「映画 えんとつ町のプペル」 同調圧力
「鉄コン筋クリート」などで知られるSTUDIO4℃制作のアニメーション。
元々画作りは丁寧でクオリティが高いプロダクションですが、今回は初の全編3DCGで挑みました。
3DCGアニメでありがちなCGライクなタッチではなく、絵本のような肌触りのある作品でした。
本作を見てもはや3DCGでのリアリティさというのは差別化ポイントではなく、作品のタッチなどが重要になってくる時代になっていると認識を改めてしました。
海外ものでは「スパイダーマン:スパイダーバース」などが独自のタッチを出していましたが、技術レベルが上がってくるとその技術の差ではなく、表現の個性が改めて大切になってくるのだと思います。
今年一年を振り返ってみると、コロナ禍という状況において、さまざまな人の習性が見れたようにも思えます。
「自粛警察」なんて言葉も新語・流行語大賞にノミネートされていましたが、同調を強いるようなこともしばしば耳にしました。
色々と考えた上で同調を求めるのであればまだいいのですが、あまり何も考えずに強要することは問題がありますよね。
ある意味それは思考停止状態とも言えるわけです。
先が見通せない状況であるからこそ考えなくてはいけないわけですが、単純に同調するということは、すなわち考えなくていいということなので楽でもあるのです。
本作の舞台となるえんとつ町の人々の多くは勤勉に仕事をして生きている印象を受けます。
彼らの姿からは充実している印象を受け、ささやかながらも幸せに暮らしているように見えます。
ただ一つのタブーは、年中煙に覆われた空の向こうに何があるか、また海の先に何があるか、を問うこと。
主人公のルビッチは父の作ってくれた物語を信じ、空の向こうにある星をいつか見てみたいと思っています。
しかし、そう思うこと自体を周りの人々からは否定され、肩身の狭い思いを感じています。
これはまさに同調圧力ですよね。
真実とは異なるかもしれない、だけど皆がそう言っているからそのように思わなければいけない。
幼馴染であるアントニオはルビッチに対し強く当たりますが、実は彼は一度星を見た事がありました。
けれど、それは「ありえない」ことで自分自身でそれを否定してしまった。
だからこそ、ずっと信じていられるルビッチのことが疎ましかったのだと思います。
アントニオのエピソードは一瞬でしたが、これが本作の一番言いたかったことを集約したものであると感じました。
与えられた常識を疑うことをしない、すなわち思考停止状態に我々は自らを置いてしまう時があります。
けれどそれにより停滞しまったり、先に対して夢を持つこともできなくなってしまう。
無茶かもしれないけれど、考えて、自分が信じることをやってみる。
それが現状を打破することに繋がるかもしれない。
ルビッチの行動が、なんとなく同調をしていた人々の心の奥にあったモヤモヤに光を当てました。
きっかけを与えられ人々は考え始めたのだと思います。
エンディングでルビッチたちは海を渡ろうとしていることがわかります。
その先に何があるかわかりません。
けれど前には進んでいる。
考えて、先に進もうとすることが大事なのですよね。
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