「グレートウォール」 才能の無駄使い
公開時には劇場に行けなかったのですが、旅行中の飛行機内で鑑賞しました。
結論から言ってしまうと、お金を払って観るほどの作品ではなかったということです。
監督はチャン・イーモウで、それが公開時に観に行こうかと思ったポイントであったのですが、本作には今までの彼の作品らしさというものが感じられなく、数多あるハリウッド映画のバッタもんといった印象でした。
彼の作品を全て観ているわけではないのですが、「HERO」「LOVERS」などのアクション映画においても、画作りが非常に美しいというのが、特徴であったかと思います。
鮮やかな色を配色した画面、スピードやカメラを巧みに使った独特なリズム。
アクションシーンであってもまるで絵画のような印象を持たせる彼の作風は、他の監督にはない特徴でありました。
しかし、本作においてはそのような彼の画作りの特徴はほとんど感じられませんでした。
万里の長城を守る禁軍の軍団がそれぞれ赤、青、紫と鎧の色が鮮やかにつけられているのは彼の作品らしいところではあります。
しかし、アクションシーンはチャン・イーモウらしい緩急をつけた華麗さはなく、安っぽいモンスターのCGも相まって、まるでハリウッドのモンスター映画のようでした。
バブル景気の時期に日本の企業がハリウッドに投資をしたのはよく知られていますが、最近では中国企業の進出が目立ちます。
本作の製作はレジェンダリー・ピクチャーズですが、この企業も中国企業に買収されました。
レジェンダリー・ピクチャーズは大衆受けするブロックバスタームービーを得意としますが、この手の作風は中国本土でも人気があるようです。
そのため、ハリウッドとしても中国マーケットを無視するわけにはいけません。
ただし、中国では海外の作品を公開する本数に制限があるようなので、中国企業が作った中国の映画であることも、中国で成功するには必要なのでしょう。
しかし、チャン・イーモウのように世界と勝負できる独自のスタイルを持っている監督にハリウッド映画的な作品を作らせるというのはいかがなものかと思います。
もし中国マーケットへ供給させるためのハリウッド映画的なものが必要なのであれば、他の監督に撮らせればいいかなと。
ま、チャン・イーモウ自体がこういう映画を撮りたいのであれば、仕方がないですが、才能の無駄使いのような感じがしてなりません。
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