「ズートピア」 多数決の怖さ
カウンターでパンフレットを買うとき「ズーラシア」くださいと言ってしまった。
動物園じゃないってーの。
本当のタイトル「ズートピア」は動物園(Zoo)とユートピア(Utopia)の造語ですよね。
この作品を観に行ったのは、時間が合うのがこれしかなかったからという極めて消極的な理由からであったのですが、見てみてびっくり、意外にもテーマがしっかりしていて、かつエンターテイメントとしても楽しい名作でありました。
見る前はいろんな動物が出てくるドタバタのエンターテイメントかと思っていたのですが、社会的な問題も内包していて意外と深い。
肉食動物から草食動物までが、平和に暮らしていける街というのが、ズートピア。
ある意味、理想郷ですよね。
観た方はわかると思いますが、これはメタファーみたいなもので、ズートピアは人間にとっての理想郷とも言えます。
あらゆる人種、文化、宗教、そういった壁を越えて、人々は仲良く暮らしていける街。
生まれながらの身分などもなく、差別もなく、みんなが自分がなりたい自分になれる社会。
人間が思い描く理想の社会がズートピアに表されています。
しかし理想郷に見えたズートピアで、行方不明事件が発生し、それが実は社会的な問題に深く根ざすということとなっていきます。
後半、ズートピアにおける少数派である肉食動物(ライオンやキツネ、ジャガーなど)は、その精神の奥底に野生を持っており、それがいつ爆発するかわからないということで、社会的な差別を受け始めます。
肉食動物たちの力は草食動物たちよりも何倍も強いものですが、圧倒的な人口の差により、肉食動物たちの居場所がなくなっていきます。
これはある種の差別です。
レッテル貼り、偏見です。
危険な行為をした肉食動物がいたとして、だからと言って全ての肉食動物が危険だとなぜ言えるのか?
冷静に考えばこういう疑問が出てくると思うのですが、社会的な流れができてしまうとなかなかそういう疑問は出てくることがありません。
このあたりが民主主義の根幹でもある(多数決)の怖さでもあるのです。
誰かがなんかおかしいと思っていても、それが大衆の数によってかき消されてしまう感じ。
ポピュラリズムの怖さとも言えましょう。
それを巧みに扱っていたのが、ズートピアの副市長であったわけですね。
よく考えれば、かつてのナチスのヒトラーも選挙で選ばれたわけですし、彼がやった行為に対して疑問を持った人もいたとは思うのですが、大きな流れに飲み込まれてそれを止めることはできなかった。
そういった民主主義が孕む危険性についても考察されている感じがしましたね。
ユートピアというのはただそこにあるのでなく、ユートピアでい続けられるにはしっかりと人々が差別やレッテル貼りといったことへ自分自身を諌めることができるようになっていなくてはいけないのだろうということなのでしょう。
とはいえ、ディズニーなので深刻なテーマを掲げただけではなく、ちゃんとハッピーエンドになっています。
レッテルで人を見るのではなく、お互いにその人そのものを見てあげる。
そうすれば人は夢を持ちなりたい自分になれ、またお互いに信頼しあうことができるのでしょう。
通常、この手の動物がたくさん出てくるおとぎ話だと、肉食動物=強者、草食動物=弱者というイメージがあったわけですが、そのマインドセットを逆転させたところがアイデアだったかなと。
そこで浮かび上がってくるのは多数決の怖さであるわけで、よく考えられた作品であると思いました。
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「ズートピア」 多数決の怖さ:
» ズートピア ★★★.5 [パピとママ映画のblog]
あらゆる動物が住む高度な文明社会を舞台にした、ディズニーによるアニメーション。大きさの違いや、肉食・草食にかかわらず、動物たちが共に暮らすズートピアで、ウサギの新米警官とキツネの詐欺師が隠された衝撃的な事件に迫る。製作総指揮をジョン・ラセターが務め、監督を『塔の上のラプンツェル』などのバイロン・ハワードと『シュガー・ラッシュ』などのリッチ・ムーアが共同で担当。製作陣がイマジネーションと新たな解釈で誕生させたという、動物が生活する世界のビジュアルに期待が高まる。
あらすじ:ハイテクな文明を誇るズートピ... [続きを読む]
受信: 2016年6月16日 (木) 12時24分
» ズートピア [映画的・絵画的・音楽的]
『ズートピア』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)ディズニー・アニメながら評判が大変良いので映画館に行ってきました。
本作(注1)の冒頭は、バニーバロウという町にある大きな小屋の中で演じられている子供達の劇のシーン(注2)。
ウサギのジュディが舞台に現...... [続きを読む]
受信: 2016年6月18日 (土) 05時06分
» 劇場鑑賞「ズートピア」 [日々“是”精進! ver.F]
夢は、諦めない…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201604240000/
ズートピア オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]価格:2700円(税込、送料無料)
ディズニー ズートピア ビジュアルガイド [ 0 ]価格:1404円(税込、送料無...... [続きを読む]
受信: 2016年6月18日 (土) 05時23分
» ズートピア [Akira's VOICE]
見た目通り楽しい!
