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2021年6月20日 (日)

「ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜」 強いモチベーション

東京オリンピックの是非が問われている昨今ですが、本作は20年以上も前の長野冬季オリンピックのスキージャンプの実際のエピソードを元にしたお話です。
というかもう20年経っているのか、つい最近の印象だったけど・・・。
大逆転勝利で金メダルを獲ったスキージャンプ団体戦は覚えています。
特に原田選手のインタビューは印象深かったですよね。
「俺じゃないよ、みんなだよ、みんな」
これはチームメイトのことを言っていたのかと思っていましたが、金メダルの舞台裏にこのようなエピソードがあったとは知りませんでした。
主人公の西方選手は原田選手とリレハンメルオリンピックでチームメイトでしたが、金メダルを逃し、銀メダルという結果となってしまいました。
その後、長野オリンピックを目指しますが、怪我に悩まされ、惜しくも代表を逃してしまいます。
その彼が長野オリンピックのテストジャンパーのひとりとして大会に参加しました。
人はスポーツでも仕事でも勉強でもしんどいことをおこなっていく時に、なんらかのモチベーションが必要です。
そうでないと辛さになかなか立ち向かえません。
名誉だったり、地位だったり、はたまたお金だったり、そのモチベーションは様々だとは思いますが、その多くは自分のためだということが多いと思います。
自分のため、というのは悪いことではありません。
それは強いモチベーションになるからです。
西方選手は元々はジャンプが好きでジャンプを飛んでいた。
そしてオリンピックに出場し、金メダルが間近になった時、その獲得がモチベーションとなりました。
しかし、その金メダルを逃し、そして代表の座も逃した時、自分が何のために飛ぶのかがわからなくなります。
彼は勧めもありテストジャンパーとなりますが、内心はずっともやもやとしたものを引きずっていました。
しかし、彼はテストジャンパーの同僚たちと出会い、彼らの純粋なモチベーションに触れます。
聴覚障害がある選手が飛んでいる時に自由になれることが嬉しいという言葉、オリンピックに採用されていない女子スキージャンプの選手の想い。
彼らは純粋に自分自身の想いをモチベーションにして飛んでいます。
それはかつて西方選手も持っていたものでした。
そしてオリンピックの団体戦本番時、悪天候により競技続行するかどうかをテストジャンパーのジャンプによって判断することになりました。
競技続行しなければ、日本の四位は確定し、再び金メダルを逃してしまう。
彼らが成功しなければ、金メダルには辿り着けないのです。
悪天候の中でのジャンプはテストジャンパーも危険に晒します。
それでも彼らはテストジャンプに臨みました。
彼らのモチベーションは自分のためだけではありません。
自分のためだけでは、なかなかそのような危険な状況でジャンプはできません。
誰かのために飛ぶ。
それが強いモチベーションになります。
強いモチベーションは、誰かのためにという想い、そしてそのこと自体が自分自身のためであると思えることなのでしょう。
西方選手がずっともやもやしていたのは、テストジャンプをしてたとえ日本が金メダルをとっても、それは自分の名誉とはならないということ。
それによって自分は報われないということだったのだと思います。
しかし、最後のジャンプの場面では、人のためということと、自分のためということが全く一緒になったのだと思いました。
それが強いモチベーションとなったのですよね。
なかなかそのように思えることというのは難しいんですけれども・・・。
だからこそこのようなエピソードが人々の琴線に触れるのかもしれません。

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2021年6月19日 (土)

「モータルコンバット」(2021) ゲームの観客のように楽しむ

人気格闘ゲーム「モータルコンバット」の実写映画作品。
以前ジョン・W・S・アンダーソンによって映画化され、彼の出世作となりました。
とはいえ、私はゲームもやったこともないですし、前作も見ていません・・・。
ではなんで見に行ったかなんですが、久しぶりに真田広之さんのアクションシーンが見れるから!
彼は本作では伝説の忍者ハサシ・ハンゾウを演じておりますが、オープニングからキレのいいアクションを見せてくれます。
さすが、元JAC。
お年はもう60歳くらいだと思いますが、動きもシャープでカッコいいです。
ちなみに冒頭でハンゾウの妻は惨殺されてしまいますが、演じている女優さん、見たことあるなと思っていたら、「ミセス・ノイズィ」「罪の声」に出演していた篠原ゆき子さんでした。
パンフレットには出ていませんでしたが、ハリウッド進出ですね。
「モータルコンバット」は格闘ゲームですが、トドメの一撃であるフェイタリティがかなり残酷な描写となっており、それがアメリカではゲームのレイティングシステムのきっかけとなったということ。
本作でもその要素は引き継がれています。
格闘ゲームの映画化作品としては、他の映画よりも残酷描写は多いですかね。
アクション自体はテンポもいいですし、ダラダラと続くわけでもなく小気味いいです。
ストーリーはポンポンと進んでいきます。
まるで格闘ゲームをクリアしていくかのような感じですね。
ある意味ゲームの映画化作品らしいといえば、らしい。
本作はストーリーを楽しむというよりは、次々に繰り広げられるファイター同士の戦いをゲームの観客のように楽しむ作品と言えるかもしれないですね。

