなければ、金メダルには辿り着けないのです。
悪天候の中でのジャンプはテストジャンパーも危険に晒します。
それでも彼らはテストジャンプに臨みました。
彼らのモチベーションは自分のためだけではありません。
自分のためだけでは、なかなかそのような危険な状況でジャンプはできません。
誰かのために飛ぶ。
それが強いモチベーションになります。
強いモチベーションは、誰かのためにという想い、そしてそのこと自体が自分自身のためであると思えることなのでしょう。
西方選手がずっともやもやしていたのは、テストジャンプをしてたとえ日本が金メダルをとっても、それは自分の名誉とはならないということ。
それによって自分は報われないということだったのだと思います。
しかし、最後のジャンプの場面では、人のためということと、自分のためということが全く一緒になったのだと思いました。
それが強いモチベーションとなったのですよね。
なかなかそのように思えることというのは難しいんですけれども・・・。
だからこそこのようなエピソードが人々の琴線に触れるのかもしれません。
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