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2016年6月12日 (日)

「ズートピア」 多数決の怖さ

カウンターでパンフレットを買うとき「ズーラシア」くださいと言ってしまった。
動物園じゃないってーの。
本当のタイトル「ズートピア」は動物園(Zoo)とユートピア(Utopia)の造語ですよね。
この作品を観に行ったのは、時間が合うのがこれしかなかったからという極めて消極的な理由からであったのですが、見てみてびっくり、意外にもテーマがしっかりしていて、かつエンターテイメントとしても楽しい名作でありました。
見る前はいろんな動物が出てくるドタバタのエンターテイメントかと思っていたのですが、社会的な問題も内包していて意外と深い。
肉食動物から草食動物までが、平和に暮らしていける街というのが、ズートピア。
ある意味、理想郷ですよね。
観た方はわかると思いますが、これはメタファーみたいなもので、ズートピアは人間にとっての理想郷とも言えます。
あらゆる人種、文化、宗教、そういった壁を越えて、人々は仲良く暮らしていける街。
生まれながらの身分などもなく、差別もなく、みんなが自分がなりたい自分になれる社会。
人間が思い描く理想の社会がズートピアに表されています。
しかし理想郷に見えたズートピアで、行方不明事件が発生し、それが実は社会的な問題に深く根ざすということとなっていきます。
後半、ズートピアにおける少数派である肉食動物(ライオンやキツネ、ジャガーなど)は、その精神の奥底に野生を持っており、それがいつ爆発するかわからないということで、社会的な差別を受け始めます。
肉食動物たちの力は草食動物たちよりも何倍も強いものですが、圧倒的な人口の差により、肉食動物たちの居場所がなくなっていきます。
これはある種の差別です。
レッテル貼り、偏見です。
危険な行為をした肉食動物がいたとして、だからと言って全ての肉食動物が危険だとなぜ言えるのか?
冷静に考えばこういう疑問が出てくると思うのですが、社会的な流れができてしまうとなかなかそういう疑問は出てくることがありません。
このあたりが民主主義の根幹でもある(多数決)の怖さでもあるのです。
誰かがなんかおかしいと思っていても、それが大衆の数によってかき消されてしまう感じ。
ポピュラリズムの怖さとも言えましょう。
それを巧みに扱っていたのが、ズートピアの副市長であったわけですね。
よく考えれば、かつてのナチスのヒトラーも選挙で選ばれたわけですし、彼がやった行為に対して疑問を持った人もいたとは思うのですが、大きな流れに飲み込まれてそれを止めることはできなかった。
そういった民主主義が孕む危険性についても考察されている感じがしましたね。
ユートピアというのはただそこにあるのでなく、ユートピアでい続けられるにはしっかりと人々が差別やレッテル貼りといったことへ自分自身を諌めることができるようになっていなくてはいけないのだろうということなのでしょう。
とはいえ、ディズニーなので深刻なテーマを掲げただけではなく、ちゃんとハッピーエンドになっています。
レッテルで人を見るのではなく、お互いにその人そのものを見てあげる。
そうすれば人は夢を持ちなりたい自分になれ、またお互いに信頼しあうことができるのでしょう。

通常、この手の動物がたくさん出てくるおとぎ話だと、肉食動物=強者、草食動物=弱者というイメージがあったわけですが、そのマインドセットを逆転させたところがアイデアだったかなと。
そこで浮かび上がってくるのは多数決の怖さであるわけで、よく考えられた作品であると思いました。

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