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2020年2月15日 (土)

「AI崩壊」 テーマはタイムリー、しかし・・・

「2001年宇宙の旅」(1968年)のHAL、「ターミーネーター」(
1984年)のスカイネットと、昔から映人間に害を与えようとする人工知能が映画の中で描かれてきました。
しかし、その当時はまだそれは夢物語でしたが、2020年の現在、AI=人工知能はリアルな技術として社会に浸透し始めています。
AIという言葉を聞かない日はないほどですが、HALやスカイネットのように自律的に作動するマシンにはなっておりません。
しかし、シンギュラリティ(技術的特異点:自律的に作動する機械的知性が誕生すること)は間近であるという説もあります。
本作に登場するAI「のぞみ」は人間のヘルスサポートから発展したAIですが、ある日突然暴走し、人間の峻別をしようとします。
それぞれの人が生み出す生産物・効率性、その人が生きるためにかかるコストから算出し、生きるべき人間と、生きていくべきでない人間とを区別し、そして生きていくべきでないと判断された人間を抹殺しようとするのです。
厳密には「のぞみ」は意思を持っているわけではありません。
AIは学習することにより、的確な答えを出していくように成長していくわけですが、「のぞみ」に対して人間のネガティブな面を学習させていくことにより、人間を峻別するという結論に導く悪意が裏にあったのです。
ちょうど現在オンエア中の「仮面ライダー」シリーズの最新作「仮面ライダーゼロワン」もAIがテーマとなっており、その敵となっているAI「アーク」も人間の悪意をラーニングすることにより、人類を抹殺するという結論に達しています。
機械そのものが悪ということではなく、悪を学習させた人間の悪意があるということです。
この二作品は共通のテーマであると言えるでしょう。
また本作は最近見た別の作品と別の観点で共通点があると思いました。
それは「カイジ ファイナル・ゲーム」です。
この作品でも国家が、赤字財政・格差の拡大・貧困の増加などを背景に、下級国民を峻別し搾取する様が描かれています。
本作も生きるべき人とそうでない人を峻別しようとしているという点では同じです。
「上級国民」という言葉が昨年はキーワードとして出てきましたが、国民の中で確実に格差というものが認識されてきているということでしょう。
一億総中流という時代はいまは昔ということです。
映画というのは確実に作られた時代の影響を受けているので、同じような時期に同じようなテーマの作品が作られたということで、今の時代の空気が感じられます。
AI、格差社会といった現代を表すテーマをタイムリーに取り上げ、エンターテイメントとして作ったのは評価できると思います。
しかし、それが映画として面白いかどうかというのは別問題です。
映画としては全体として、御都合主義感を感じる脚本であったと思います。
サスペンスとして盛り上げるためでしょうが、いくつか真犯人ではない人間へのミスリードがあるのですが、あまりにあからさまなので、ミスリードされません。
「カイジ」を見ていると大体背景が想像できるので、真犯人も大体わかってしまいます。
テーマは悪くないだけに、もう少しストーリーはなんとかならなかったのかと思ってしまいます。
最後にAI「のぞみ」のデザインはよかったです。
従来のスーパーコンピュータの無味乾燥さがなく、有機的で美しい。
人間のDNAの二重らせんのようでもあり、花弁のようでもあります。
ライティングにより禍々しくも見えたり、優しくも見えたりもする。
エンティングでピンク色に証明され、それが桜の花びらとオーバーラップするところは演出上の狙いがはっきりと伝わってきました。
返すがえすもストーリーが残念です。

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