「青天の霹靂」 生かされていることを知る
<ネタバレしているのでご注意ください>
主人公、晴夫は売れないマジシャン。
彼は20年も場末のマジックバーで働いていますが、後輩にも追い抜かれてバカにされ、みじめさを感じながら日々悶々と生きていました。
彼は生まれてすぐに母親に捨てられ、いい加減な父親に育てられましたが、高校を卒業してすぐに家を飛び出し、それからずっと一人で暮らし。
彼は自分のみじめな人生は、自分を捨てた母、どうしようもない父のせいだと思っていました。
そんなとき、彼に警察から連絡が入り、ホームレスであった父親が亡くなったとの知らせを受けたのです。
父親のお骨を抱きながら、彼のダンボールハウスを訪れたとき、晴夫が見つけたのは若き父が赤ん坊だった自分を抱いている写真でした。
自分のことなど気にしていないと思っていた父親の思いに触れた、晴夫の心には自分でもよく整理ができない「後悔」のような思いがわき上がったのでしょう。
そんなとき。
彼を青天の霹靂が直撃します。
目が覚めたとき、晴夫はなんと昭和48年にタイムスリップしていました。
それは晴夫が生まれた年。
そして晴夫は若き父と母と出会います。
タイムスリップものにはいくつも名作があります。
主人公が若き父と母に会うというプロットで有名な作品は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。
父と母が結婚しなかったら、自分は生まれない!ということで、二人をくっつけようとする主人公マーティの奮闘ぶりがおもしろい作品ですよね。
タイムスリップものの物語がハラハラドキドキするのは「過去を変えたら未来も変わる」という設定が大きな役割を担っている気がします。
しかし、本作では晴夫が過去で何をしようとも(というより晴夫は未来に戻る気はさらさらなかった)、未来は変わりませんでした。
晴夫が物心ついても母親はおらず、父親はラブホテルの従業員でありその後は落ちぶれてホームレスになるということもそのまま。
晴夫が未来に戻っても彼のみじめな生活は変わらない。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマーティのようにバラ色の生活が待っていたわけではありません。
けれども、変わったことがひとつだけあります。
それは晴夫の自分の生についての考え方。
彼はずっと自分を捨てた母、どうしようもない父へ軽蔑のような気持ちを抱いていました。
自分を望んでいない両親から生まれたから、自分は生きる意味がない。
だからみじめな人生を歩いているのだと。
けれど過去へのタイムスリップで彼は知りました。
命をかけて、自分のことを生んでくれた愛情深い母親のこと。
その母親を不器用ながらも愛していた父親のこと。
自分の生は決して望まれないものではなかった。
むしろ、自分の命をかけて、愛するもの存在をかけて、両親が望んだ生であったと知りました。
晴夫が未来に戻っても、その生活は変わっていません。
しかし彼の人生に対する向き合い方は変わりました。
自分が生かされていると知った晴夫は、きっと自分の力でこの先の未来を変えていくのだと思います。

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» 映画・青天の霹靂 [読書と映画とガーデニング]
2014年 日本
劇団ひとり、初監督作品
売れないマジシャン・轟晴夫(大泉洋)生れて直ぐ父・正太郎(劇団ひとり)の女性問題で母・悦子(柴咲コウ)は家を出てしまう正太郎に育てられたが、高校を卒業後、家を出てからは絶縁状態になっている
もう20年も薄汚れた...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 10時17分
» 『青天の霹靂』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「青天の霹靂」□監督・脚本 劇団ひとり□キャスト 大泉 洋、柴咲コウ、劇団ひとり、笹野高史、風間杜夫■鑑賞日 5月25日(日)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> タイムスリップ...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 16時28分
» 青天の霹靂/大泉洋 [カノンな日々]
ちょっとテレビで宣伝し過ぎな感もありますが、大泉洋さんも劇団ひとりさんも面白いのでついつい観てしまうんですよね。さらに柴咲コウさんも加わった先日の「ボクらの時代」のト ... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 17時43分
» 青天の霹靂 [勝手に映画評]
劇団ひとり、原作・脚本・監督・出演の作品。一人いったい何役なんだ(笑)。
「笑いと、たぶん一粒の涙の物語」がキャッチコピーのこの作品。涙は一粒じゃないですよ。いや、実際には泣きませんでしたが、少なくとも2回泣きそうになってしまいました。ちょっと冗長だと思...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 17時58分
» 青天の霹靂 [映画的・絵画的・音楽的]
『青天の霹靂』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。
(1)予告編で見て面白そうだと思って映画館に行ってきました。
本作の冒頭では、主人公の晴夫(大泉洋)が、「いつからかな、自分を“特別”だって思わなくなったのは」、「昔は、周りの奴らは“普通”の人生しか歩めない...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 20時43分
» 青天の霹靂 : 父と母の愛情に涙 ジーン...(≧ω≦。) [こんな映画観たよ!-あらすじと感想-]
