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2015年8月 7日 (金)

「インサイド・ヘッド」 ピクサーのチャレンジ

ヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミ、人の感情をそれぞれ一人のキャラクターとしてアニメーション化するという試みに、予告を観たときは驚きました。
これはかなり難易度が高いのではないかと。
今までもピクサーは、意外な「モノ」を主役にしてきました。
おもちゃ、魚、車、ネズミ・・・、これらもなかなか難しそうな題材ですが、それでもピクサーはしっかりと感情移入できるキャラクターとして仕上げる実績はあります。
しかし、そうは言っても「感情」という極めて抽象度の高いものが、今回は題材になっていますから、困難さは予想されます。
とはいえふたを開けてみれば、さすがピクサーで、「感情」たちキャラクターがいきいきと動き、また彼らが宿る少女ライリーの思春期の心情も丁寧に描くという離れ業をやってのけています。
このあたりはさすがです。
常に新しいものにチャレンジしていこうというピクサーの姿勢がうかがえます。
この作品は人間の頭や心の仕組み(認知や記憶など)を、ただの解説としてではなく、豊かなイメージ溢れる世界として描いているのもチャレンジングであったと思います。
頭や心の仕組みを科学的にも正しい情報をベースににしながらも、誰にでもわかるような形でユニークな世界観に仕立てていました。
人間の心の中ではいくつかの感情が、その時の状況で常に競合しているということ。
幼い時の強い体験が、その人の人格形成に大きく影響を与えるということ。
短期記憶は失われ、長期記憶は別のところ(海馬)に蓄えられるということ。
イマジナリー・フレンドのこと。
こういった脳の構造や心理学、認知学に基づいている知識が、楽しく描かれていました。
とても子供が見るアニメーションとはそぐわない内容であるのですけれどね、ストーリーや世界観の作り方がほんとにうまいです。
映画に登場する感情のキャラクターたちは、それぞれに役割があり、その究極の目的はライリーが健康的で幸せな生活を送れるようにすることです。
イカリやムカムカ、ビビリはライリーを守ることが主な任務ですよね。
イカリは自身に対する脅威に対する対抗的な感情。
ムカムカは不愉快さを表す感情で、これは周辺の環境が自分にとってよろしくないということに気付くための感情です。
ビビリはまさにそのままで、危険を察知し、その状況を避けようとする感情ですね。
対してヨロコビは、前向きにポジティブに成長していこうというエネルギーを生み出す感情になります。
この物語を引っ張っていくのもこのヨロコビで、この作品の主人公であると言っていいでしょう。
一方、本作の陰の主役と言えるのが、カナシミです。
他の感情たちと異なり、ライリーが生きていくために必要な感情であるか、他の感情たちも、本人(?)も思えていない。
なぜ彼女=カナシミがライリーの中にいるのかが、物語の一つの謎になります。
結果を言ってしまうと、カナシミとヨロコビはまさに表裏一体の関係なのですね。
悲しいと感じる感情があるからこそ、嬉しいと思う気持ちが強くなる。
悲しいと感じ、嬉しいと感じる。
正反対の感情だけれど、その両方を持っているからこそ、豊かな感情をもった性格になれるのでしょう。
豊かな感情を持つということは、より強く生きていることの素晴らしさを感じられるということなので、人としても幸せな生活を送っていけるということなのですよね。
なかなかとっつきにくいテーマであるので、いつものピクサーとは違うと思った方もいるかもしれませんが、個人的にはとても共感できる内容でありました。

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コメント

ここなつさん、こんにちは!

人間にとって悲しいという感情はより喜びを感じるためのものなのですかね。
どちらか一方だけでもダメなんでしょうね。
だからこそこの二人は一緒に冒険をしたのでしょう。

投稿: はらやん | 2015年8月15日 (土) 07時26分

こんにちは。

>結果を言ってしまうと、カナシミとヨロコビはまさに表裏一体の関係なのですね。
悲しいと感じる感情があるからこそ、嬉しいと思う気持ちが強くなる。
悲しいと感じ、嬉しいと感じる。

そうなんですよね。そこの所がこの作品では上手く訴えられていたと思いました。
「ヨロコビ」がバックグラウンドである哀しみの記憶を、都合よく忘れていたシーンがそこを一層強調していたと思います。

投稿: ここなつ | 2015年8月13日 (木) 13時25分

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