« 「アンフェア the end」 裏切られても・・・ | トップページ | 「マイ・インターン」 理想の会社 »

2015年10月31日 (土)

「図書館戦争 THE LAST MISSION」 表現の自由を守るために

2013年に公開された「図書館戦争」の続編になります。
原作は何作にも及ぶシリーズですのでエピソードもたくさんありますが、その中でも「図書館危機」の茨城県展警備を中心に組み立てられています。
茨城県展警備は映画としても見せ所があるエピソードですし、図書館隊の存在意義を問う話でもあるので、ここにスポットを当て、余計な要素を排除したのは、シナリオとして正解であったかなと思います。
もともと原作の「図書館戦争」シリーズは大好きな作品で、その面白さはいくつも理由があります。
一つは主人公笠原とその教官堂上のベタ甘ラブコメの要素。
そしてもう一つは「表現の自由」とそれを守る戦いといった図書館隊の存在意義そのものを扱ったシリアスなテーマです。
今回の劇場版は比較的後者の方に比重を置き、加えて実写ならではの大規模戦闘シーンなどを見どころを加味していて、うまくまとめています。
劇中でも手塚の兄、彗が言っているように「表現の自由」には幾つかの課題もあります。
確かに「表現の自由」という名目のもと、現代は信ぴょう性のない記事や、人を傷つける言葉、興味本位だけのくだらない内容の書物などが溢れています。
そういった言葉により傷つく人もいるわけで、そういったことを規制しなくてはいけないと思う気持ちもわかります。
しかし、難しいのは何を持って規制とするかというガイドラインです。
これは慎重に決めていかなくてはいいけないし、それを作り、また見直し、運用していくために社会のいくつも知識・良識が動員されるべきです。
このシリーズに登場するメディア良化隊という組織がスタートした課題意識はそれほど間違っていない。
けれどその判断を、一つの組織が決めていくということに問題があります。
その判断にはどこかで恣意的な要素が入ってくるかもしれないし、また組織が組織として存続していくために本来の目的から逸脱してきてしまうということも多々あることです。
そしてまたその判断に迎合していく「自主規制」という行動も問題があります。
公的機関(最近では世論・クレームなども)に言われなくするために、表現を当たり障りのないものにしていってしまう。
個人的には様々なことで表現の規制を加えようとする行政や市民団体の動きにはあまり賛成できません。
ガイドライン的なものがいることはわかりますが、それが政治的だったりある特定の考え方による恣意的なものになってしまうことを恐れます。
多様性という言葉をよく聞くようになりましたが、その点からいっても様々なものがあることは良いことだと思います。
子供達に教えていかなければいけないのは、そう言った様々な考え方、情報をいかに取捨選択できるようにしていくかということなのだと思うのです。
もちろん人を傷つける内容は問題外ですが、神経質に対応しすぎることにより、結果的に物申せない環境を自ら作ってしまうという危険性があります。
この物語で図書隊を覆う環境は優しいものではありません。
メディア良化隊の創設時の課題はある種の納得性があり、また彗が言う指摘点もある側面では正しい。
また世間が「表現の自由」を当たり前のものとして受け止めていて、それがどのように守られているかを知らない。
一部の図書隊員が無意味さを感じるのも無理はないという状況も確かです。
けれど、国民の全員が全員認めてくれるものではないかもしれない。
でも何人かの人々は自由に本を読めるということのありがたさを感じてくれている人もいる。
その人たちのためにも戦うという決心をしている図書隊員の姿が頼もしく、彼らが劣勢の中でも戦い続けている姿に泣けてきました。

この作品、かなり自衛隊の協力も入ってましたね。
原作者の有川さんは自衛隊員を主人公とした小説を何本も書いているのでそのコネクションがあるからかもしれませんが、今回描かれる図書隊の立場はまさに日本における自衛隊の立場とも酷似します。
現場の自衛隊員が悩むこと(自らの組織の存在意義、世間の無関心)と共通する図書隊の悩みに共感したのかもしれないですね。

笠原と堂上のラブコメ要素もなくなったわけではなく、アクションやシリアスなテーマの間にいい感じで挟み込まれて、ほんわかと安らぐ気持ちになりました。
例によって岡田さんのアクションシーンは目を見張ります。
ここまでやれる俳優さんはなかなか日本にはいないですよね。

|

« 「アンフェア the end」 裏切られても・・・ | トップページ | 「マイ・インターン」 理想の会社 »

コメント

ここなつさん、こんばんは!