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2021年6月17日 (木)

「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」 内包する矛盾

コロナのため度重なる公開延期の憂き目にあった「閃光のハサウェイ」ですが、ようやく公開されました。
「逆襲のシャア」以降の宇宙世紀の歴史を描いていこうとする「UC NexT 0100」プロジェクトの一つです。
タイトルのハサウェイはあのブライト・ノアの息子である主人公の名です。
彼は多感な13歳の時に初恋の人の死、また自ら手をかけて人を殺めるという経験をしました。
またアムロとシャアという先駆的なニュータイプ同士の戦いも間近で見ました。
彼は二人の遺産を継ぐ存在となったのです。
アムロからは「ガンダム」を、シャアからは「地球の保全」という意志を。
これはハサウェイの中に二つの対立する要素を内包することになったのだと思います。
本作の中でもハサウェイは地球環境を守るためにテロすら厭わないという意志を持ちつつも、目の前で苦しむ人を救いたいという気持ちの間で揺れ動きます。
本作ではモビルスーツ戦の視点が今までと違う印象を受けました。
後半、市街地での戦闘が描かれますが、視点が地上の人からの視点であることが多いのです。
通常、このようなモビルスーツ同士の戦いの視点はパイロット視点であったり、客観視点であるわけですが、それとは違う。
モビルスーツが人間よりも非常に大きな兵器であり、それが街を破壊し、人々を追いやることが今まで以上に感じられ流のです。
その視点の多くはハサウェイからのものでもあります。
彼はこの戦闘の仕掛け人でありながらも、それを被害者の目線で見ているわけですね。
矛盾のある視点なのす。
目の前で人が苦しむのはそもそも彼らのテロが原因であり、この矛盾を彼は内包しているのです。
この物語がどのように展開していくのかは原作を読んでいないので知らないのですが、彼が内包する矛盾が彼を追いやっていくような予感があります。
本作に登場するΞガンダム、ペーネロペーともに異形のガンダムでした。
設定的にはミノフスキーフライトを装備しているため、あれほど大型化したということで、やはり機動している動きは他のモビルスーツとは違いましたね。
とはいえ、もう少し見てみたいという気分もありましたが、一作目ということで控えめでした。
ここは次回作に期待ということでしょうか。

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2021年6月12日 (土)

