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2020年12月19日 (土)

「サイレント・トーキョー」 いいところが見当たらない

<ネタバレあるのでご注意ください>
錚々たる俳優たちが出演するサスペンススリラーであり、まさに年末ホリデー向けのビックタイトルだと思います。
しかし正直言って面白くない。
面白くない理由はいくつかあると思います。
まずはプロット自体がそれほど新しいものではないということです。
平和ボケした日本人に対し、世界中では現在進行形で存在する戦争という現実を気づかせるのが劇中で描かれているテロの目的ですが、これは今までも何度か見たプロットであり、新味はありません。
私が見て頭に浮かんだのは「機動警察パトレイバー2 THE MO VIE」でした。
これもPKOで派遣され現地での戦争の現実を目の当たりにした元自衛官が仕掛けたテロを描いていました。
もう一つの理由は脚本・構成の悪さだと思います。
この手のサスペンススリラーは首謀者が誰であるか、その目的はなんであるのかというところが作品を牽引する力になります。
ですので上手にミスディレクションをしていくことができれば、見ている側としても感心して手を打つことになります。
ただ本作についてはミスリードをさせようという意図が割と見え見えで興醒め感がありました。
まずは中村倫也さんがいかにも現代の若者のような何を考えているかわからない体で登場し、犯人に関わるような怪しさを出していましたが、渋谷での爆発後、割と素直に犯人でないことがわかってしまいます。
佐藤浩市さんが冒頭より思わせぶりな出方をしますが、明らかに彼を犯人の一味であるとミスリードさせようとする意図を感じます。
中村倫也さんも佐藤浩市さんもクセがある役柄を今までも演じてきているので、「犯人らしい」感じを纏っているのですが、流石に今まで演じてきた役と同じような雰囲気なので、逆に怪しくない感じがしてしまいます。
また真犯人が分かり、その背景の説明がされますが、これもなかなか納得するのに無理があるようにも思いました。
そもそも一般の市民である女性があれほどの爆薬をどのようにすれば調達できるのかが謎です。
彼女に爆破術を教えた夫はその教育のための爆薬をどのように手に入れたのか。
自衛隊から掠め取ってきたのかもしれませんが、流石に自衛隊も備品(それも爆薬)を簡単に持ち出させることはないでしょう。
爆破はダミーだけをいじっているだけでは簡単に習得できないと思います。
実際に爆発させる経験がいると思いますが、あのような別荘地でそれができるとは思えない。
石田ゆり子さんが演じる犯人である女性は、爆破予告の片棒を担がせられるテレビ局のバイト君を気遣う優しさを持っているというように描かれていますが、渋谷であのような大爆発をさせ、大勢を虐殺することを厭わない人物像とどうしても被りません。
いっそのこと人格が破綻している人物として描かれていれば、まだ納得できるのですが、同じ人物の中にその二つの側面が同居していることが想像しにくい。
つまりは人物像にリアリティがないように感じました。
尺が1時間半程度とこの手のクライムサスペンスの作品にしては短いです。
元々はもっと長かったのではないかと感じました。
出演陣はかなり豪華ではありましたが、それぞれのキャラクターの描き方に深さはないです。
かなりカットされているような印象なのですね。
どうなんでしょう?
久しぶりにあまりいいところが見当たらない作品に出会いました。

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