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2019年1月15日 (火)

「蜘蛛の巣を払う女」 ダークなトーンを纏ったアクション映画

デヴィッド・フィンチャーの「ドラゴン・タトゥーの女」の続編になるのでしょうか?
キャストも監督は一新されているので別物と見た方がいいのかな(デヴィッド・フィンチャーは製作総指揮に名前が入っていましたが)。
原作的には「ドラゴン・タトゥーの女」と「蜘蛛の巣を払う女」の間に2作品ほど入っています。
デヴィッド・フィンチャーの「ドラゴン・タトゥーの女」は観る者に心理的プレッシャーをかける映画でした。
彼の作風はいずれもそうなのですが、登場人物たちのアンモラルな闇に飲み込まれていきそうな怖さがあるのですよね。
単純なホラー的な怖さというか、見てはいけないものを見てしまうような怖さがあります。
原作の「ミレニアム」シリーズもそのようなトーンで、またアンモラルな描写も多いので(割と北欧の小説も映画もこのようなダークなトーンが多い)、フィンチャーとは相性が良かったのかもしれません。
「ドラゴン・タトゥーの女」を見たときは、久しぶりに彼らしい作品になったなと思いましたが、一方彼の映画は観ていて疲れます。
おそらくずっと心理的プレッシャーを受け続けているからだと思います。
さて本作「蜘蛛の巣を払う女」ですが、絵面のトーンはフィンチャー版と同様に北欧らしい薄暗い陰鬱な調子になっています。
しかしながら、フィンチャーのようなプレッシャーは薄いですね。
冒頭リスベットの過去に触れるあたりはそういうところはありましたが、後半はどちらかと言えばスパイ映画のような印象を持ちました。
前作よりは万人受けする方向に調整しているような感じがします。
ですので、フィンチャーの前作のような陰々滅々とした雰囲気を期待していくと肩透かしになるでしょう。
原作の方は2作目の「火と戯れる女」まで読みましたが、本作にもチラリと登場するリスベットの父親が出てくるのですが、なんというか鬼畜というか人間離れしているのですよね。
本作の中でもリスベットは父親をサイコパスと呼んでいましたが、まさにそのような感じ。
これをまんま映画にするとかなりエグいものにはなりそうなので、少し観やすい感じに整えたのでしょうか。
スウェーデン版の方は未見なのですが、この辺のダークな部分はもっと表現しているのか気になりますので、今度観てみようかな。
デヴィッド・フィンチャーの前作を気にしなければ、ダークなトーンをまとったアクション映画として楽しめると思います。
しかし、フィンチャーらしさを期待していくと、少し当てが外れた印象になるかもしれません。
観にいく時のスタンスで印象が変わる映画のように思いました。

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