有川浩さん原作の作品の登場人物は恋愛偏差値が低いキャラが多いですよね。
今日見てきた「レインツリーの国」もそうでした。
今時っぽくなくて、彼らの不器用さにドキドキしちゃいます。
戦闘シーンは岡田さんじゃなくちゃできないですねー。
あれほどのキレがあるアクションができる俳優さんはなかなかいないです。

投稿: はらやん | 2015年11月28日 (土) 22時26分

こんにちは。
岡田准一さんは、すっかり日本を代表する俳優になったな、と思いました。
あの色恋沙汰に鈍感な教官役は、古いタイプの男性像なので、結構イマドキは難しい役柄なのではないかと思います。
今回、戦闘シーンが長かったですが、色々と考えることができたので私としては満足でした。

投稿: ここなつ | 2015年11月24日 (火) 12時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/186553/62585339

この記事へのトラックバック一覧です: 「図書館戦争 THE LAST MISSION」 表現の自由を守るために:

» 図書館戦争 THE LAST MISSION ★★★.5 [パピとママ映画のblog]
表現の自由を巡って政府と図書館が互いに武装して対立する架空の近未来を舞台に、愛する本を守るべく図書館防衛組織に入隊した熱血ヒロインが繰り広げる過酷な戦いの日々と甘酸っぱい恋の行方を描く有川浩原作の大ヒット・アクションの実写劇場版第2弾。出演は岡田准一、...... [続きを読む]

受信: 2015年10月31日 (土) 21時19分

» 『図書館戦争 THE LAST MISSION』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「図書館戦争 THE LAST MISSION」□監督 佐藤信介□脚本 野木亜紀子□原作 有川 浩□キャスト 岡田准一、榮倉奈々、田中 圭、福士蒼汰、       松坂桃李、西田尚美、中村 蒼、土屋太鳳■鑑賞日 10月11日(日)■劇場  TOHO...... [続きを読む]

受信: 2015年11月 3日 (火) 18時53分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION [象のロケット]
「本を読む自由」を守る図書隊の特殊部隊(タスクフォース)所属となった笠原郁は、鬼教官である堂上篤の罵倒とシゴキに耐え、上官の小牧幹久、同期の手塚光や柴崎麻子らと、厳しい訓練と図書館業務の日々を過ごしていた。 図書隊は、この世に1冊しか現存しない自由の象徴「図書館法規要覧」の一般展示が行われる“芸術の祭典”会場の警備をすることになったが…。 近未来アクション第2弾。... [続きを読む]

受信: 2015年11月 5日 (木) 09時42分

» ドンパチがほとんどでもやっぱりラブコメ。(≧∇≦*)〜「図書館戦争 THE LAST MISSION」〜 [ペパーミントの魔術師]
いやもうそれださんでええでしょ。(爆)     ええわ〜このギャップ。(爆) この世に1冊しか存在しない「図書館法規要覧」の一般展示が行われる芸術の祭典の会場を警備せよ。 ・・・実際は内部の裏切りにあって、この場所へ「いのちがけで本を届ける」ってのがst...... [続きを読む]

受信: 2015年11月 8日 (日) 15時04分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION [はるみのひとり言]
試写会で観ました。 メディア良化法が制定され、国家による思想検閲やメディア規制が横行する近未来の日本。大事な本を守ってくれた図書隊員に憧れ、図書隊に入隊した笠原郁は、その類い希な身体能力で鬼教官・堂上篤の厳しい指導にも耐え、女性では初の図...... [続きを読む]

受信: 2015年11月20日 (金) 00時35分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION/岡田准一、榮倉奈々 [カノンな日々]
原作の大々々ファンです。観に行く理由はそれだけで十分なのです。 出演はその他に、田中圭、福士蒼汰、西田尚美、橋本じゅん、土屋太鳳、中村蒼、相島一之、児玉清、松坂桃李、 ... [続きを読む]

