「マイル22」衝撃のラスト1マイル
<ネタバレがあるので注意してください>
最近はアクション映画といえど長尺の作品が多いですが、本作は1時間半と上映時間がコンパクト。
そのためストーリーの展開はスピーディです。
個人的には余計な説明をそぎ落としていることは評価したいです。
テンポよく見ることができますから。
時間が短いことになっているのはキャラクター造形でしょうか。
登場人物を描く時間が少ないため、どうしてもキャラクターの掘り下げは甘くなり、深みがあるようには描きにくいですよね。
それでも主人公のシルバと彼の同僚のアリスについては、ちょっとしたエピソードを入れることにより、彼らの生き方がうかがい知れるようにしていた努力がうかがえます。
見所の一つはアクションでしょうか。
中盤からラストまでの証人を空港まで運ぶシークエンスでのアクションは見応えがありました。
マーク・ウォールバーグ演じるシルバらはガンアクションがメイン。
そして証人であるリーはフィジカルなアクションです。
リーを演じるのはイコ・ウワイスで、彼は「ザ・レイド」に出演していました。
「ザ・レイド」は未見ですが、シラット(インドネシアの格闘技)をベースにしたアクションがすごいというのは聞いたことがあります。
本作を見る限り、彼のアクションはスピーディでありながら重みもある(痛みもある)で、見ていて興奮しますね。
ぜひどこかで「ザ・レイド」も見てみたいと思います。
特筆すべきはラストの展開です。
これはかなり意外でした。
通常ハリウッドのアクション映画というのは、途中経過はいろいろありますが、最終的には敵となる組織や個人は主人公たちに倒されるという展開になります。
映画なので当たり前ですが、その方が収まりがいい。
しかし、本作は違います。
ラストで主人公が属するチームは彼を残してメンバーが全滅してしまうのです。
最後の最後まで、主人公たちには真の敵の姿を認識することはできず、彼らの本当の目的がわかったのは自分たちが襲撃されたときでした。
敵の目標は「オーバーウォッチ」、テクノロジーを駆使し相手を追跡し、コントロールするアメリカの極秘の戦略チームです。
現在の戦いは前線部隊ではなく、全体を俯瞰することができる「神の目」を持つ部隊が鍵を握っているのです。
その目を壊すことが敵の本当の目的でした。
この作品は現代的な戦争の姿を描いているのです。
そしてまた現代世界での最強の国家であるアメリカの地位も盤石ではないということも描きます。
最強である理由の一つは最新式のテクノロジーですが、それすらもひとりの男の強い意志によって破られることもあり、脆弱だということです。
本作で結果最強のテクノロジーを破ったのは、ひとりの男が自分の犠牲も厭わず挑んだ作戦だったわけです(最初にリーが自分の写真を燃やしているところに彼の強い意志を感じます。彼がどのような人生を背負っているのかは明かされませんでしたが)。
複雑になったシステムは、単純な強いものに脆いということでしょうか。
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