「るろうに剣心 最終章 The Biginning」 剣心の誕生

「るろうに剣心」シリーズの最終作であり、不殺の誓を立てた緋村剣心の始まりの物語。
過去のシリーズはかつて見たことのない剣劇が見どころとなっていたアクションエンターテイメントでしたが、それらとはかなり趣を異とします。
もちろんこのシリーズならではのスピード感のあるアクションはあります。
そしてそのアクションは過去作とは、剣心が人を斬るという点が大きく異なり、それはまさにその姿は鬼神か修羅のよう。
剣心が纏っている殺気が全く違います。
しかし、本作ではそこが見せ所ではないのです。
本作で描かれる剣心、いや抜刀斎は新時代を築くために、暗殺者として剣を振るっていました。
彼は硬くそれこそが人々の幸せを守るためと信じていたのです。
ある夜、彼が幕府関係者を暗殺するときに一人の若い旗本を手にかけます。
その旗本は抜刀斎の太刀を数度受けたにもかかわらず「死ねない」と生への執着を見せます。
抜刀斎から見ればただの暗殺ターゲットでしかないわけですが、彼らにも彼らが守りたい幸せがあるということに気付かされれるわけです。
そこから彼の中で次第に自分の行動に対する迷いが生じていくのです。
私は1作目の「るろうに剣心」のレビューを書いたときに「もう一人の岡田以蔵」と書いたのですが、これはNHK大河ドラマ「龍馬伝」のなかで佐藤健さんが演じた幕末の人斬りです。
このドラマでも彼は命じられるままに人を斬り続けますが、次第に迷いが出てくる役所となっていました。
私はそこに剣心に通じるものを見たのです。
まさに本作では人斬りという行為を新時代を作るための必要悪と考えていた抜刀斎が、自分の過ちに気づき剣心となるまでの物語です。
抜刀斎としての彼は人の幸せを大きな概念としてしか、考えられていなかったのかもしれません。
実際は人にはそれぞれの幸せの形があり、大きかったり、小さかったり様々です。
剣心自体がずっと修行に明け暮れており、自分自身で幸せを感じることがなかったのでしょう。
だからそれぞれの人がそれぞれに持つ小さな幸せをイメージできなかったのかもしれません。
しかし、彼は巴と出会い、初めて幸せというものを感じます。
そしてそれがいかにかけがえのないものであるということを知ります。
それは敵の策略通り彼の弱みにもなりました。
彼はその幸せを失いますが、そこで感じた地獄のような苦しみは後の彼にとって強みになります。
自分のように人々の幸せを失わせたくないという強い思い、巴を通じて得られたその思いが、その後彼がいかに強大な敵に相対しても、決して諦めないということに繋がって行ったのでしょう。
まさに剣心の誕生の物語なのです。
その剣心を生み出した女が雪代巴です。
剣心を演じた佐藤健さんも素晴らしかったですが、巴を演じた有村架純さんが物凄くよかったです。
巴は婚約者を剣心に殺され、復讐のために彼に近づきますが、人を斬るたびに傷ついていく彼の魂に触れるにつれ、彼を愛していくようになります。
彼女自身も深く傷ついているのにもかかわらず、抜刀斎を優しく受け止め、慈しみ守る女性でした。
まさに彼女は抜刀斎ではなく、剣心を生み出した慈母だったのかもしれません。
これでこのシリーズは本当に終わりですね。
良い終わり方だったと思います。

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「映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット」 キャラクターがさらに磨きがかる

浜辺美波さん主演の「賭ケグルイ」の劇場版第2作です。
もともと浜辺さんの振り切った演技が見たくて、放映したあと遅れてNetflixでTVシリーズを鑑賞し、その後劇場版を見ました。
すっかりこのシリーズにハマり、続いてアニメ版を第二期まで見て、最後は原作コミックへ。
通常とは違って遡っている感じですね。
前回の劇場版と同様に今回も劇場版のオリジナルストーリーです。
このシリーズの魅力はキャラクターの過剰なまでのハイテンションぶりと、ギャンブル勝負の際のジリジリとした緊迫感です。
前作劇場版はドラマ要素の方が強い印象を受けましたが、今回は上記の2点にフォーカスしているように感じました。
より「賭ケグルイ」らしい印象です。
キャラクターに関しては、浜辺さん演じる蛇喰夢子はコミックやアニメとはまた違う進化をしているような感じがします。
コミックの夢子はかなりグラマラスでセクシャルなのに対して、浜辺さんはご自身のイメージがそのような感じではありませんので、掴みどころのない夢子(ちょっと幼児退行しているようなふしぎちゃん)という実写版オリジナルな個性が出ているキャラクターとして確立しています。
早乙女芽亜里役の森川葵さん、鈴井涼太役の高杉真宙さんも同様ですが、まさにハマり役となっています。
また今回は生徒会長、桃喰綺羅莉もギャンブル勝負に参加し、ガッツリと登場しています。
実写版では存在感は示しつつも、自身がギャンブルをするシーンはなかったですが、今回は夢子と共にギャンブルに挑みます。
彼女を演じている池田エライザさんもまさにイメージがぴったり。
そしてギャンブルの方も緊迫感があって面白かったです。
ギャンブルを扱った映画としては「カイジ」シリーズがありますが、命懸けのギャンブルという点では「カイジ」の1作目、2作目に通じる緊張感がありました。
夢子、綺羅莉の賭ケグルイっぷりがよく出ており、次元の違うキャラクターの強さを感じました。
非常に面白く鑑賞できたので、続きが見たいなと思っていたところでのあのエンディング。
原作やアニメで描かれた生徒会長選に突入しそうな終わり方。
続編ありそうですね。
滾ってしまいます。

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2021年6月 6日 (日)

