「天気の子」 一筋の陽の光
今年の東京はずっと梅雨が続き晴れ間がありません。
まるで「天気の子」で描かれる東京のように。
物語の中で言われているように天気は人の気持ちを変える力があります。
晴れ上がった朝は人を元気に、雨ばかり続くときはちょっと陰鬱に。
このところちょっとばかり悶々とすることがありましたが、本作を見て少し陽の光が心に差してきたような気がします。
「世界は元々狂っている。」
そうかもしれません。
世界を変えてしまったというのは、彼らの思い込みなのかもしれない。
けれど人を好きになり、そして世界と引き換えにしてもいいと思えるほどに人を愛せるということは何て素晴らしいことなのだろう。
前作の「君の名は。」もそうでしたが、描かれる物語の中心にあるのは若い男女が惹かれ合う気持ちです。
そんなものは世界に比べればとても小さいものです。
だって地球上には何億もの人間がいて、それぞれが恋して、愛して生きている。
その中のたった一つの恋だから。
けれどそのちっぽけな恋は世界と引き換えるほどに大切なものでもある。
愛しているという気持ちは、他の何よりもその人のことを大事だと思うことだから。
誰かを愛している人にとっては、それは自分自身よりも、そして世界よりも大切なことなのです。
帆高にとっては自分よりも世界よりも陽菜のことが大事になったのです。
そこまで人を愛せるのはすばらしい。
眩しい。
ずっと雨が続く東京に、まるで光の回廊のように降りてきた陽の光。
まっすぐでキラキラとしている陽の光は、恋をしている少年のピュアな気持ちを表しているよう。
ちょっと眩しくなるくらいに。
新海誠監督の作品はアニメーションであるのに光の描写が独特で美しい。
まさに本作は彼の特徴的な光の描写の真骨頂です。
雨ばかりの東京にさす一筋の太陽の光。
ベールが剥がされるかのように一気に腫れ上がる空。
ずっと重苦しい天気が描かれる本作の中で、その光の演出はさらに際立ちます。
冒頭に書いたように映画の中で陽が差すだけなのに、自分の心にも暖かい光で満ちてくるような気になります。
映画の中のラストシーンはやはり雨が降っているのですが、心の中は晴れ渡って終われました。
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