「スパイダーマン/ホームカミング」 ティーンエイジャー・ヒーロー
「スパイダーマン」シリーズの二度目のリブート作品になります。
「アメイジング・スパイダーマン」(以下「アメイジング」)シリーズは三部作シリーズだと聞いていたのですが、結果打ち切りとなりました。
理由はサム・ライミ版(以下オリジナル)よりも興行成績が悪かったからか、また長いものには巻かれろ(「アベンジャーズ」)ということか、その両方か・・・。
個人的には「アメイジング」はあまり評価をしていなかったので、この結論は歓迎ですけれども。
私は断然オリジナルが好きなのですが、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という作品の中で語られる言葉を体現している物語だからです。
ピーターは得てしまった力を誰かのために使う、しかしそのためには様々な犠牲を払わなければならないというジレンマに常に悩みます。
今でこそ悩むヒーローというのは当たり前になりましたが、その先鞭をつけたのがオリジナルだと思います。
けれども「アメイジング」はオリジナルのピーターよりも、現代的でかつ幼く描かれています。
なんというか、チャラいんですよね。
原作はどちらかといえば幼いとは思いますし、多数出てきた他のスーパーヒーローたちとは異なり10代らしさというのは差別化ポイントであったりします。
けれどもストーリーとしてはオリジナルのように「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ということがテーマにはなっており、「アメイジング」のピーターのキャラクターとのマッチングがよくなかった気がします。
それなのに「アメイジング」の2作目のラストは非常に悲劇的な結末であり、ピーターに自覚を持たせるということだったのかもしれませんが、後味が悪かった感じがします。
今回の再リブートの「スパイダーマン」もさらにティーンエイジャー化が進んでいます。
しかし、今回は成功していると思いました。
あえて「スパイダーマン」が対するのは自分の手の届く範囲の事件です。
原作の「スパイダーマン」は「親愛なる隣人」という愛称がありますが、これは世界を救うヒーローのように遠い存在ではなく、身近な事件の中で人々を救っているのがスパイダーマンであるということを言い表せています。
ティーンエイジャーは大人になりかけていると言っても、見えている範囲はやはり自分の身近なところになります。
今回10代であるスパイダーマンを描くという時に、世界を救うという大きなテーマとせず、身近に起こった犯罪ということにしたのは、距離感が近いヒーローであるということを表現するには良かったと思いました。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」オリジナルや「アメイジング」ほどの葛藤ではなく、今回のスパイダーマンの葛藤も10代らしいものです。
自分が追いかけている犯罪者が好きな女の子の父親だったら?
犯罪者を捕まえたら、女の子は悲しむ。
けれど野放しにしたらたくさんの人が悲しむ。
人の生き死や人生をかけたほどの重さではありませんが、それでも10代にとっては人生を左右すると思えるほどの葛藤です。
その頃合いが今回のティーンエイジャーのスパイダーマンという立ち位置にあっていると思いました。
今後はスパイダーマンは身近な事件を解決していく「親愛なる隣人」でいるのでしょうね。
「アベンジャーズ」には適宜絡んでいくのでしょう。
それはそれで楽しみ。
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