「HOKUSAI」 葛飾北斎と田中泯

富嶽三十六景などの浮世絵で知られる葛飾北斎、その生涯を描いた作品。
青年期を柳楽優弥、老年期を田中泯が演じます。
実は我々がよく見知っている北斎の作品が生み出されたのは50歳過ぎのこと。
大器晩成にも程があります。
平均寿命が短かった江戸時代でしたら、それこそ隠居という歳だったのかもしれませんが、彼は老いても尚創作意欲がなくなることはなかったようです。
彼は90歳まで生き、臨終の時の言葉が「あと10年、いや5年生かしてくれたら真の絵描きになれるのに」だったということです。
死ぬその時まで、自分に満足することなく道を探究し続けた執着、熱意は驚くべきものがあります。
私が本作を見ていて、感じるものがあったのは、老年期を演じる田中泯の演技でした。
彼を初めて知ったのは「たそがれ清兵衛」でした。
舞踏家として活躍していた田中泯にとって初めての映画出演作です。
鬼気迫るという表現がまさに当てはまるような演技でした。
俳優として映画に出演するのは初めてとは思えませんでした。
自らの肉体を使って表現する舞踏家というバックボーンが、普通の俳優とは異なる見たことのない演技を生み出したのかもしれません。
俳優としては北斎と同様に遅咲きではありますが、誰も真似できない田中泯という存在感を放ちました。
本作の彼の演技を見たときに、やはり彼の舞踏家としてのバックボーンを感じるシーンがいくつかありました。
まず一つ目は街中を旋風が通った時の人々の慌てぶりを目撃した時の北斎の様子です。
彼の目には、人の肉体の動きが克明に刻まれました。
人間の肉体がどのように動くのか。
その時筋肉の形はどのようになっているのか。
彼はそれを筆と紙でどのように定着していこうかということまで一瞬のうちに考えたのかもしれません。
そしてそれを目撃した時の北斎の表情がとても良い。
純粋に絵を描くことの悦びに満ちた表情です。
何かを表現することの喜悦です。
そしてもう一つは北斎の画で印象的な藍色を発見した時のシーンです。
その藍と出会った時、彼は雨中に飛び出し、まさに舞うように全身でその喜びを表現します。
この演技は田中泯のアドリブだったようですが、まさに舞踏家としての真骨頂だったと思います。
北斎の肉体の内面から湧き上がる言葉にできない感情、衝動。
それをこの演技で田中泯は表現したと思います。
北斎と田中泯がオーバラップしたように感じました。
まさに北斎とはこのような人ではなかったか、と感じさせられました。
柳楽優弥も悪くはなかったですが、やはり老年期のハマり方に比べると部が悪いかもしれません。

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2021年6月 4日 (金)

「劇場版 ポリス×戦士ラブパトリーナ!~怪盗からの挑戦!ラブでパパッとタイホせよ!」 監督はあの・・・

4歳娘に付き合って行ってきました。
自分の影響か、着実に映画好きとなっている娘が自分からこの作品を見に行きたいとのお願いがありましたもので。
しかし、TVシリーズは見ていないのだが・・・。
どうも幼稚園のお友達がこのシリーズ好きで色々話聞いているらしい。
それとこそこそ見ているYoutubeの動画などでも情報を仕入れている様子。
さすがデジタルネイティブ世代・・・。
しかし、プリキュアくらいまではついていけるが、このシリーズはちょっとなぁ・・・と思っていたら、監督はなんとあの三池崇史。
そういえば、以前美少女特撮ものをやるというのは聞いていたような・・・。
このお方、以前「ウルトラマンマックス」や「ケータイ捜査官7」を監督したこともあったので、特撮やるのは違和感はないのですけれどね。
子供向けでは「忍たま乱太郎」も撮っていたか・・・。
さて登場する少女戦士は全てオーディションで選ばれた子とうこと。
ですので、大人目線だと演技はかなり見ていてしんどい・・・。
シナリオもまあ子供向けではあります。
とはいえ娘は十分に楽しんだ様子。
女の子的にはカワイイ服の女の子が出てきて、悪い奴をやっっつけて、歌やダンスもあってで、好きなものが詰め込まれているんですよね。
とはいえ、所々三池監督テイストは忍び込まさせられていました。
さすがに血飛沫が飛んだりはしていなかったですが・・・。
敵の怪人(?)が特殊な力を持つラブダイヤモンドなるものを飲み込んでしまうのですが、それをう○こ的な状態で排出してしまうシーンがありました。
子供向けでありながら、こういうシーンを持ってくるのは三池監督らしい。
じゃ子供の反応はどうかというとバカウケでした。
子供はう○ことか大好きですからね!
自分としては見ていて疲れるなぁという感じだったのですが、娘は満足していたようなので、まあいいかという感じです。

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