「海賊とよばれた男」 今を創業者はどう感じるのだろうか
本作の主人公国岡鐡造は、石油元売業者出光興産の創業者、出光佐三氏をモデルとしています。
出光興産はユニークな会社で、創業時より「大家族主義」を掲げ、タイムカードや定年がありません。
出光が標榜する「大家族主義」とは社員を家族同様に処遇するという考え方で、制度として定年がないということは、家族に定年などはないという意味なのでしょうね
劇中でも鐡造が社員を家族のように扱い、会社が苦境の時も首は切らないと言っていました。
これは昨今の人件費をコスト(固定費)とする考え方とは一線を画するもので、個人的には小さな商店としてならばいざ知らず、大企業となったときはこのやり方が経営としてコントロールしやすいのかどうかというのは疑問にもつところはありますが、企業のトップとして社員を大切にするという姿勢は素晴らしいことだと思いました。
本作では戦後、日本に進出してくる石油メジャーと鐡造率いる国岡商店が激しく鍔迫り合いをする様が描かれます。
鐡造は石油を日本復興のためのキーマテリアルであると考え、それを外国に掌握されることの危険性を認識し、あくまで民族系石油会社として独立を貫くことにこだわります。
現在、石油の安価安定を受け石油元売業者は厳しい状況にあり、そういった環境変化に対応すべく出光興産と昭和シェル石油は経営統合するべく調整をしていますが、創業家(出光家)の反対により頓挫しています。
出光佐三氏はいわゆるカリスマ創業者であり、その個性と会社があまりに強く結びついていたので、創業家としては創業者の意志に逆らうようなことはできないということなのでしょうか。
かつて石油メジャーと戦い続けた出光としては、宿敵と組むのは潔しとはできないのでしょうね。
とはいえ、グローバル化が進む現在においては、提携せずに単独で邁進するということも難しいかとも思います。
映画で描かれている鐡造の本質は、既成概念にとらわれず、常識はずれと言われそうなことにも果敢にくじけずにチャレンジをしていったことだと思います。
それぞれのエリアが決まっていたときに船上での取引をしてみたり、不可能と言われたタンク底をさらってみたり、どこの国も取引ができなかったイランにタンカーを送ってみたり。
現在の出光創業家は創業者が掲げたポリシーのこだわるあまり、変化することに抵抗しているようにも見えなくはありません。
もしくは会社が生き残ること(すなわち社員を守ること)をするためになにをすべきかを考えずに、原理原則にこだわっているようにも思います。
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