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2019年6月 3日 (月)

「キングダム」 馴染みない中国史であったが、シンプルに描き出す

「GANTZ」「アイアムアヒーロー」「いぬやしき」などコミックの実写版映画を多く手がける佐藤信介監督の最新作は、これまた大人気のコミック「キングダム」です。
私は例によって原作は未読なのですが、秦の始皇帝の話だということは知っていました。
私は本も映画も歴史ものが好きで、三国志などもよく読んでいたので中国史などには馴染みがあったのですが、普通の人はそういうものにあまり興味がないと思っていたので、始皇帝の話の漫画などあまりうけないと思っていたので、コミックの「キングダム」が人気であることを聞いた時、意外に思いました。
昨年その「キングダム」が実写映画化するということを聞いた時も、ちょっと驚きました。
まずは壮大な中国という大陸国家が持つスケールを、ハリウッドならいざ知らず、邦画の規模で描ききれるかということ、また中国人を日本人のキャストで演じるということで不自然にならないかということが気になりました。
ただ今までも実写化が難しいと言われた原作ものを確実に描き切ってきた佐藤監督でしたので、期待もしていました。
私は原作を全く読んでいないので、原作に対してどうだったかという評価はできないのですが、結果的には非常に上手にまとめ上げたという印象です。
まず評価できるのはストーリーを極力シンプルにしたということでしょう。
今回は原作の1〜5巻という最初期のパートを基にしているということなのでそのためかもしれませんが、基本的に国を簒奪された王が家来とともにそれを取り戻すという展開です。
視点としては基本的には将来始皇帝の将軍となる信という青年のものが基本線として話が一本道で進むので、わかりやすい。
多くの観客に馴染みのない古代中国の話なので(人物の名前が馴染めないということも含めて)あまり複雑なストーリーだとついていけなくなる懸念はあったと思います。
三国志などはどうしても複数視点でないと描けないので、馴染みのない方にはついていきにくいですよね。
主人公を後に始皇帝となる王政ではなく、戦争孤児である信であるということもわかりやすい一因かもしれないですね。
信は将来実在の人物である李信という将軍になるというキャラクターですが、基本的には我々にとっては知らない人物なので、逆に歴史などに強くない人でも馴染みやすい。
キャラクター造形としても現代的で若いやすいですからね。
このキャラクターを演じるのは山崎賢人さんですが、鑑賞前は個人的な印象としてはあまり歴史ものには合わなさそうな感じがしていました。
ただ実際に見てみると、その現代的な感じが歴史もの特有のとっつきにくさ感を払っていたような気もします。
他のキャラクターの配役などについてもそのような印象を受けました。
心配していたスケール感についても、物語の設定上少数で城内に切り込み、その中での戦いがメインになるため、大軍団同士がぶつかり合うというようなシーンがなかったために大陸らしさが感じられないようなことはありませんでした。
適所で中国でのロケのシーンも入っていたので、上手にスケール感を補得ていたかと思います。
アクションシーンについては城内での戦いになるのでこじんまりするかと思いきや、個人対個人の戦いをアクロバチックに見えることで迫力は出ていたと思います。
魅せるアクションについては「GANTZ」「図書館戦争」などでも確かな手腕を見せてくれた佐藤監督なので見せどころをいくつも用意していました。
原作好きな人の評価は聞いていないのですが、邦画としてはかなり人が入っているということなので、ファンにも評判が良いということでしょうか。
続編を、という話も聞こえてきますが、期待はできますね。
本作で大沢たかおさんが演じていた王騎というキャラクターがクセがあって興味深かったので、もう少し彼と信が絡むと面白そうですね。
次回あるならばどうしても軍団同士の戦いは見せないわけになりそうなので、その時のスケール感をどうするかは課題かとは思います。
とはいえ佐藤監督ならしっかりまとめてくれることでしょう。
期待を込めて。

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