「アラジン」 見たことがない新しい自由な世界
若い頃はディズニーのアニメはほとんど観ることはありませんでした。
「美女と野獣」しかり、「ライオン・キング」しかり。
誰でも知っているほど世間で大ヒットとなった作品でも観たことがありません。
その頃は自分の中ではなんとなくディズニーは子どもや女性向けというイメージがあったのだと思います。
本作のオリジナルのアニメーション「アラジン」も92年なので、観たことがありませんでした。
馴染みもなかったので本作もスルーしようかとも思いましたが、監督がガイ・リッチーと聞いて、気持ちを変えました。
ガイ・リッチーと言えば「シャーロック・ホームズ」など時代ものでもスタイリッシュに描く実績がある監督ですので、アラビアンナイトをどう料理するかが見てみたくなりました。
また、最近のディズニーのアニメの実写化映画の出来が良かったということもあります。
本作からは女性であっても、出自がどうであっても、活躍することは可能であるというメッセージを受け取りました。
オリジナルもそうであったかは観ていないのでなんとも言えないのですが、本作についてはとても現在にふさわしいテーマであると感じました。
女性が活躍する社会と言われて久しいですが、実際にはまだまだ課題があります。
ガラスの天井と言われるように、女性が高い地位につくことがまだ難しい現状というものがあります。
本作のヒロインであるジャスミン王女は、父親を継ぎ、民のための王国を運営したいという夢を持っています。
しかし、父親であるサルタンも娘に婿を迎えて彼に王を継がせたいと考えていますし、その座を狙っているジャーファーも女が国王になるなど以ての外と思っています。
しかし、彼女は彼らが当たり前だと思っている社会の枠組み自体に負けないという意思をはっきりと持っています。
今回そのような場面で流れるのが「Speechless(スピーチレス)」という曲です。
この曲はオリジナルのアニメーションにはなかったということですが、まさにこの実写版が現代にふさわしいテーマを設定しているということを表していると思います。
社会の無言の圧力に対して、しっかりと声を上げるということを高らかに歌い上げるこの曲はまさに現代的な女性の声そのものです。
主人公のアラジンについても同様なことが言えると思います。
彼の出自は孤児であり泥棒です。
けれども彼の心は誠実であり、また正直でもあります。
そんな彼は魔法のランプを手に入れたことにより、今までの立場からより良い立場へステップアップするチャンスを手に入れます。
最初はまやかしの力で得た地位ではありましたが、彼の持ち前の誠実さと正直さにより、彼は認められ本当に彼として王女のパートナーとなります。
正しく自分の能力を活かすことができれば、上がっていくことができるというのもなかなか実際には難しいことではありますが、求められていることだと思います。
現代の社会は自由に見えて、実は社会の上層は二世、三世で固められ固定化しているようにも見ることができます。
アラジンのように実力があれば認められる社会というのは、まだまだ理想であるかもしれません。
ジャスミンとアラジンの二人が魔法の絨毯に乗って世界をめぐる時に流れるのが、「Whole New World」。
「見たことがない世界」と訳せると思います。
文字通り彼らが見たのは見たことがない様々な地域、行ったことがない場所であったとは思いますが、また別の捉え方をすれば、彼らが見たのは、伝統的な社会とは異なる、性別や出自にとらわれない自由な世界という意味であるとも受け止められます。
彼らは二人でそのような自由な世界を共有し、だからこそ惹かれあったのかもしれません。
さすがガイ・リッチーでカラフルでスピーディなテンポで描かれるダンス、アクションは小気味よく飽きさせません。
ウィル・スミスが演じるジーニーは素晴らしくおかしく、いい味を出していました。
最初の登場シーンの歌は弾けていて最高です。
ディズニー映画なのでもちろん子供も楽しめますが、上に書いたような現代的なテーマを考えながら見るのもいいかもしれません。
| 固定リンク
コメント