「仮面ライダードライブ」 王道ヒーローではあるが、仮面ライダーとしては
本作が発表されたときに注目されたのは、ドライブは仮面ライダーでありながらバイクに乗るのではなく、自動車(トライドロン)に乗るということでした。
自動車に乗る仮面ライダーというのはBlack RXという事例がありますが、メインのマシンはあくまでバイクでした。
ありそうでなかった「自動車に乗るライダー」という設定については最後の最後まで貫き通しましたね。
シリーズが続いていくとカタのようなものができてしまいますが、「仮面ライダー=バイクに乗る」というカタを潔く崩すという点に、「仮面ライダー」というシリーズの懐の深さを感じます。
しかし「自動車に乗る仮面ライダー」という設定以外は「仮面ライダードライブ」は意外とストレートなヒーローものであったかと思いました。
平成仮面ライダーというと、主人公がちょっとひねくれていたり、迷ったりというように、キャラクターにクセがある印象が強いですが、本作の主人公泊進ノ介は職業が警察官であることもあってか、人々の命を守る、正義を守るということを、まっすぐに追いかけていたように感じます。
泊進ノ介のキャラクターには、(昭和の頃の)王道の刑事ドラマに登場する熱血な刑事のイメージが感じられますね。
「ドライブ」の前半は「事件篇」、「解決篇」の二本立てで見やすい構成をとっていましたが、こちらも王道の刑事もののフォーマットに寄っていたということでしょう。
ドライブのデザインも車をモチーフにしながらも、仮面ライダーの記号性を持った王道なデザインであったように思います。
昨年の「鎧武」は設定的(フルーツで錠前で武者)にもストーリー的(全編を大河ドラマなストーリーで貫いた)にもチャレンジをしました。
その結果が(局的にスポンサー的に)良かったのか、悪かったのかは知りませんが、斬新であったのは間違いありません。
「鎧武」の終盤は一話見逃すと話がわからなくなるような展開だったので、自分も結構夢中になってみていました。
その強さに比べると「ドライブ」の前半戦はかなりもの足りない印象がありました。
メインライターは僕が大好きな「W」でも同じポジションを務めた三条陸さんだったので、期待感もありました。
「事件篇」、「解決篇」という構成は「W」でも同じだったので、決して弱い構成ということではないのでしょうけれど、それほどまでに「鎧武」のインパクトが強かったということでしょうか。
見やすさとインパクトのバランスはなかなか難しいですね。
しかし、後半で進ノ介の父親の殉職の謎、ロイミュードの秘密等が明らかになっていく展開は物語的に引きがあったように思います。
この辺のラスト数話の怒涛の展開 は「W」でも感じましたが、さすが三条さんという印象になりますね。
終盤はそのように面白く見えたとはいえ、「仮面ライダー」シリーズとしてのエッセンスが足りないというところに、もの足りなさを感じたようにも思います。
「仮面ライダー」が「仮面ライダー」らしいと思われる点はいくつもありますが、ひとつは主人公が異形のもの(どちらかと言えば敵に近い)でありながらも、人間のために戦うということがあるかと思います。
完全に人間に受け入れられないかもしれないのに、それでも人のために戦う。
「仮面ライダー」の物語には「哀しさ」が感じられます。
記念すべき第一作「仮面ライダー」にもその「哀しさ」はありました。
平成のシリーズになっても、「555」や昨年の「鎧武」にもその「哀しさ」はありました。
けれど「ドライブ」にはそのような自分のアイデンティティに関わる「哀しさ」は感じられません。
その点において「仮面ライダー」らしさは薄いかなと思っています。
作品全体がなんとなく明るい感じがするのは、「哀しさ」がないからかもしれません。
これはあくまで「仮面ライダー」としてであって、王道のヒーローものとしては手堅い良い作品になっていると思います。
ここまで書いてきてふと思ったのは、「ドライブ」において「哀しさ」を背負っていたのはチェイスかもしれないですね。
そもそも人間ではなく、敵と同じくロイミュード。
もともと人間のためにプロトドライブとして戦い、そして魔進チェイサーとなりロイミュードに味方し、そしてまた仮面ライダーチェイサーとして人類を守るために立ち上がる。
チェイスの立ち姿に感じるもの悲しさは、まさに「仮面ライダー」の背負っている哀しさかもしれません。
新作の「仮面ライダーゴースト」はライダー自身の存在が幽霊(?)のようなものなので、まさに異形の存在ですよね。
「仮面ライダー」らしいという視点では、今回の新作には期待しています。
「太陽にほえろ!」「西部警察」等往年の刑事ドラマで、「殉職」というのはひとつのイベントになっていました。
松田優作さんの「なんじゃこりゃ~」は有名ですよね。
「ドライブ」は刑事ものをモチーフにしていますから、「殉職」というイベントでオマージュをささげたかったのでしょう、本作でも主人公泊進ノ介は「殉職」します。
そもそも「殉職」というのは公務に命をささげる行為ですから、「仮面ライダー」という存在がオフィシャルになっていないといけません。
「人知れず戦うヒーロー」では「殉職」は成立しません。
「殉職」の数話前から、「ドライブ」では「仮面ライダー」の存在が公になるというエピソードが組み立てられてきました。
途中でその存在がオフィシャルになるのは珍しいなと思っていたのですが(「ウルトラマンメビウス」等の例はありますが)、これも「殉職」をやりたかったのだろうなということで妙に納得してしました(ラストに向かっての警察の力も合わせた総力戦ということでも、オフィシャルになることは必要だったのかもしれませんけれども)。
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