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2020年9月28日 (月)

「TENET」 カーチェイスシーン解説

「Tenet」の2回目を見てきました。
2回目の鑑賞で全体の構造はよく分かったのですが、やっぱりわかりにくかったのはカーチェイスシーンの部分です。
このシークエンスは登場人物が順行の人、逆行の人が入り乱れるで、とてもわかりにくい・・・。
見てただけじゃわからなかったので、図式化して整理してみました。
それぞれの登場人物の矢印がその人にとっての時間の流れです。
図の上から下への流れが世界の時間の流れ(順行)ですね。
たぶん、これで合っているはず・・・。

<図はクリックすると大きくなります>

Tenet_20200928232301
・「名もなき男」視点
 基本的に映画の中で語られている順の通りに進みます。

・セイター視点
こうやって図式化してみると、このシークエンスで登場するセイターはほぼ逆行しているんですよね。
逆行を知り尽くしている彼は、逆行している自分が順行者からどう見えるかが分かっています。
キャットを撃つときも弾丸が発射された後の拳銃を取り、負傷したキャットを逆行弾で打ちます。
高速道路で名もなき男を脅かす時も、名もなき男から見れば「3、2、1」とカウントダウンされているように見えますが、逆行セイターからすれば「1、2、3」と数えているわけですね。
逆行している途中でベンツからアウディに乗り換えるところがちょっとややこしい。

・キャット視点
キャットは逆行していないので、彼女自身の動きはシンプル。
しかし、劇中で描かれているときは逆行セイターと一緒なのでとても複雑に見えます。
劇中に描かれているのは「名もなき男」視点ですので。
彼女は順行セイターに蹴られた後、フリーポートから連れ出されますが、連れ出すのは逆行セイター。
つまりAudiに彼女が乗せられた時、セイターから見ればキャットを下ろしたということになります。
劇中でもチラッとそこが映りますが、ちょっと動きが不自然な感じがあるんですよね(順行主人公と逆行主人公の格闘シーンのような)。
同様にAudiから「名もなき男」と一緒に連れ去られるところは、セイター視点で言えば(逆行弾で回復した後の)キャットをAudiの乗せたというようになります。

ややこしい・・・。
一応整理できたような気がするので、もう一回見るか・・・。

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2020年9月21日 (月)

「TENET テネット」考えるな、感じろ

クリストファー・ノーランの最新作です。
時間の逆行を題材にするという話は聞いていたので、「メメント」「インセプション」「インターステラー」的な複雑な構造の作品かと思い、伏線などを見逃さないようかなり集中して鑑賞しました。
にもかかわらず、中盤くらいまでは劇中で起こっていることが理解できずにいました。
というのも、世界の時間全体が逆行するわけではなく、時間が順行する中に、逆行する人や物があるという状況がなぜ起こっているかがわからなかったからです。
途中まで話が進んだ時に、これは考えながら見てはいけない、とふと思いました。
なぜこういう状況になっているかという謎解きの部分を考えながら見ていると、そこが気になってストーリーから振り落とされると気づいたのです。
この作品はノーランが語る物語に身を任せて、見ていった方がいい。
まさに「考えるな、感じろ」です。
語りに身を任せて見てみると、ストーリーはそれほど複雑でないことに気づきます。
主人公である「名もなき男」も最初は全容がわからないままに、絡まった紐を解くかのように任務を進めていきます。
彼と同じように、訳がわからないままに物語を見ていけばいいのです。
ストーリーテリングはノーランにしてはとても親切なので(設定が複雑なためそのようにしたのか?)、ついていく事は難しくないと思います。
 
<ここからややネタバレ>
 
原題の「TENET」とは信条という意味ですが、文字の並びが怪文となっています。
回文とは頭から読んでも、後ろから読んでも同じように読めるという文章のことを言います。
まさにこの物語は回文の構造となっています。
時間の通常の過去から未来へという通常の流れと、逆の未来から過去へという流れが混在している様を描きます。
本作の中で時間を逆行させることができる装置として「回転ドア」が出てきます。
その「回転ドア」を中心にして時間の流れが逆行する。
「回転ドア」を回した時が特異点のようになります。
このような時間の中での特異点がいくつか物語の中で登場しますが(オスロの空港のシークエンスなど)、物語全体で見た時の時間の中での折り返し地点と現在の中間にある特異点が、クライマックスでのシベリアでの爆発になるのでしょう。
ここが全ての出来事の終わりとも言えますが、全ての出来事も始まりとも言えます。
主人公は日本のパンフレットでは「名もなき男」と書かれていますが、タイトルの英語では「protagonist」とあります。
「protagonist」」とは「主役」という意味であり、「主唱者」という意味でもあります。
まさに本作の冒頭ではただの駒、パーツとして扱われていた男こそが、この壮大な作戦を作り上げた「主役」であることが明らかになるのです。
「主唱者」でもある彼は「TENET(信条)」を唱える者でもあったわけです。
基本的には主人公たちの時間の流れ(順行)で物語は進みますが、彼らが見たり体験したことは逆行してきた者たちが引き起こしたことであることがわかります。
そうなると、この物語はあらかじめ決められた出来事を追っているということなのかもしれません(運命論的な)。
とはいえ、この物語は全てがうまくいったというバージョンのものかもしれず、彼らの作戦が失敗したという幾つもの他のバージョンがある(いわゆるマルチユニバース的な)見方もあるかもしれません。
最初に見るときは、あまり考えずに感じるままに見るのが正解で、見終わった後に考察して、その後もう一回見るのがいいのかもしれません。
映像に関しては文句なし。
これはどうやって撮っているのだ?と考える場面が所々にあります。
順行の者と逆行の者の格闘シーンなどもどうやって撮ったのかさっぱりわかりません。
クライマックスの戦闘シーンも全くどうやっているだか・・・。
ノーランの頭の中はどうなっているか一度見てみたい。

