「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」 乱世の男
昨年クリストファー・ノーランの「ダンケルク」で第二次世界大戦の初期のダイナモ作戦が題材となり、ダンケルクから脱出しようとする兵士たちの姿が描かれました。
本作はちょうど同じ時代、イギリスサイドの話です。
ウィンストン・チャーチルは、それまでドイツに宥和的な態度をとっていたチェンバレンに代わりイギリス首相になりました。
本作を見て感じたのは、チャーチルは極めて政治家らしい政治家であるということ。
政治家としての野心を隠そうとはしませんし、ドイツや政敵にも容赦はしません。
しかしながら、国を思い、国民を思う気持ちは他のどの政治家よりも持っています。
彼は聖人君子ではありません。
ことば巧みに国民を戦争に導く扇動者にも見えます。
彼は複雑な人間であり、一筋縄ではいきません。
フランスが降伏するに至り、チャーチルが追い込まれ庶民の声を聴く場面があります。
彼はドイツには屈服したくないという国民の意見を直接聞き、勇気をもらいます。
人民の声は彼を弱気から救っただとは思いますが、チャーチルはその意見を政治的に利用もします。
その後、閣外大臣に演説をするときにも庶民の声と言っている部分に巧みに自分の意見をのせているのですね。
この辺りは議員たちを自分が進みたい方向に上手に誘導しているわけです。
その後彼らの指示を背景に国会で演説を行い、挙国一致内閣はドイツに対し徹底抗戦の方針を決めます。
彼は彼自身の理想を持ち、強引に、そして犠牲を厭わず邁進します。
しかし、その犠牲にも心を痛め弱気になるところも持ち合わせています。
彼は演説し言葉で人々を先導しますが、また周りの人々の言葉に救われもします。
彼は完璧な人間ではありません。
近くに居たら、非常に扱いにくい人間でしょう。
しかし、強い理想があり、それを推し進める強さがある。
それがかつて見たことのない状況において諦めない力を人々に与えるのでしょう。
彼は乱世に生きる人だったのかもしれません。
彼は第二次世界大戦を戦い抜きドイツを屈服させ、その後戦争終了後は首相の座を追われます。
平和なときには彼の性格は過激に過ぎたのかもしれません。
ただ世の中が混乱しているときは強力な個性、リーダーシップが求められるものです。
確かに、彼は乱世の男だったのです。
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