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2020年12月20日 (日)

「劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」 かつてない敵

テレビシリーズ放映中にコロナ禍によって撮影中断となってしまい、大幅に話数が減ってしまったという不運があった「仮面ライダーゼロワン」。
それにも関わらず終盤のストーリー展開はハードかつ濃密であり、令和ライダー一作目の名に恥じない出来となっていました。
通常夏に単独映画として「仮面ライダー」シリーズは公開されますが、それも見送られ、ようやく冬の映画として公開されました。
メガホンを取るのはテレビシリーズのパイロットを担当し、「ゼロワン」の世界観を確立した杉原輝昭監督、脚本はメインライターであった高橋裕哉さんのタッグです。
この作品を熟知しているお二人が担当されているということもあり、またテレビシリーズオンエア中に公開される単独映画ではないため変な仕掛け・ギミックもないため、純粋に「ゼロワン」の世界観が味わえる作品として仕上がっていました。
歴代の単独ライダー映画の中でも非常に高いレベルに仕上がっていたと思いますが、いくつか魅力的な点を挙げていきましょう。
まずはアクションですね。
アクションを担当されているのは渡辺淳監督。
数々の仮面ライダーを演じたスーツアクターでもあり、「ゼロワン」で一年間通しのテレビシリーズを初担当されました。
テレビ第一話のアクションシーンで、凄まじいカメラワークのアクションを展開して視聴者の度肝を抜き、新しいライダーのアクションを確立しましたが、本作でもそのテイストは健在。
スピーディで斬新なアクションシーンには目を見張りました。
驚きのゼロワン、ゼロツーの共闘シーンは息を吐く暇もないほどのアクションのラッシュです。
バルキリーのバイクアクションも見応えありました。
カメラワーク、カット割りなど従来のアクションとは違うセンスが光り、新しい息吹を感じます。
次にキャラクターたちです。
元々テレビシリーズでもレギュラーのキャラクターはそれぞれに魅力的でした。
彼らが自分なりの考えを持ち、共闘し、そしてまた対立し、そして最後には認め合うようになる過程は胸が熱くなるものがありました。
それらテレビシリーズをしっかり踏まえたキャラクターの描き方になっているので、安心しました。
主人公飛電或人の真っ直ぐに人とAIの両方を信じる気持ち、そして彼を支えるイズ。
イズはテレビシリーズでずっと或人を支えていたVerが破壊されてしまったため、新たなイズではあるのですが、本作の中でその古いVerのイズの気持ちを引き継ぐことにより、改めて彼女自身の判断で或人を支えることを決心します。
それがゼロワン、ゼロツーの共闘につながることになるのですが、ここも胸熱ポイントになりますね。
<ここからネタバレあり>
あと巧妙であり、また非常に現代社会を捉えていると思ったのが、敵の設定です。
テレビシリーズの最終回で”エス”=仮面ライダーエデンとして伊藤英明さんがチラリと出て、彼が新しい敵であるような示唆がありました。
しかし結果的に或人たちが戦う最終の敵とはネットなどで一般の匿名の人々が持つ悪意であったのです。
今年は誹謗中傷により有名人が自殺してしまうなどの痛ましい事件がありました。
ネットでのいじめなどもあとをたちません。
匿名であることをいいことに悪意を誰かにぶつけ、そしてそれが拡散していく、そういったことをよく見受けられます。
まさにテレビシリーズでのラスボスであったアークは、人々の悪意が生み出した存在でありました。
それをさらに発展させ、それぞれの人々の悪意こそが人々を傷つけてしまうということを問題提起しているようにも思いました。
最終的に敵となるのはそれぞれネットで悪意のある書き込みなどを行なっていた一般人であったのです。
ちょっとしたワンカットでしたが、敵のライダー軍団の幹部の一人の正体がただの主婦で、ネットに熱中するあまり子供を放ったらかしにしている場面はショッキングでありました。
このような状況で皆それぞれ鬱々とした気持ちを抱えていることでしょう。
しかし、匿名で自分の身は安全にしたまま、それを誰かにぶつけるいいわけがありません。
現代が抱える問題を正面切って取り上げるのは「仮面ライダー」としてはかつてないアプローチであり、脚本の目の付け所が素晴らしいと思いました。

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