ドラマは深い!
[続きを読む]
受信: 2016年6月18日 (土) 10時12分
» "Nick and Judy"『ズートピア(Zootopia)』バイロン・ハワード/リッチ・ムーア監督 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
『ズートピア』Zootopia監督 : バイロン・ハワード/リッチ・ムーア共同監督 : ジャレド・ブッシュ声の出演 : ジニファー・グッドウィンジェイソン・ベイトマンJ・K・シモンズ、ジェニー・スレイ... [続きを読む]
受信: 2016年6月18日 (土) 22時42分
» 大人にウケるのは分かるけど・・・『ズートピア』 [水曜日のシネマ日記]
あらゆる動物が住む高度な文明社会を舞台にしたディズニーによるアニメーション映画です。 [続きを読む]
受信: 2016年6月19日 (日) 12時10分
» ズートピア [♪HAVE A NICE DAY♪]
へ~~~意外!
後半ミステリーなお話で
次々起こる失踪事件や凶暴化する動物達!
そして影で操っていた悪い奴!(笑)
面白かった~~!
これって色々な動物が出てきて可愛いし笑えるしで
子供向けかと思ったら
大人も観た方がいいのでは!と思えました。
小さい動物...... [続きを読む]
受信: 2016年6月20日 (月) 20時32分
» 動物たちの国~『ズートピア』 【字幕版】 [真紅のthinkingdays]
ZOOTOPIA
頑張り屋のウサギのジュディは、動物たちの楽園 「ズートピア」 で警察官
になるという夢を叶える。しかし彼女にあてがわれたのは駐車違反の切符切
り係。街に出た彼女は詐欺師のキツネ、ニック・ワイルドと出逢う。
本国でも日本でも大ヒット中のディズニーの新作。なんとかチケットを取り、
字幕版で鑑賞。アニメ映画を吹替えで観ることにあ...... [続きを読む]
受信: 2016年6月26日 (日) 22時27分
» 映画:ズートピア Zootopia 大都会での成長プロットを、見事にディズニーアレンジ [日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~]
まずメインプロットが鉄板。
若く力のない主人公が、大都会に出て苦労しながら一人前になっていく、というストーリー。
地方都会、という構図は日本でも海外でも現代社会の基本パターンのひとつなので、共感されやすいのだ!
また主人公は警察官と、また違う意味でも映画好きに響く展開。
(古くて恐縮だが)マンハッタン無宿とか、それで派生してできたテレビシリーズ「警部マクロード」(笑)
...... [続きを読む]
受信: 2016年6月28日 (火) 00時42分
» ズートピア(日本語吹替版) 監督/バイロン・ハワード&リッチ・ムーア [西京極 紫の館]
【声の出演】
上戸 彩 (ジュディ)
森川 智之(ニック)
【ストーリー】
ハイテクな文明を誇るズートピアには、さまざまな動物が共存している。そんな平和な楽園で、ウサギの新米警官ジュディは夢を信じる一方、キツネの詐欺師ニックは夢を忘れてしまっていた。そん...... [続きを読む]
受信: 2016年7月 1日 (金) 07時20分
» 「ズートピア」 [prisoners BLOG]
この世界で肉食動物は何を食べているのだろう、というのは気になった。豹がドーナツを食べていたり、キツネがパイを焼いて売っているところをみると小麦食なのかと思うが、ミートパイではないだろうなと余計なことを考えてしまう。
世界がディズニーランドばりに寒冷地と湿...... [続きを読む]
受信: 2016年7月 3日 (日) 10時19分
» ズートピア・・・・・評価額1750円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
恐怖を煽る者に「NO!」を。
様々な動物たちが暮らす大都会「ズートピア」を舞台に、ウサギの新米警官・ジュディと、ひょんなことから彼女とコンビを組むキツネの詐欺師・ニックの活躍を描くファンタジー。
なかなか仕事を任せてもらえないジュディがやっと掴んだチャンスから、奇妙なバディは肉食動物たちの失踪事件の裏に隠された、大掛かりな陰謀を暴き出してゆく。
かわいい動物キャラクターとカラフルな...... [続きを読む]