今日の広島は、少し肌寒い天気でした。まあ、私には丁度良い感じなのですが。ちなみに、本日紹介する作品はこちらになります。
【題名】
青天の霹靂
【製作年】
2014年
【 [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 21時05分
» 映画『青天の霹靂』★生きる理由〜生まれてきて良かった☆ [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/162997/
↑ あらすじ・配役はこちらを参照ください。
映画レビューしました。(ネタバレ表示ですが結末はボカしています)
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id347865/rid48/p1/s0/c1/
&nbs..... [続きを読む]
受信: 2014年7月 6日 (日) 23時56分
» 『青天の霹靂』 (2014) / 日本 [Nice One!! @goo]
原作・脚本・監督: 劇団ひとり
出演: 大泉洋 、柴咲コウ 、劇団ひとり 、笹野高史 、風間杜夫
試写会場: 東宝本社試写室
公式サイトはこちら。
39歳の売れないマジシャンの晴夫は、母に捨てられ、父とは絶縁状態。ある日、父の訃報を聞いて絶望した晴夫は...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 7日 (月) 07時20分
» ありがとう/ビートたけしに観て欲しい映画~『青天の霹靂』 [真紅のthinkingdays]
場末のマジックバーで失意の日々を過ごす晴夫(大泉洋)は、ホームレスとなっ
ていた父の死を知る。警察で遺骨を引き取った彼は、父のテントのあった河原で
雷に打たれ、40年前の浅草にタイムスリップする。そこには、若き日の父・正太
郎(劇団ひとり)と、身重の母・悦子(柴咲コウ)がいた。
映画は監督のものだと思っているし、劇場予告を観ていた限りでは全く惹かれ
なかったこの作品。し...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 7日 (月) 13時24分
» 劇場鑑賞「青天の霹靂」 [日々“是”精進! ver.F]
母と父の愛を知る…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201405240001/
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受信: 2014年7月 7日 (月) 19時37分
» 青天の霹靂 [そーれりぽーと]
芸人が監督した映画にはいつもあんまり気が乗らないのだけど、予告編を見る限りは面白そうだったので『青天の霹靂』を観てきました。
★★
演出は荒削りだけど、初監督作にしてはスピード感のあるカメラワークや、派手なエフェクト、金のかかった1973年を再現したセッ...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 8日 (火) 00時08分
» 青天の霹靂 ★★★★.5 [パピとママ映画のblog]
作家や俳優としても活躍する人気お笑い芸人の劇団ひとりが書き下ろした小説を、自らメガホンを取って実写化したヒューマンドラマ。40年前にタイムスリップした売れないマジシャンが、同じマジシャンであった若き日の父とコンビを組み、自身の出生をはじめとする家族の秘密...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 8日 (火) 10時58分
» 青天の霹靂 [miaのmovie★DIARY]
青天の霹靂(2010/08/27)劇団ひとり商品詳細を見る
【seiten no hekireki】
制作国:日本 制作年:2014年
「普通の日常」を手に入れることすら難しいと思い始めていた売れない
マジシャン晴夫。母には捨てられ父とは絶縁状態だったが突然、その父の訃報を聞く。
生きることの難しさを痛感していたところ雷に打たれ昭和40年代にタイムスリップする。
そこで、若...... [続きを読む]
受信: 2014年7月 9日 (水) 20時50分
» 青天の霹靂 [象のロケット]
39歳の売れないマジシャン晴夫は、生まれて間もなく母親に捨てられ、父親とも十数年間ずっと絶縁状態だった。 ある日、ホームレス状態だった父親が死んだという連絡が入る。 父の“家”を訪れた晴夫は、そのまま40年前の浅草にタイムスリップしてしまう。 そこには若き日のマジシャンだった父・正太郎と、その助手の母・悦子がいた! 晴夫は正太郎とコンビを組むことになったのだが…。 人情コメディ。... [続きを読む]
受信: 2014年7月10日 (木) 01時39分
» 青天の霹靂 [はるみのひとり言]
試写会で観ました。続けざまに試写会で上映されてるから、てっきり空いてるかな?と思ってたら、会場は満席で吃驚でした。ひとりさんの初監督作品で期待されてるのかな。売れないマジシャン轟晴夫が、40年前の浅草にタイムスリップして若き日の両親に出会い、出生の秘密...... [続きを読む]
受信: 2014年7月25日 (金) 23時47分
» 晴天の霹靂 [タケヤと愉快な仲間達]
監督: 劇団ひとり 出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり、笹野高史、風間杜夫
【解説】
作家や俳優としても活躍する人気お笑い芸人の劇団ひとりが書き下ろした小説を、自らメガホンを取って実写化したヒューマンドラマ。40年前にタイムスリップした売れないマジシャンが...... [続きを読む]
受信: 2014年7月26日 (土) 18時34分
» 青天の霹靂 [映画と本の『たんぽぽ館』]
なんで俺なんか生きてんだよ!
