« 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」 生と死の生々しさ | トップページ | 「アイ アム ア ヒーロー」 日常から非日常へのグラデーション »

2016年4月23日 (土)

「エヴェレスト 神々の山嶺」 魅入られた男たち

「なぜ山に登るのか?」
「そこに山があるからだ」
これは本作でもキーマンとなるジョン・マロリーの言葉です。
そしてこの作品に伝説のクライマーとして登場する羽生は「ここに自分がいるからだ」と答えます。
まさに山に登ることこそが、彼にとってのレゾンデートル(存在意義)であるということでしょうか。
エヴェレストのような山へのアタックはその道程も一般人が想像できないほどに苦しく(自分は高尾山の登山くらいでヒーヒー言っている)、そして命を失う危険性も高いのに彼らはなぜ山に挑むのでしょうか。
山を攻略するためには、自分の頭脳、体力、それこそ己の全てを出し切らなければならないのでしょう。
己の命すらも。
しかし全身全霊、すなわち命をかけることは、普通の生き方では感じられない充実感があるのかもしれません。
一度それを経験すると、そこでしか生を感じられないということも起こり得るのかもしれませんね。
羽生の姿を見ていると、まさに地上で普通に暮らしている時の姿は周りのものへの関心が極端に少ない感じがします。
彼にとっては普通に地上で生きていることの方が非現実的なのかもしれません。
山にあってこそ自分の生を感じられる。
まさに山に魅入られた男なのかもしれません。
そしてもう一人、本作には深町というカメラマンも登場します。
彼は若く、功名心も高い男でした。
彼にとっての山は自分がカメラマンとして名を上げるための舞台であったのでしょう。
しかし、深町は取材の中で羽生に出会います。
深町にとって羽生は最初は不可解で理解しがたい男であったと思います。
けれども彼の生き様を知っていくにつれ、深町自身も己の生を感じられるようになったのかもしれません。
「なぜ人は山に登るのか?」
その問いは「なぜ人は生きるのか?」という問いにもつながるかもしれません。
生きることにも、様々な苦難があり、逃げ出したくなるようなことも多々あります。
それでも多くの人は生き続ける。
深町は自分が命を落としそうな経験を経て、おそらく「なぜ人は生きるのか」という問いを自分の中に抱くようになったのでしょう。
その答えを自分なりに出さなければ、一歩も先に進めない。
生きていくために、問いの答えを出すために、彼は羽生を追います。
彼は羽生に魅入られました。
それは生きること、登ることに魅入られたということなのかもしれません。
命をかけて山を登ること、それは命を捨てるということではなく、自らの命を極限の状況で実感するということなのでしょうね。
思えば自分の生を本当に実感できるということは、普通の生活ではなかなかないものです。
その実感ができた時、人は魅入られてしまうのものなのでしょうか。

|

« 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」 生と死の生々しさ | トップページ | 「アイ アム ア ヒーロー」 日常から非日常へのグラデーション »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/186553/63524491

この記事へのトラックバック一覧です: 「エヴェレスト 神々の山嶺」 魅入られた男たち:

» 映画・エヴェレスト 神々の山嶺 [読書と映画とガーデニング]
2016年 日本 世界最高峰の山に挑む男たち命を削ってまで山に登ることにどんな意味があるのか何を求めるのか クライマックスはエヴェレストの冬季南西壁、単独無酸素登頂という前人未踏の登攀を計画する孤高の天才クライマー羽生(阿部寛)の挑戦を見届けるべく...... [続きを読む]

受信: 2016年4月23日 (土) 10時49分

» エヴェレスト 神々の山嶺 ★★★★ [パピとママ映画のblog]
第11回柴田錬三郎賞を受賞し、漫画版と共にベストセラーを記録している夢枕獏の小説「神々の山嶺」を実写化したドラマ。あるクラシカルなカメラを手にした写真家が、カメラの逸話を調べるうちに孤高のアルピニストとして名をとどろかせた男の人生に触れていく姿を追い掛け...... [続きを読む]

