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2016年6月16日 (木)

「64-ロクヨン-後編」 子への思い、届かぬいたたまれなさ

<ネタバレ部分があるので、注意してください>

前編は昭和64年に発生した誘拐事件「ロクヨン」を模倣した事件が発生したところで終わっていました。
事件が始まってすらいないところではあったので、後編も気になって公開後すぐに観に行ってきました。
模倣事件は誰が行っているのか?
誘拐された子供は助けられるのか?
そもそも「ロクヨン」の犯人は見つかるのか?
といった謎が解けていくのも見どころではあるのですが、それよりも親が子供を思う気持ちの深さ、そしてそれが届かぬ時のいたたまれなさに感じ入りました。
「ロクヨン」で娘を殺害されてしまった雨宮は十数年にもわたり、一人で犯人を追っていました。
毎日のように一軒一軒電話をかけ、自分だけが知っている犯人の声を探していたのです。
それは気の遠くなるような作業であったでしょう。
しかし、それは彼にとって唯一、愛娘と繋がっていられる行為であったのでしょう。
雨宮は年月が経ち、娘のことを忘れてしまっていきそうになることが恐ろしいと言ってしました。
彼がいかに娘を想っていても、それを直接伝えることはもうできません。
声をかけてあげたくとも届かない。
そのいたたまれなさといったら。
彼ができる唯一のことは一つ一つ電話番号を潰していくことだけ。
そうすることによって、彼は娘と繋がっていたいと思ったのかもしれません。
また、主人公三上にしても、そのいたたまれなさを抱えています。
彼に反抗的な娘に手を焼き、その気持ちを理解できないという悩みがありました。
しかし、彼は娘と正面を切って向かい会おうとはできず、その結果娘は失踪をしてしまいます。
彼も娘を愛していないわけではなく、それだからこそ娘がいなくなった時、喪失感を感じ、自分が間違ったことをしてしまったのでないかという思いを持ち続けています。
だからこそ三上は、雨宮の本当の思いを理解した時、彼が持ついたたまれなさに共感したのではないかと思います。
そして雨宮も三上が心の中に抱えている思いを察したのではないでしょうか。

また本作では、人は自分の強い思いに支配された時、他人の気持ちを思いはかることができなくなってしまうということも浮かび上がってきます。
「ロクヨン」の犯人は後編で割とあっさりとわかります。
そもそも模倣事件自体が、彼が犯人であることを明らかにさせるために仕込まれたことであるわけです。
かつて自分が行ったと同じように娘を誘拐された時に、犯人は自責の念にかられるのか。
彼は自分の娘を助けるために大金も用意します。
そのために自分は何でもやるとも言います。
彼は模倣犯に対し、娘の命を懇願した時に、かつての自分の姿は思い浮かばなかったのでしょうか。
自分が娘を思う気持ちが何ものにも勝ってしまう。
同じことは、三上にも言えます。
三上が犯人を追い詰めた時、彼は雨宮に共感し、その思いを果たしてあげるためと考えていたのでしょう。
娘のためという雨宮の思いを遂げること、それは三上自身にとっても思いを果たすことと同じになっていたのかもしれません。
だからこそ、三上は禁じ手とも言える手法で犯人を追い詰める。
そして、それにより犯人の娘の気持ちをも傷つけてしまいました。
それは犯人が他人の気持ちをわからずに犯行を行ったことと、同じことであるようにも思えます。
いかに親の子供に対する思いが強く、そのためであるならば他の人間を傷つけてしまうこともしてしまうという業の深さを描いているようにも思いました。

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コメント

ここなつさん、こんばんは!

人はどこか自己本位なところがあるのですよね。
自分や家族なことを大切に思うのと同じようには所詮他人を思えないという。
そこを分かりながら、自分をいかに戒められるかということなのでしょうか。

投稿: はらやん | 2016年7月23日 (土) 22時31分

こんにちは。
特に、>いかに親の子供に対する思いが強く、そのためであるならば他の人間を傷つけてしまうこともしてしまうという業の深さを描いているようにも思いました。
の部分に考えさせられました。
脆い存在の人間は、組織や家族の絆を過大評価しつつ生きていると思うのですが、それすら親子の情愛の中ではちっぽけな大きさなのかもしれませんね。

投稿: ここなつ | 2016年7月20日 (水) 12時49分

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