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2019年9月30日 (月)

「ヘルボーイ(2019)」 原作の雰囲気に忠実ではあるが凡庸

原作者のマイク・ミニョーラが脚本にタッチしているからか、ギレルモ・デル・トロの「ヘルボーイ」よりも原作の雰囲気が出ているような気がします。
というよりも、今思うとデル・トロの「ヘルボーイ」はデル・トロ色が強いのかもしれません。
ヘルボーイとリズの恋などは、異形の者との愛を描く「シェイプ・オブ・ウォーター」に通じるものを感じたりします。
ヘルボーイ自身が人間と悪魔の間に生まれたという異形の者ですが、さらにリズなどの描き方は常人とは異なる能力を持つことによる疎外感を感じさせます。
異形の者への愛情というのが、デル・トロの作品には通底していることで、それが「ヘルボーイ」という題材と相性が良く、彼らしさが出ていたのだと思います。
本作はデル・トロ版よりも原作が持つオカルティックな雰囲気を素直に描ことしていたように感じました。
R指定の作品となっており、残酷めな描写も多々ありますが、それもまた原作に忠実な印象を受けました。
「ヘルボーイ」の原作コミックは何冊か持っているのですが、「ヘルボーイ 百鬼夜行」の中のエピソードをベースにしていると思います。
ストーリーは違うのですが、登場するキャラクターやシーンなどに共通な要素が見受けられます。
このエピソードは、他のものよりも更にオカルト色が強いように感じました。
そのような原作が持つ特色を大切にしたのだろうと思われます。
「ヘルボーイ」の映画化作品としては、誠実に作られているように思いますが、卓越したレベルに仕上がっているかと言われるとそこまではいきません。
デル・トロ版が、原作の持つ雰囲気を持ちつつも、彼の作家性を強く出し、個性的であったのに比べると、本作は凡庸であると言わざるをえません。
作中でいくつか次回作に向けた種まきをしていましたが、次に繋げることはできますでしょうか。

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