受信: 2016年4月25日 (月) 15時17分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [映画的・絵画的・音楽的]
 『エヴェレスト 神々の山嶺』を吉祥寺オデヲンで見ました。 (1)阿部寛が出演するというので映画館に行ってきました。  本作(注1)の冒頭では、エヴェレストの威容が映し出された後、一人の男がもう一人の男の写真を撮っているところが描かれ、ナレーションがかぶさ...... [続きを読む]

受信: 2016年4月25日 (月) 18時50分

» 劇場鑑賞「エヴェレスト 神々の山嶺」 [日々“是”精進! ver.F]
そこに山があるから… 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201603120001/ 【楽天ブックスならいつでも送料無料】エヴェレスト 神々の山嶺 オリジナル・サウンドトラック ...価格:2,700円(税込、送料込) 【楽天ブックスならいつでも送料無料】神々の山嶺(上) [ 夢枕...... [続きを読む]

受信: 2016年4月29日 (金) 19時55分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [勝手に映画評]
エヴェレストを描いた映画としては、昨年『エベレスト 3D(Everest)』がありましたが、エベレストを映画で描くのって流行りなんですかね。『エベレスト 3D(Everest)』の時も思いましたが、(邦画だと結構ちゃちい画になりがちですが)5200mまで登って撮影しただけのこ...... [続きを読む]

受信: 2016年4月29日 (金) 19時58分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [花ごよみ]
原作は夢枕獏の小説「神々の山嶺」 監督は平山秀幸。 岡田准一、阿部寛、尾野真千子が出演。 山岳カメラマンの深町は ネパールの首都カトマンズで古いカメラに出会う。 そのカメラは、登山家ジョージ・マロリーの、 エベレスト初登頂に関わるカメラだった。 カメラを...... [続きを読む]

受信: 2016年4月30日 (土) 10時11分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [映画好きパパの鑑賞日記]
 夢枕獏の山岳小説を、演技派キャストで映画化しましたが、去年のハリウッド版「エベレスト3D」とSFXではまったく勝負にならないうえ、肝腎のストーリーも総集編のようでとばしすぎ。途中うとうとしました。現地まで行った俳優陣はがんばっていたのに、もったいない。  …... [続きを読む]

受信: 2016年4月30日 (土) 23時36分

» 映画「エヴェレスト 神々の山嶺」 [FREE TIME]
映画「エヴェレスト 神々の山嶺」を鑑賞しました。 [続きを読む]

受信: 2016年5月 1日 (日) 16時39分

» 『エヴェレスト 神々の山嶺』('16初鑑賞25・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆--- (10段階評価で 4) 3月12日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター8にて 12:50の回を鑑賞。 [続きを読む]

受信: 2016年5月 1日 (日) 20時40分

» 「エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)」みた。 [たいむのひとりごと]
夢枕獏 :原作の『神々の山嶺』の映画化。一応既読者。映画化の影すらなかった頃に読んだっきりなのでうろ覚えではあるのだけど、スケールの大きい話だけに描き切るのはやっぱり無理だったかという印象。見せ場は山... [続きを読む]

受信: 2016年5月 3日 (火) 09時23分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2016/03/12公開 日本 122分監督:平山秀幸出演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、テインレィ・ロンドゥップ、山中崇、佐々木蔵之介 生きて、必ず帰る STORY:ネパールの首都カトマンズ。ヒマラヤ山脈が見えるその街で、日本人カメラマン...... [続きを読む]

受信: 2016年5月 6日 (金) 16時25分

» エヴェレスト 神々の山嶺 [C’est joli ここちいい毎日を♪]
エヴェレスト 神々の山嶺 16:日本 ◆監督:平山秀幸「太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男」「しゃべれども しゃべれども」 ◆主演:岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、ツェリン・ロンドゥップ、佐々木蔵之介 、山中崇 ◆STORY◆カトマンドゥを訪れた山岳カメラマンの深町誠(岡田准一)は、エヴェレスト史上最大の謎を解く可能性を秘めた古いカメラを発見する。失われたフィルムを追ううちに辿り着いたのは、孤高の天才クライマー、羽生丈二(阿部寛)の存在だっ...... [続きを読む]

受信: 2016年7月 4日 (月) 22時26分

« 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」 生と死の生々しさ | トップページ | 「アイ アム ア ヒーロー」 日常から非日常へのグラデーション »