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2017年6月10日 (土)

「メッセージ」 時間の呪縛

冒頭、主人公ルイーズと娘ハンナのエピソードがフラッシュバックのように描かれる。
生まれたばかりのハンナ。
物心ついた時のハンナ。
反抗期のハンナ。
そして死にゆくハンナ。
そう、ルイーズはハンナの最期を看取るのだ。
この映像が本編を通じて、唐突に差し込まれていく。
これが意味するものは・・・。

娘ができたせいか、冒頭のシーンで泣けてしまった。
自分よりも先に子供が逝ってしまうなんて、考えたくもない。
その時に味わうであろう気持ちなど想像したくもない。
ルイーズの気持ちはいかばかりか・・・。

本作はテッド・チャンのSF小説「あなたの人生の物語」。
タイトルは知っていたが、読んだことはなかった。
本編の中で、人は言語によって思考を形作られるということが語られていた。
人類の話す言語はすべからく、リニア(線形)である。
どの言語も時制について細かな言い方があるが、これは人類が過去があって、現在があって、未来があるという、時の流れを認識することに関係しているかもしれない。
もしノンリニア(非線形)の言語があるとしたら、時間に関する認識は人類とは違うものかもしれない(卵が先か、鶏が先かという議論はあるが)。
本作に登場するエイリアン、ヘプタポッドはノンリニアな言語を話す種族であった。
その言語を学ぶうちにルイーズの認識力に変化が現れていく。
もし、二次元しか認識できない種族(平面で生きる種族)が三次元の世界にいて、我々とコミュニケーションを取ろうとしたらどのようになるのだろうか。
彼らから見たら、高さ方向の認識は我々の時間についての認識に似ているかもしれない。
三次元で暮らす我々にとっては、縦も横も高さも同質のものであるが、彼らにとっては違う。
同じようなことが人類とヘプタポッドにも言えるかもしれない。
ヘプタポッドからすれば時も空間も同質に見えるのかもしれない。
3000年後という時間は、彼らにとっては空間のある地点というのと変わらない認識なのだろう。
ルイーズは彼らの言葉を学ぶことにより、彼らのものの見方というのを習得していく。
それが時をフロー(流れゆくもの)として見るのではなく、過去も現在も未来も同列に見るという見方である。
ある意味、それは未来が見えるということにもなるであろう。

しかし、これが可能であるとういうことは、この世界は決定論的であるということになる。
全てはすでに決まっている。
あるべくしてある。
人間の「人生」(時間が大きな要素になっている)という概念は大きく揺らぐであろう。
時間に呪縛されている人類は、それから解き放たれるのか。

そしてまた最初の話に戻る。
自分の子供が自分よりも先に死んでしまうということがわかっていながらも、子をなそうと考えることができるのであろうか。
ルイーズはそうした。
これは真の意味での決定論を受け入れているということなのだろう。
娘はいずれ死ぬ。
だからこそ彼女といる時間を大切にしたい、彼女と出会いたいということなのだろうか。
彼女は夫イアンと離婚したという。
イアンは完全にはヘプタポッドの言語を理解したわけではないのだろう。
愛し合っていても、世界の見方が異なるルイーズとイアンではやはり決定的に価値観が異なってしまう。
イアンからすれば(というより普通の人間からすれば)、娘の将来は不確定であり、もしルイーズがハンナが死ぬと言ってもなんとかそれを回避することはできるのではないかと考えたいであろう。
しかし、ルイーズは全てを受け入れられる。
決定論の見方を受け入れているから。

ここまで書いてみて、ちょっと思ったこと。
禅などの考え方もヘプタポッドのものの見方に近いかもしれない。
彼らは古代にも地球を訪れ、地球人と接触したのかもしれないとも考えてしまった。

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