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2018年7月15日 (日)

「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」 スピンオフの難しさ

「ローグ・ワン」に続く「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフです。
前回の「ローグ・ワン」ではメインストリームには関わらない名もなき人々を取り上げたことが新鮮で、彼らの献身がその後の帝国への逆襲へのきっかけとなったことが明らかにされました。
ローグ・ワンのメンバーたちが全滅してしまうという悲劇的な結末も今までの「スター・ウォーズ」シリーズとは異なり、新鮮な印象を受けました。
本作は「スター・ウォーズ」シリーズの中でも最も有名なキャラクターの一人であるハン・ソロを主人公としており、「ローグ・ワン」とは異なる難しさは持っていたと思います。
あまりにもハリソン・フォードが演じるハン・ソロのイメージが強く(私もそうですが)、彼以外の俳優が演じるハン・ソロが受け入れられるかということですね。
本作で若きハン・ソロを演じるはオールデン・エアエンライク。
私は全く彼が今まで出演した作品を見たことはなかったのですが、
上手な俳優であるとは思いました。
時折、以前のハン・ソロを彷彿とさせるような場面もありましたし。
ただやはりハリソン・フォードと比べてはしまいます。
この辺は重要なキャラクターについてスピンオフを作るということの難しさではあると思いました。
監督は職人ロン・ハワードですので、作り自体は手堅くまとめています。
こちらの作品は若手の監督を抜擢したところ、方向性の違いなどで製作サイドと意見が合わず、降板。
その後をロン・ハワードが引き継いだということです。
そのせいかこれといった新しさを感じることはありませんでした。
無難にまとまっているという感じですね。
ロン・ハワードは好きな監督なのですが、普段はもう少しエモーショナルな要素が強い監督だとは思いますが、なんとか作品として成立させるべくまとめた印象で、彼らしいという感じは受けなかったです。
ハン・ソロとトバイアスの親子・師弟を彷彿とさせる関係や、ソロとキーラの関係がもう少し深く描ければ、ロン・ハワードらしい感じが出たかなと思います。
そうすればもっとドラマチックにできたんではないでしょうか。
ストーリーとしても冗長な感じがややありましたね。
旧三部作につながるようなポイントもいくつかあり、「スター・ウォーズ」ファンとしては嬉しい部分もいくつかありましたが、それ自体は作品の出来とは別物であるので、そういったところばかりに注目がいくのもどうかとも思います。
日本では本作は好調のようですが、アメリカでは期待ほどにはいかなかった様子。
今後のスピンオフについてもいろいろ方向が変わる可能性があるとのこと。
どのように展開していくか、見守っていきたいと思います。

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2018年7月10日 (火)

「ラプラスの魔女」 これは三池作品なの?

タイトルの「ラプラスの魔女」は、フランスの数学者ラプラスが未来の決定性を表現し、のちに「ラプラスの悪魔」と呼ばれた概念からきています。
これはある瞬間における全ての物質の状態が全てわかり、それを解析できる能力があるのであれば、未来が予測できるというものです。
唱えられた19世紀には概念的なものでしたが、今の時代でしたらどうでしょうか?
様々な事象をデータ化することができ、それを解析できるコンピュータもある。
未来予測はできそうでしょうか?
けれどそれは原理的には無理です。
「ラプラスの悪魔」の概念はいわゆるニュートン物理学に基づくものです。
しかし、現在では不確定性原理により、粒子の場所と運動量を両方とも特定することは不可能とされています。
ですので、どうしても絶対的に確実な未来予測はできません。
特に気象などという様々な要因が絡まる事象では、特定の場所や時間に何かが起こると予想するのは難しいでしょう(「この辺りにこういうことが起こりそう」ということまでは言えるかもしれませんが)。
ですので、未来予測ができるという話には個人的には少々入りづらかったところがありました。
ま、フィクションなのであまりその辺突っ込んでもしょうがないのですけれども。