受信: 2016年7月 3日 (日) 17時07分
» 『ズートピア』('16初鑑賞40・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆☆☆ (10段階評価で 10)
4月23日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター9にて 16:45の回を鑑賞。 2D・吹き替え版。 [続きを読む]
受信: 2016年7月 3日 (日) 20時29分
» アナ雪のその向こう。~「ズートピア」~ [ペパーミントの魔術師]
ヤフーの解説のほうに少し書いてたけど、雪だるまは溶けるということすら教えられないアナ雪とはちがうと。
ありのままになんか生きられるかよという、そのへんはセリフでも出てきましたけど、
動物を擬人化したアニメでえらいリアルをつきつけてくるんだな~って思いまし...... [続きを読む]
受信: 2016年7月21日 (木) 17時10分
» 16-096「ズートピア」(アメリカ) [CINECHANが観た映画について]
なりたいものに、何でもなれる
動物たちの楽園ズートピアで、史上初のウサギの警察官となったジュディ。立派な警察官を目指して意欲満々の彼女だったが、周囲は小さなウサギに務まるはずないと半人前扱い。
それでも決してへこたれないジュディ。
折しも、巷では14件もの連続行方不明事件が発生、警察も捜査に追われてんてこまい。ついにジュディにも捜査に参加するチャンスが巡ってくる。
しかし与えられた時間はたったの2日間。しかも失敗すればクビという厳しい条件が課されていた。
そこでジュディ...... [続きを読む]
受信: 2016年8月 8日 (月) 01時28分
» ズートピア [いやいやえん]
【概略】
“楽園”ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディが、与えられた48時間で行方不明事件の捜査に挑む。
アニメーション
輝け!ワタシ。
動物たちの“楽園ズートピアで、ウサギとして初の警察官になったジュディ。でも、ひとつだけ問題が…。警察官になるのは通常、クマやカバのように大きくてタフな動物たちで、小さく可愛らしすぎる彼女は半人前扱いなのだ。だが、ついにジュディも捜査に参加するチャンスが!ただし、与えられた時間はたった48時間。失敗したらクビで、彼女の... [続きを読む]
受信: 2016年8月24日 (水) 06時53分
» ズートピア [銀幕大帝α]
ZOOTOPIA
2016年
アメリカ
108分
アドベンチャー/ファンタジー/ミステリー
劇場公開(2016/04/23)
監督:
バイロン・ハワード
『塔の上のラプンツェル』
リッチ・ムーア
『シュガー・ラッシュ』
製作総指揮:
ジョン・ラセター
声の出演:
ジニファー・グッ...... [続きを読む]
受信: 2016年8月30日 (火) 20時31分
» 『ズートピア』 [beatitude]
高度な文明が発達した動物たちの楽園ズートピア。そこは、誰もが夢を叶えられるところだった。田舎町バニーバロウで育ったウサギのジュディは、幼い頃から、世界をより良くするために警察官になりたいと思い描いていた。サイやカバといった大型動物だけが警察官になっているものの、ジュディは警察学校を首席で卒業。ウサギとして初めて警察官になり、ズートピアに赴任する。しかし、動物たちの連続行方不明事件が発生し、捜査に向かうのはサイやゾウといった大型の同僚たちばかり。スイギュウの署長ボゴはジュディの能力を認めようとせず、駐... [続きを読む]
受信: 2016年10月11日 (火) 22時48分
» ズートピア [だらだら無気力ブログ!]
ナマケモノのくだりがサイコー! [続きを読む]
受信: 2017年1月 6日 (金) 23時36分
» ズートピア [マープルのつぶやき]
JUGEMテーマ:アニメ映画全般
nbsp;
nbsp;
「ズートピア」
原題:Zootopia
監督:バイロン・ハワード
リッチ・ムーア
2016年 アメリカ映画 109分
キャスト(声):ジニファー・グッドマン
ジェイソン・ベイトマン
イドリス・エルバ
ネイト・トレンス
J・K・シモンズ
nbsp;
... [続きを読む]
受信: 2017年3月19日 (日) 15時21分
コメント