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2014年6月17日 (火)

「キカイダーREBOOT」 秀逸なデザイン

タイミングが合わずに観賞を後回しにしていたらそろそろ終わりそうなので、慌てて観にいってきました。
「キカイダー」といったらなんともいっても、石ノ森章太郎さんによる左右非対称の特徴的なデザインですよね。
石ノ森章太郎さんのデザインってヒーローはもちろん敵方の怪人なども非常にコンセプチュアルであると思うのですが、その中でもキカイダーのデザインは秀逸です。
右半身が正義をイメージした青、左半身が悪をイメージした赤であり、「良心回路」を持つことにより、善と悪の間を揺れ動くキカイダー=ジローというキャラクターを一目でわかるように表現しています。
人間でもなく、またアンドロイドとしても完全ではないということを透明パーツの中に機械が見えるということで表していることも優れたアイデアですよね。
本作でキカイダーのデザインのリファインを担当したのが、漫画家で「仮面ライダーSPIRITS」等の代表作を持ち、特撮への造詣が深い村枝賢一さんです。
今回の村枝さんのデザインも、オリジナルのコンセプトをさらに押し進めた感じで良かったです。
右半身は青=正義、左半身は赤=悪という考えを踏襲しているようですが、僕はさらにコンセプトが深くなっている気がしました。
右半身の造形はオリジナルに比べより人のシルエットに近くなっていると思います。
造形技術の進化という点もあるでしょうけれど、これは右半身=正義というより、右半身=理性であり、人間らしさを象徴していると感じました。
「良心回路」が右側についているのも人間らしさを象徴するものだからこそ。
それに対して左半身は、大型の爪をつけた手、怒り肩など、以前よりはメカニカルさというよりは、獣のような印象が強くなっています。
もちろん顔であったり、部分部分にはメカニカルさは残っています。
これは左半身は人間らしさが欠如した状態を象徴しているものでしょう。
この人間らしさが欠如した状態を、獣的なもの(爪や怒り肩)と機械的なもの(メカ造形)という、一見対局にあるものを統合してデザインしたアイデアがいいなと思いました。
また気が利いているアイデアだと思ったのが頭部のデザインです。
キカイダーの顔には左側の目の下から頬のあたりにかけてメタリックなラインが入っています。
これはオリジナルでもあるものですが、今回の村枝デザインではラインの上に、鋲のようなドットが入っているんですよね。
これはメカニカル感を出すものであるかもしれないのですが、これが涙にも見えるんですよね。
キカイダーがハカイダーとの決戦に勝つために自ら「良心回路」を切ります。
そのため破壊衝動にかられミツコにも襲いかかるのですが、そのときのキカイダーのアップを映されます。
そのときキカイダーが泣いているように見えるんです。
アンドロイドであるキカイダーの表情は変わらないのに、なぜか泣いて見える。
それは意図されたデザインなのかはわからないですが、そういうカットを狙った監督には意識はあったでしょうね。
ここはぞくっときました。
完全に機械であるキカイダーが、そのような人間らしさを持つようになっているのに対し、人間の脳を持つハカイダーのほうがより凶悪であるというのは、また人間の負の面を表しています。
獣は必要以上の殺戮は行わない。
機械は命じられた以上の殺戮は行わない。
人間は殺戮をさらにさらにと繰り返していく。
理性がないから獣や機械は暴走する。
だから「良心回路」によってその暴走を抑制するというのがキカイダーというアンドロイドの思想。
しかし人間の脳を持ち、より「人間的」であるはずのハカイダーの方が暴走してしまうというのは、人間への皮肉でもありますよね。
とキカイダーのデザインからはじまり、この作品に込められたものを書いてきましたが。
単純にエンターテイメント映画としてみると、あまり出来がいい感じはしなかったですね。
感情移入がもう少しできたら良かったんですけれど、割と全体的にクールで淡々としていた感じがしました。
もう少しオリジナルは情感があったようなイメージがありました(観たのはうん十年も前ですが)。
監督は下山天さんで特撮畑の方ではないのですが、特撮的なケレン味がもうちょいあってもよかった。

なんとなく続きそうな感じもありますよね?
次はビジンダーが登場するかな。
本作にマリが登場してたからビジンダーにチェンジするかと期待しちゃいました。

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