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2020年3月 3日 (火)

「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」 和製レクター

前作「スマホを落としただけなのに」は、現代人に欠かせないスマホというアイテムから、隠していた自分が丸裸にされていくという恐ろしさを描きました。
私たちにとってあまり身近なツールであるからこその怖さは、見ている人誰もが自分ごとのように感じられたと思います。
主人公もそして真犯人も本当の自分を偽って生きているというのも、アカウントの方が自分らしいことがあるかもしれないという現代人の一側面をうまく表していたと思います。
非常に今現在という時代を映し出していた作品であったと感じました。
前作で主人公の二人を凌駕するほどの存在感を放っていたのが、真犯人である浦野でした。
物語の前半はただのその他大勢のキャラクターであるように見えたのに、後半でその正体が分かったあたりからの異様なほどの存在感たるや・・・。
私はその時ほとんど初めて成田凌さんを認識したのですが、演技の振れ幅に圧倒されました。
おそらくそのような観客も多かったのでしょう、浦野がさらに重要な役となるのが今回の続編です。
浦野は前作で逮捕されているので、彼はまさに「囚われの殺人鬼」です。
本作の主人公は前作で浦野を逮捕した加賀谷刑事です。
前作では犯人のミスリードの対象となっていた人物ですが、彼もまた闇を抱えている男であり、浦野とついになる様な立場です。
まさにこの二人はレクター博士とクラリスのような関係で、新しく起きた事件に挑みます。
ミステリーとしての出来としては、残念ながら前作の方が上であったような気がします。
前作は主人公そのものが謎の大きな要素であり、後半それまでの前提が大きくひっくり返ることがミステリーとして俊逸でした。
それに加えて彼女を狙う犯人が誰かという謎解きも重なり、謎が複層的であったところも凝っていたと思います。
それに比べると本作はミステリーとしてはシンプルでありましたし、前作に比べて主人公たちは素直な人であったため、どんでん返しのようなものもありません。
見所はというとやはり浦野というキャラクターでしょう。
まさに和製レクターとも言えるキャラクターとして異彩を放っていたと思います。
主人公ら側になびくことなく、彼は彼の通常人とは異なる価値観に従って行動します。
レクター博士がクラリスに協力しているように見えながら、その残忍性は少しもなくなることなかったように、浦野もまた彼の価値観を変えません。
そのあたりのぶれなさはある意味見ていて気持ちがよく、そしてそれを演じる成田凌さんのパフォーマンスにも感心しました。
邦画にはあまりいないタイプのヴィランとしてさらに魅力が出てきたと思います。
最後ではまた次につながるような印象のシーンもありました。
次回作はありますでしょうか・・・?
再登場を期待したいところです。

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