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「ミッドウェイ(2019)」 エメリッヒ印

太平洋戦争時、日米が激突したミッドウェイ海戦を題材にした作品で、ローランド・エメリッヒが監督。
彼らしいと言えば彼らしいのですが、やはり人間ドラマが希薄。
登場人物が多く、それぞれのキャラクターに深く共感することができずに、物語が進行していきます。
キャラクターの数が多いため、それぞれのエピソードにも深みがありません。
暗号解読部隊などはそれだけで一本映画作れそうな気もしましたが、扱いはあっさりです。
出来事を追っていくということが中心になりすぎているようなきらいがありました。
これは初期作品の「インディペンデンス・デイ」にも言えることなので、監督自身はそれほど感情描写には興味がないのかなとも思ったりもします。
確かに映像は技術の進化もあり迫力はあるものの、昨今はどの作品でもかなり映像的にはレベルが上がっているので、それだけでは評価する事は難しいかと思います。
またこのような太平洋戦争の戦闘をテーマにした作品は、世界各国で公開されることを前提とすると、それぞれの国民心情を配慮したものになると思います。
本作については中国資本が入っているので、日本人の描き方が云々という意見も見られますが、個人的にはこの時代の日本人のメンタリティとしてはフェアな描き方をしているようには思えました。
その分、それぞれの国民感情を踏み込みすぎず、何も言われないようにバランスを気にしすぎているようにも思え、そのため人物描写が表面的でなかなか感情移入がしにくかったようにも思えます。
同じように太平洋戦争の戦闘を題材にしたクリント・イーストウッドの「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」はそれぞれアメリカ目線、日本目線で割り切って描いたことにより、深く感情に訴えかけるものになっていたように思います。
迫力のある映像を中心に楽しみたいという方にはお勧めではありますが、やはりドラマが見たいという方には物足りない作品であるかと思います。

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2020年9月12日 (土)

「1/2の魔法」 前へ向かって

本作は3月に公開予定だったピクサーの新作ですが、コロナ感染拡大の影響で公開が延期に。
ようやく8月になって公開となりました。
パンフレットを買ったら「ムーラン」の広告が載っていましたが、こちらも元の公開日の4月の日付が。
公開延期が決定前に、もう刷っていたのだろうなあ・・・。
「ムーラン」は劇場公開はしないことが決定してしまい、残念(ディズニープラスで見れるようになったけどプレミアム料金で2980円かかるらしい・・・。高くない?)。
さて本作の話。
予告を見たときの印象としては、父と子の絆を描いたファンタジーかなという感じでした。
毎回、ユニークな切り口でありながらエモーショナルな作品を提供をしてきたピクサーにしては、オーソドックスな路線できたなと感じました。
16歳になった時、主人公のイアンは亡くなった父が残してくれた魔法の杖を母親から渡されます。
杖に添えてあった父親のメモには亡くなった人を復活させることができる呪文が書いてありました。
イアンと兄のバーリーはその呪文を試しますが、復活したのは父親の下半身だけでした。
全身を復活させるのには「不死鳥の石」が必要で、また呪文の効果は次の日の日没まで。
二人は父親を復活させるために冒険の旅に出ます。
主人公イアンは何事にも自信がない少年です。
冒険の旅の中で、兄の助けもありながら次第に魔法使いとして自信をつけていきます。
この物語はイアンの成長物語でもあります。
兄のバーリーは調子が良くて、ドジなところもあり、しばしばイアンの足を引っ張ります。
しかし、弟を思う気持ちは本物でした。
ただイアンは急速に子供から大人に成長していく一方、そんな調子の良い兄を疎んじる気持ちも芽生えてきてしまいます。
旅の途中で二人は喧嘩別れをしてしまいますが、イアンはバーリーの本当の気持ちを知ることとなります。
父親が亡くなったとき、イアンはまだ赤ん坊で全く記憶はありません。
しかし、バーリーは父親が亡くなった時の気持ちをずっと忘れてはいませんでした。
父親が失われるという恐ろしさのため、ちゃんとお別れの挨拶ができなかったことが、ずっと彼の中にわだかまりとして残っていたのです。
原題の「Onward」とは「前へ向かって」という意味があります。
これはずっと心にわだかまりを持っていて前へ進むことができなかったバーリーが、やっと父親に別れを告げることができることにより、前へ進むことができたという話でもありました。
もちろん主人公イアンもそんな兄の気持ちを理解し、父親に合う機会を兄に譲るということで思いやりのある大人に成長します。
「1/2の魔法」は主人公イアンだけの成長の物語だけではなく、バーリーとイアンの兄弟の成長物語なのです。
一見、一人の少年の成長物語かと思わせておきながら、実は兄弟二人の成長物語であったという構成は非常に巧みであり、エモーショナルであったなと感じました。
この辺りはさすがピクサーといった感じを受けました。

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