* * * * * * * * * *
劇団ひとりによる描きおろし小説を元に、
本人が監督と出演もしているという話題作。
売れないマジシャン轟晴夫(大泉洋)が40年前の浅草にタイムスリップ。
そこで、若き日の父母と出会いま...... [続きを読む]
受信: 2014年8月14日 (木) 19時59分
» 「晴天の霹靂」☆たぶん1粒以上の涙 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
劇団ひとりが原作の「陰日向に咲く」は、悪くは無いけどそれほど印象にも残っていなかった。
そんなこともあって、『ちょっと文才があるからって本を書いたり、資金力を生かして映画を簡単に作ろうとする芸人の映画』と舐めてかかっていた。
すみません。私が間違っておりました。
これ、すんご~~~くいい!!!... [続きを読む]
受信: 2014年10月24日 (金) 00時56分
» 青天の霹靂 [マープルのつぶやき]
JUGEMテーマ:邦画
「青天の霹靂」
監督:劇団ひとり
2014年 日本映画 96分
キャスト:大泉 洋
柴咲コウ
劇団ひとり
笹野高史
風間杜夫
39歳の売れないマジシャン、轟晴夫。彼の元へ
突然、絶縁していた父親の死の報せが届く。骨壺
を抱えた晴夫が、線路脇で慟哭した時、突然閃光
が起き、彼は40年前にタイムスリップしてしまう
のだった。
<お勧め星>☆☆☆ 予告編でほぼストーリーが
わかるので、ラストの... [続きを読む]
受信: 2015年1月18日 (日) 11時39分
» 青天の霹靂 [のほほん便り]
劇団ひとり、初小説がヒットし、のちに映画化された「陰日向に咲く」も味わい深かったですが、自らの同名小説を、初監督したという、この作品も、なかなかの佳作でした。ますます、大いになる才能を実感。なるほど、その名の通り、周囲を巻き込むほどの、劇団ひとり、さんですね。主人公を演じた、大泉洋、立派にマジシャンでした。その手腕に、精進の成果を披露。人によっては、劇団ひとりが演じない方が… という声もあったですが、彼の好演もヨカッタです。主人公の母となる女性を、柴咲コウが、美しく感動的に表現。こんな、お母さんがい... [続きを読む]
受信: 2015年4月14日 (火) 14時33分
» 14-386「青天の霹靂」(日本) [CINECHANが観た映画について]
同じカードは存在しない
金もなく、恋人もいない売れないマジシャンの晴夫。母親には生まれてすぐに捨てられ、父親ともいまや絶縁状態で、自らの惨めな人生を恨む日々。
そんなある日、行方も分からなかった父の訃報が飛び込んでくる。父は荒川の河川敷でホームレスになっていたらしい。やりきれない気持ちに苛まれた晴夫だったが、そんな彼を突然の雷が直撃する。
次の瞬間、意識を取り戻した彼は、なんと40年前の浅草にタイムスリップしていた。途方に暮れ街を彷徨う晴夫は、やがて演芸ホールでマジックを披露す...... [続きを読む]
受信: 2015年4月19日 (日) 00時34分
コメント
ミス・マープルさん、こんばんは!
昭和48年の頃は僕もうっすらと記憶がある時代なので、懐かしい感じがしましたね。
ストレートな親子の物語でじんときました。
投稿: はらやん | 2015年1月18日 (日) 21時38分
ストーリーは予告編で大体わかってしまいましたが、ラストのひねりがよかったですね。
昭和48年の出来事が上手い具合に描かれていて懐かしかったです。見終わってほんのり心が温まる感じがしました。
投稿: ミス・マープル | 2015年1月18日 (日) 11時38分