「運び屋」 良い人生?悪い人生?
自分勝手に生きてきた。
家庭よりも仕事優先。
家族のお祝いごとよりも、外での付き合いを重視する。
本作の主人公アールはこのように生きてきました。
そんな父親はかつての日本にも多くいました。
自分の父親の世代などはまさにこういう人ばかりだったと思います。
最近はイクメンと言われる人も増えて、家庭にも関与する父親も多く、隔世の感があります。
アールは自分の達成感がすべてで、家庭を顧みることはありませんでした。
そのため妻にも娘にも三行半を突きつけられてしまい、さらには時代の流れに取り残されて一番大事にしていた仕事も失ってしまいます。
ふとしたきっかけでかかわってしまった仕事も、それが麻薬輸送だとわかってからも続けます。
果たしてこのような人生は彼にとって良かったのでしょうか。
それとも悪かったのでしょうか。
答えは・・・「わからない」でしょう。
そもそも良い人生、悪い人生というのは何なのでしょうか。
アールはその人生のほとんどを自分がやりたいようにしてきました。
そしてそれなりの名声も得てきていたようです。
その点においては満ち足りた人生と言えるでしょう。
しかし家庭をないがしろにしてしまったため、晩年は家族とは疎遠になり人地ぼっちで過ごすことになります。
この視点では悪い人生と見えます。
彼はその後、麻薬の輸送に関わるようになりますが、彼なりのやり方で仕事を評価されていくようになります。
彼もそれなりに達成感を感じるようになります。
仕事の内容は別にして、歳をとっても仕事にやりがいを感じているという点はいい人生です。
しかし、結果的には彼の行為は露見して逮捕されることとなってしまいます。
人生最後に逮捕されるという点は最悪と言えるでしょう。
とはいえ、逮捕される前に愛していた妻の臨終には立ち会うことができました。
それは彼の人生は幸せだったといえるでしょうか。
言えないでしょうか。
やっぱりわからないです。
まだ自分は彼ほどの歳になっていないので実感はないのですが、人生を長く生きれば生きるほど、後悔したことはたまっていくに違いありません。
アールがすごいと思うのは、歳をとっていても前向きな点があるということです。
もちろん彼の人生も後悔ばかりです。
それでもまだ前を向けているというところが、ただの老人と違うという気はしました。
しかし彼の人生が幸せであったのかどうかはわかりません。
その答えがわかるのは、まさに彼が死ぬ時にどう自分の人生を振り返るかということなのでしょう。
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