観に行こうと思ったきっかけは、監督が三池崇史さんだったからです。
三池さんは個人的には好きな監督なのですが、最近の作品ではあまりこれはいいと思った作品がなかったのですよね。
最近の数作品は三池監督らしくはあるのですが、どうも映画としてとっ散らかってしまっている感じを受けてしまっていました。
やりすぎと言われるくらいやってしまうというのが三池監督らしさではあるので、暴走とまとまりのバランスは難しいところではあるのですが。
さて本作ですが、観終わってみると、逆に三池監督らしさというのはほとんど感じられず、寂しい感じがしました。
言ってしまうとなんなのですが、監督名を聞かなければ誰の作品かわからなかったような印象です。
三池監督の作品は名前を聞いていなくても、観れば三池作品であることがわかる印がついてように感じるくらい個性が強いと思うのですが、それがほとんど抑えられていました。
ミステリーですので、あまり監督の個性を出しにくいということもあるのかもしれませんが、そうなるとあえて三池監督を起用した意図も良くわかりません。
主役は櫻井翔さんが演じる青江という地球化学の教授ですが、これも大変存在感がありません。
観客とともに不可能な事象を解き明かして行くというナビゲーターの役割なので致し方ないのかもしれませんが、ラストくらいにもなると、本当にそこにいるだけという感じになってしまいます。
クライマックスの場面では、他の人物たちに焦点が行ってしまっているのでナビゲータ役としても終了してしまっている感がありますね。
主人公なのに。
監督の件も、主役の件も何かチグハグな感じがする作品となっていました。
三池さんにはもっと個性が出せる作品をやってもらいたいです。

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2018年7月 7日 (土)

「焼肉ドラゴン」 家族のアイデンティティー

人間、何か自分のアイデンティティーが寄って立つものが必要なものです。
それは国であったり、会社であったり、家族であったり。
日本人などはやはり日本人であること、というのがアイデンティティーが寄って立つ柱の一つであると思うんですよね。
どの国の国民もそうだと思うのですが。
この物語の中心となる家族は、戦前に日本に連れてこられそしてそのまま日本に住むことになった朝鮮半島の人々。
いわゆる在日と呼ばれる方たちです。
彼らは想像すると、複雑なアイデンティティーを持っていると思うのですよね。
朝鮮民族であり、祖国に暮らす人々と文化を共有はしているけれども、やはり彼らと在日では置かれている環境が違うため、全く一つの価値観というわけではない。
また半島では同じ民族が二つの国に分かれている。
日本で暮らしているからといって日本人として扱われるわけでもなく、差別は受けている。
同じような環境に置かれ、共感を感じられる人々が非常に少ないマイノリティです。
だから、そういう境遇だからこそ、家族というものが非常に濃い存在になるのかもしれないです。
「焼肉ドラゴン」を切り盛りする龍吉は戦前に日本に連れてこられたが、故郷は戦争により壊滅して、家族みんなを失ってしまいました。
彼は妻と子供たちと日本で生きていくことを決めました。
子供たちは韓国語を話すことはできず、日本語しか話せません。
日本自体も戦後の復興期で、今までの価値観が大きく変わっていく時代でした。
そのような時代、龍吉はただ黙々と働き続けてきました。
小さくとも自分たち家族のいる場所を守り続けるために。
彼にとって家族だけが自分のアイデンティティーの拠り所だったのでしょう。
韓国も北朝鮮も日本も、彼の拠り所ではない。
彼にとっては家族だけ。
彼は日頃無口ですが、彼が話すときは全て家族に関する重要な場面なのですよね。
家族のことをどれだけ大切に思い、それこそが彼の全てであるかのように。
だから長男の自殺はショックであったに違いありません。
在日にとって暮らしやすいわけではない日本の環境。
差別に対抗するには、それに対抗できる実力(学力・経歴)を身につけなくてはいけない。
だからこそ長男にも頑張るように言っていたのだと思うのですが、それが息子を追い込んでしまった。
家族のために良かれと思ったのに・・・。
彼にとってはアイデンティティーが揺らぐような出来事であったと思うのですよね。
そういうことがあったからこそ、3人の娘がそれぞれの道を選んでいくとき、彼は何よりも彼女たちの気持ちを優先させた。
彼にとっては家族の幸せこそが全てであり、幸せは自分で進む道を選ぶことであると気づいたのかもしれません。
彼も若い頃に日本に強制的に連れてこられ、そして家族もそして腕も失ってしまった。
自分では道を選べなかったわけです。
息子も結果的には自分で道を選べず、追い込まれてしまった。
最後にオモニが言っていたように、家族の行く道は違うけれど、家族は繋がっているわけです。
進む道は違うけれどそれをそれぞれが選んだのであれば、辛いことがあっても幸せであるはず。
結果、彼らはそういう思いを共通に持ち、それが彼ら家族のアイデンティティーになっていくのかもしれません。

父親の龍吉役をやったキム・サンホさんの演技が素晴らしく、彼中心の視点で記事を書きました。
オモニ役のイ・ジョンウンさんもそうですが、韓国の俳優さんは演技うまいですよね。

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