「サムライマラソン」時代劇の魅力を引き出せていない
佐藤健さん主演で、外国人のバーナード・ローズが監督の時代劇「サムライマラソン」。
演技にストイックな佐藤さん、そして外国人の目線で描くということで新しい時代劇になりそうな予感がし、期待して見に行きました。
見終わった時の印象をひとことで言うと凡庸であったということです。
時代劇というジャンルに期待される要素には様々なものがあると思います。
エンターテイメント的な部分で言えばチャンバラ。
佐藤健さんが緋村剣心を演じた「るろうに剣心」は新時代のチャンバラを創出した作品であったと思います。
逆に日本人の心情を描くというのも時代劇の真骨頂だと思います。
山田洋次監督の時代劇三部作などは、殺陣などはあまりない静かな作品ですが、日本人の精神を描けていたと思います。
他にも時代劇の魅力はいくつもあって、いい時代劇というのはそれらをうまく捉え、新しい視点で進化させていったものだと思います。
そういうことを私は「サムライマラソン」に期待していたのですが、あまりそのような印象を持つことはできなかったですね。
いろいろなことを大切に思い作っていることは伝わります。
主人公の甚内は隠密ですから、その素性を明らかにすることはできません。
人々の中に紛れ、目立つことなく生きなければなりません。
そういうことを理解した佐藤さんのストイックな演技もあり、この主人公は劇中でとても静かで目立つことがありません。
それゆえ、物語をドライブしていく役回りには少々辛い。
それを解決する役が雪姫なのだと思いますが、こちらはリアルに隠密というものを追いかけた甚内という役に比べると、とてもファンタジーな印象があります。
囲われた姫が城を逃げ出し、男装して遠足に参加する。
「バレるだろ!」とツッコミを入れたくなりますが、そのあたりは触れないこととなっています。
甚内が知らない隠密が安中藩に紛れ込んでいて、彼らもそれぞれに動き始めているが、それが誰かはわからないというのはミステリー仕立てで面白い設定だと思いましたが、そこはあまり引っ張られなかったですね。
甚内の生き様みたいなものをもっと深掘りすれば、日本人の伝統的な精神などを描けたかもしれません。
殺陣も緊迫感のある場面もありましたけれども、ほんの一瞬なので、それだけではちょっと食い足りない。
ちょいちょいと時代劇として面白そうになる要素はあるものの、いずれも中途半端であるという印象です。
もったいないです。
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