「ステップ」 共感、ただ共感
しばらく前に予告編を見た時から泣けてしまった作品です。
というのも自分も3歳の娘の子育て真っ盛りで、やはり自分のことのように感じてしまうのですよね。
主人公の健一は娘が1歳半の時に病気で妻を亡くしてしまったシングルファーザー。
それから男手ひとつで娘を育てていく様子が、娘が小学校を卒業するまで描かれます。
うちは夫婦二人で育てているのにも関わらず、子育てには悪戦苦闘です。
それをたった一人で仕事をしながらと考えると、その苦労は想像できないくらいです。
私も自分の親の世代に比べてみれば、断然子育てに関与しているとは思います。
イクメンという言葉が普通になり、父親が子育てにちゃんと関わるというのが一般的になっていたので、そのことにはあまり抵抗はありませんでした。
とは言いつつも、妻との家事分担ではそれぞれ言い分があり、喧嘩もしますし、また子供のことでイレギュラーなことが発生するとやはり大変です。
本作でも健一が仕事と娘の世話の両立がうまくできない時に「ああ、もう無理かもしれない」と呟く場面がありますが、こういうのは分かりますね。
彼ほど大変ではないにせよ、仕事と家庭の負担が一気にくると泣き言の一つでも言いたくなるというのは、子育てしているお母さん、お父さんは一度ならずあるのではないでしょうか。
とは言いつつも、それでも子育てを続けていけるのは、やはり子供の成長を感じられるからだと思います。
うちは今3歳ですが、もう会話は大人並みで、基本的に体が小さいだけで基本的にはもう大人と中身はそうそう変わらないのではいかと思うくらいです。
お友達と喧嘩したらちょっとボヤいたりしていますし、泣いている子がいたら慰めたりもする。
赤ちゃんに対してはお姉さんぽく世話をしてみたりする。
私が玄関にくつを出しっぱなしにしたりすると片付けて、と注意してきますし。
いろいろな場面でそういう成長を感じられる時、日々の苦労は忘れてしまいます。
世の中の風潮的に男性の育児参加が普通になってきたということもあるのですが、娘が生まれた時になるべく子育てには関わろうと思っていました。
私は結構歳をとってからの子供でしたので、二人目はあまり考えられませんでした。
ですので、子供の成長を見られるのは一度きり。
子供の成長は早いので、そのたったひとつの機会を見逃したくないと思ったのです。
もしかすると娘が成人する時まで生きているのかしらとも思ったりも時々思うのですよね。
先日、初めて娘が補助輪なし自転車に乗りました。
他の子に比べて圧倒的に早いタイミングなのですが、ほとんど苦労することなくパッと乗れたんです。
その瞬間に立ち会っていたのですが、結構感動したのですね。
こういう瞬間があるからこそ、親は頑張れる。
本作でも健一が日々仕事と子育ての両立に苦労しながらも、やっていけるのは娘の成長を感じられたからだからこそだとも思います。
ずっと一緒にいるからこそ、他の父親は見過ごしてしまったことを彼は見ることができた。
それは彼にとって宝物だと思います。
本作は2歳頃の娘、6歳ごろの娘、12歳頃の娘との日々が描かれます。
自分の子供の頃はあまりしっかりしていた記憶はないのですが、子供は子供ながらにしっかりと考えているというのは、自分の子供を見ていても思います。
6歳くらいになったら、こんな大人びたことを言うようになるのかなと思ったりしながら見ていました。
ありふれた言い方ですが、やはり優しい子になってもらいたいと思いますね。
本作の健一の娘も、親の愛情、そして周囲の人からの愛情を受けて育ったからこそ、優しい心根の女の子に育ちました。
自分が子供の親になるまでは全く実感は持っていなかったですが、子供が成長し、それを助けられることにこそ自分が存在する意味があるのだということを本気で思うようになりました。
そのようなことは映画や本などで見たり聞いたりして、表面的にはそうだなと思っていたのですが、リアルに自分の気持ちとしてそう思っているのです、今は。
本作も子供がいない時に見ていたら、違う感想になっていたかもしれません。
この作品は親の感じる気持ちを本当にストレートに素直に描いてくれて、そのため直球で心に響いた作品でした。
死んだ奥さんが残した壁のマジックの跡。
これの使い方が非常に印象的でした。
こういうセンスがある監督さん、いいですね。
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