「ナイブズアウト/名探偵と刃の館の秘密」 今時珍しい「本格」ミステリー
クラッシックな趣のあるミステリー映画です。
最近だとケネス・ブラナー監督の「オリエンタル急行殺人事件」がありますが、このタイプの本格ミステリーは少ないですよね。
私はアガサ・クリスティーのミステリーが好きで、ほとんどを読んでいるので、この手の作品は思わず見にいってしまいます。
舞台となるのは現代なのですが、雰囲気は非常にクラッシックです。
監督のライアン・ジョンソンはアガサ・クリスティーのようなミステリーが撮りたいということでこの作品を企画したらしく、まさにその狙いがしっかりと映像に現れています。
本作の名探偵はブノワ・ブラン。
最後の紳士探偵と劇中で言われていますが、確かにこのような人物は現代にはなかなかいないですね。
しかし、この人物を違和感なく存在させているのは、主演のダニエル・クレイグならではでしょう。
007の印象が強いですが、本作ではアメリカの強い南部なまりのあるキャラクターを抑制しながらも、名探偵らしい存在感をもって演じていました。
綺麗な英語を喋るイメージがあったのですが、さすが役者さんで南部なまりもとてもうまく、そのため新しいブノワというキャラクターを定着できています。
多少自信家なところはポアロを彷彿とさせるところがありますが、新しい名探偵キャラクターの誕生ですね。
この作品は好評だということで、第二作も作られるということで、またブノワの活躍を期待したいところです。
ミステリー映画なのでネタバレになるようなことは書けないのですが、印象的なキャラクターについて2、3記したいと思います。
一人はマルタという看護師。
彼女は本作で起こる事件のキーパーソンとなりますが、特徴的なのは「嘘をつくと必ず吐いてしまう」ということ。
「必ず」がポイントです。
つまり彼女は人間嘘発見機のようなものなのですね。
彼女を嘘をつかせずに、自分に有利にことを進めることができるのか。
探偵も犯人も頭を悩ますポイントになります。
あクリスは代表的なキャラクターであるキャプテン・アメリカから、善良な人というイメージが強いですが、本作では放蕩息子役を演じています。
一族からも使用人からも嫌われている人物ですが、果たして彼は皆が思う通りの人物なのか、それともその通りなのか。
彼のパブリック・イメージと相まって、ランサムがどのような人物であるのかもキーとなります。
トリックは今らしいハイテクな要素は用いておらず、あくまでスタンダードなものの組み合わせです。
目新しくはありませんが、なんでもありではない、納得性はあります。
雰囲気だけでなく、そういう点でも非常にクラッシックな作品として仕上げれています。
興行も評価も高いようですが、今のような時代にこのような作品が受け入れられるのも嬉しいですね。
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