受信: 2015年11月23日 (月) 21時18分

» 「図書館戦争 THE LAST MISSION」 [ここなつ映画レビュー]
「図書館戦争」の続編が作られている、というニュースが届いた時から、次男はその公開を指折り数えて待っていた。「図書館戦争」観てぇ〜!の気分である。1年近くその気分を持続したまま鑑賞。期待していた内容であった。この世界観に理解・共感できるなら、引き込まれる作品だと思う。私は堂上教官と笠原の恋の行方に結構興味があったんだけど、次男はそんなことよりも、図書隊とメディア良化隊の戦闘シーンがかなりの部分を占めた事に対して満足していた。「あー、図書隊なりてえー!」と言っていた2年前と基本的には変わらない。内容が図... [続きを読む]

受信: 2015年11月24日 (火) 12時51分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION [C’est joli ここちいい毎日を♪]
図書館戦争 THE LAST MISSION 15:日本 ◆監督:佐藤信介「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」「図書館戦争」 ◆主演:岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、西田尚美、橋本じゅん、土屋太鳳、松坂桃李、中村蒼、石坂浩二、相島一之、栗山千明 ◆STORY◆近未来の日本。国...... [続きを読む]

受信: 2015年12月27日 (日) 20時51分

» 「図書館戦争 THE LAST MISSION」、本を読む自由を守るための戦争です [ひろの映画日誌]
おススメ度 ☆☆☆ 「図書館戦争」の続編です。 一応、前半で説明があるので前編とか原作とか、見なくてもよいですが、見ておくとより入りやすいでしょう。 テレビドラマもあるらしいです。 近未来で、本を読む自由を制限するメディア規制があり、これを阻止するために...... [続きを読む]

受信: 2015年12月29日 (火) 08時56分

» 『図書館戦争 THE LAST MISSION』 [beatitude]
近未来の日本。国家による思想検閲やメディア規制が広まるのに対抗し、読書の自由を守るために図書館の自衛組織・図書隊が結成される。読みたい本を取り上げられそうになったところを図書隊隊員に助けてもらった笠原郁(榮倉奈々)は、その隊員に憧れ自ら図書隊に入隊。特殊...... [続きを読む]

受信: 2015年12月29日 (火) 21時56分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION [銀幕大帝α]
2015年 日本 120分 アクション/ロマンス/コメディ 劇場公開(2015/10/10) 監督: 佐藤信介 『図書館戦争』 出演: 岡田准一:堂上篤 榮倉奈々:笠原郁 田中圭:小牧幹久 福士蒼汰:手塚光 西田尚美:折口マキ 橋本じゅん:玄田竜助 土屋太鳳:中澤毬江 松坂...... [続きを読む]

受信: 2016年3月27日 (日) 21時36分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2015/10/10公開 日本 120分監督:佐藤信介出演:岡田准一、榮倉奈々、田中圭、福士蒼汰、西田尚美、橋本じゅん、土屋太鳳、中村蒼、相島一之、児玉清、松坂桃李、栗山千明、石坂浩二 守り抜く。すべての希望を。 Story:年号が昭和から正化になってから33年、関東図書隊...... [続きを読む]

受信: 2016年4月 6日 (水) 23時51分

» 図書館戦争 THE LAST MISSION プレミアムBOX [Blu-ray] [こんな世界だからこそ本音を]
図書館戦争 THE LAST MISSION プレミアムBOX [Blu-ray] 岡田准一  榮倉奈々   田中圭   福士蒼汰   松坂桃李 「昭和」から「正化」へと歴史を進めた近未来の日本。 いまや国家による思想検閲や、メディア規制が横行する社会となっていた。 そんな中、検閲に対抗し「本を読む自由」を守っている“図書隊"に所属する笠原郁(榮倉奈々)は、検閲で取り上げられ...... [続きを読む]

受信: 2017年3月20日 (月) 08時09分

« 「アンフェア the end」 裏切られても・・・ | トップページ | 「マイ・インターン」 理想の会社 »