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2014年6月25日 (水)

「ノア 約束の舟」 まさに狂信的な

「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキーの新作が「ノアの方舟伝説」を題材にすると聞いた時、意外な気がしました。
劇場でかかっていた特報や予告編を観ていても、スペクタクル大作のようなテイストに見えたので、アロノフスキーっぽくないなと。
でも本作を観ていると、今までの彼の作品にも通じる「らしさ」がしっかりと出ていてように感じました。
もちろん、大作らしいスペクタクル場面は見応えありますが、アロノフスキー作品としての「らしさ」は別のところにあるように思えます。
「ノアの方舟伝説」は多くの人に馴染みのある旧約聖書の創世記にあるエピソードです。
アダムとイブが善悪の知識の実を食べて楽園を追放された後、人間は地上に殖えていきました。
しかし、人は堕落し悪がはびこることなりました。
それを見た神は、大洪水で人々を滅ぼそうとしますが、「ヤハウェに従う無垢な人」であるノアとその家族は生き延びさせようと方舟の建設を命じました。
本作はこの「方舟伝説」を大スペクタクル映画として映像化しているわけですが、アロノフスキーらしさが出ているのは主人公ノアの人物の描き方だと思います。
僕の今までのノアのイメージとは、「善良」「無垢」といったものでした。
人々が悪徳に染まる中、ノアは善良であり、無垢であるから(簡単な言葉でいうと心がきれいだから)こそ神によって救われたと、思っていました。
しかし本作で描かれるノアは、ただ単に善良であり無垢である人物ではありません。
彼は神のお告げを信じ、そのためはそれこそ何でもやります。
そのためには人も殺します。
この人物には単純な善良さはありません。
僕はノアに今までのアロノフスキー作品「レスラー」「ブラック・スワン」の主人公に共通するものを感じました。
ノアの行動は「狂信的」と言ってもいいかもしれません。
神のお告げのためであれば、息子が好感を持った女性も見殺しにし、自分の孫ですら手にかけようとする。
狂っている、と言われても仕方がないほどです。
しかし、「レスラー」にしても「ブラック・スワン」にしても主人公は「狂っている」と思えるほどに自分が信じ、賭けたいものがあったのですよね(それぞれレスリングであり、バレエ)。
「レスラー」の主人公ランディはレスリングに己の命すら賭けます。
「ブラック・スワン」の主人公ニナはバレエに自分の精神を賭けていると言っていいでしょう。
自分自身をかけるほどに入れ込む彼らの姿は、関係ない者から見れば「常軌を逸している」、「狂っている」ているように見えます。
神をただ信じるノアも「狂っている」かのよう。
彼が信じる神のためであれば、己の生命はもちろん、自分の家族の命ですら捧げようとする。
上でノアを「ヤハウェに従う無垢な人」と書きましたが、「無垢にヤハウェに従う人」のほうがこの作品のノアに合っているかもしれません。
自らを破滅に導くにも関わらず「狂おしく」何かに入れ込むことができる人を描くことに、アロノフスキーは惹かれるのでしょうか。
ラストは割とヒューマンな終わり方だったところがちょっとアロノフスキーっぽくない気がしましたが、作品を仕上げるにあたり映画会社ともめたという話も聞きますので、このあたりのことかな?

「ブラック・スワン」の記事はこちら→
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コメント

ここなつさん、こんばんは!

>コメント欄への書き込みが遅くなってしまいました。申し訳ありません。
いえいえ、お気になさらずに・・・。
お時間あるときにこちらのブログ、覗きに来てください。
今年もよろしくお願いします。

投稿: はらやん | 2015年1月27日 (火) 20時24分

はらやん様
こんばんは。ここなつです。
年明けから仕事が立て込んでしまい、せっかく当ブログにご訪問&コメントを下さったのに、当ブログのコメント欄への書き込みが遅くなってしまいました。申し訳ありません。
ということで、今年はまだほとんど映画を観ていないのですが、今後ともよろしくお願いします。

投稿: ここなつ | 2015年1月24日 (土) 20時47分

ここなつさん、こんにちは!

おっしゃる通りですね。
アロノフスキーは人が何かに取り憑かれてしまう様子を描くのがとてもうまい。
本人にもどうしようもない執着心に振り回される様子が狂気に見えるのでしょうね。
コメント、TBは古い記事でも歓迎です。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: はらやん | 2015年1月12日 (月) 09時07分

こんにちは。
この監督は、狂気を描くのがとても上手だと思います。
そして、ご自身は…どこへ行ってしまうのだろう?と思っていた「ファウンテン 永遠につづく愛」から、見事に(笑)こっちの世界に返って来てくれた人だと思います。
最近では大作が続いていますよね。
だいぶ前の作品を今になってupしたもので、遅くにTBさせていただく失礼、ご了承ください。

投稿: ここなつ | 2015年1月 6日 (火) 13時15分

sakuraiさん、こんばんは!

僕はこの作品は何かを信じた者の、狂気にも似た思いだと感じました。
アロノフスキーの作品に共通するテーマかなと。
ただそのあたりが出て来たのが洪水以降だったので、sakuraiさんのおっしゃるちぐはぐ感もわかります。
スタジオといろいろとあったという話も聞きますので、その辺が作品に現れちゃっているのかもしれないですね。

投稿: はらやん | 2014年8月10日 (日) 17時55分

描きたい!気持ちはわかるんですが、いろいろとちぐはぐ感を感じて、どうもすとんと落ちませんでした。
普通に描いてもらった方が・・。

投稿: sakurai | 2014年8月 9日 (土) 09時24分

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