「オリエント急行殺人事件(2017)」 原作を読んでいても楽しめる
アガサ・クリスティーのミステリーは大好きで、もちろん原作も読んでいます。
この作品の結末は実に驚くべきもので、初めて読んだときはポアロの謎解きの内容にひっくり返りそうになった覚えがあります。
驚くべきところは、謎の答えは非常にシンプルでありながら、(それゆえに)それまで誰も思いつかなかったというところでした。
ミステリーの謎解きというと、複雑な仕掛けがあったりというイメージがありますが、単純な答えこそ人は見逃しがちであるということがわかります。
「オリエント急行殺人事件」以降は同じような答えのミステリーを誰も書けなくなるほどのものであったと思います。
それだけオリジナリティのあるアイデアでした。
アガサ・クリスティーは他にも「アクロイド殺し」など、驚くべきトリックが仕掛けられている作品がいくつもあるので、この映画を観てミステリーに興味が出た方は、手にとってはいかがでしょうか。
(「アクロイド殺し」はその仕掛け上、映画化は難しそうですが・・・)
結末を知っているので、映画を楽しめなかったかというと、そんなことはありませんでした。
「オリエント急行殺人事件」は以前にも豪華キャストで映画化されていますが、本作も出演者は豪華でしたね。
主人公の探偵「灰色の脳細胞」を持つエルキュール・ポアロはテレビシリーズのぽっちゃりなイメージが強く残っていたのですが、ケネス・ブラナーが演じるポアロもなかなかに良かったです。
ポアロはやや偏執狂的にきっちりとした人間で、だからこそ人が見逃しそうな些細な違いにも違和感を感じ、それを手掛かりにして論理的に推理を組み立てていくというアプローチをしていきます。
最近でも古典と言えるくらいに古くなったクリスティーの作品ですので、ポアロのことを知らない人も多いかと思うのですが、オープニングのエルサレムのくだりで彼の性格が簡潔に描写されていました(卵の大きさが揃っていないと気に入らないという場面)。
また彼はベルギー人であり、彼の活躍の場となるイギリスでは異邦人ということになります。
そのためか、非常に客観的な立場の目線で事件を見ることができるわけですね。
この辺りはクリスティの設定の妙でしょう。
他の出演者もまさに主役級を集めていると言ってもいいですね。
ジョニー・デップ、ミッシェル・ファイファー、ペネロペ・クルス、ジュディ・ランチ、ウィレム・デフォー、そして「スター・ウォーズ」のレイ役で注目を集めたデイジー・リドリー。
誰が犯人でもおかしくないというところがミソになるので、やはり登場人物もこれだけ豪勢でないとこの作品は成り立ちません。
以前に読んでいて結末は知っていたとはいえ、細かい部分は忘れているので、観ていて素直にハラハラしました。
最近は本格ミステリーの映画は少ないので、堪能できました。
ラストではポアロがエジプトに呼び戻されるようなところで終わりました。
「ナイル殺人事件」に繋がったりして・・・と思いましたが、本当に作るらしいですね。
本作のヒットを受け、そのようなことになったようです。
ケネス・ブラナーのポアロは良かったので、再び彼でやってくれるといいなあ。
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