「シェイプ・オブ・ウォーター」 本当の強さ
ロマンティックでありながらも何か不穏さも感じるギレルモ・デル・トロ監督らしい予告編で魅了されて鑑賞に行ってきました。
20世紀フォックスサーチライトの映画なので、割とマニアックな部類の作品ですが、結構大きな映画館でもかかっていましたね。
そうしたらアカデミー作品賞受賞!
興行的にもかなり期待されていたのでしょうか。
デル・トロらしくオタク心もありつつ、グロテスクさもありつつつ、そしてまたロマンティックでもあるという彼らしさの出ている作品でした。
そういった作品で作品賞を取れたのですから、デル・トロ監督も本望でしょう。
彼の作品では、異形のものへの愛情が溢れています。
「ヘルボーイ」シリーズもヒーローらしからぬ異形のヘルボーイをヒーローとして描いていて、荒々しい外見に関わらず彼は信頼がおける男であり、またガールフレンドのリズへの恋心などには奥手なキャラクターとして描かれています。
そういえば「ヘルボーイ」ではテレパシー能力があり、心優しい半魚人エイブが登場しますが、これがもしかすると本作にも影響をしているかもしれませんね。
デル・トロは普通でないものへの偏愛がある監督ですが、それが普通の人から見ると奇異に見えることを知っているのでしょう。
そういった普通でないものへの世間の懐の狭さも。
本作においては世間の普通とは異なった者たちが主人公です。
主人公のイライザは言葉を話すことができない女性。
もう一人の主役は半魚人です。
その他の登場人物では、イライザの同居人はホモセクシャルの作家、友人は黒人女性。
描かれている時代は昔の時代なので、彼らもいまほどには世間では受け入れられる存在ではありませんでした。
差別的な表現もいくつか描かれます。
彼らを迫害する軍人、ストリックランドは彼らかすれば「まともな男」です。
「まともである」ということは劇中でもしばしば使われてる言葉ですが、これは何か既存の価値観に縛られているということなのでしょうね。
その価値観から外れた外見、行動をしてしまった時、その価値観を重視する社会からドロップアウトしてしまう。
そうすることに常に恐怖を感じているのが、ストリックランドなのかもしれません。
その恐怖が彼の攻撃的な行動に現れているのでしょう。
そういう意味では彼は本当は弱い。
自分が立っている基本が崩れた時、彼はどのように生きていくのでしょうか。
ラストシーンで彼は半魚人に襲われます。
しっかりと描かれているわけではないですが、喉を傷つけられたので、今後は声を出すことはできなくなると思われます。
まさに彼が迫害をしていたイライザや半魚人と同じくなるのですね。
彼はそういった立場になった時、どのように感じるのでしょうか。
その点においてはイライザは強い。
自分の心だけを信じ、行動をする。
目に見えるもの、聞こえるものを信じるのではなく、自分の心がどう感じるのかだけを信じる。
余計なものには惑わされない。
最初は弱者に見えたイライザが最後には最も強い人に見えてきます。
ストリックランドは逆に追い込まれて、もろく崩れそうに見えmした。
人の本質的な強さは、自分の気持ちに素直になり、それを信じることなのかもしれません
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