「超高速!参勤交代」 安心して観れる王道の時代劇コメディ
タイトルだけ観るとちょっとキワモノっぽい感じもしますが、観る人を選ばない王道の時代劇であり、王道のコメディに仕上がっていると思います。
そういう点では王道の松竹映画とも言えますね。
時代劇の王道と言えば、欲に溺れた権力者が弱き者をないがしろにしますが、最後には成敗されるという勧善懲悪の世界ですよね。
実際の世の中はもっと理不尽だったりしますので、映画を見ている間くらいは悪者が懲らしめられるのを観て溜飲を下げたいっていうのが庶民の心情ってものです。
まさに時代劇ってのはそういう心情が現れたもの。
本作もまさにそういった時代劇の伝統の構造です。
磐城国の弱小藩である湯長谷藩は、参勤交代を終えて国元に帰ったばかりにも関わらず、もう一度江戸へ参勤交代するように命じられます。
それも4日間で!
これは湯長谷の金山を狙う幕府の老中・松平信祝の差し金。
無理難題をふっかけて湯長谷藩をお取り潰しにして、金山の金を狙うという腹づもりです。
湯長谷藩の殿様、内藤政醇は家臣たちと共に「超高速」での無謀な参勤交代に挑みます。
冒頭に書いたように本作は王道の時代劇。
ですので松平信祝は最後は懲らしめられるわけで予想通りですが、こういった時代劇は予想通りいってくれることにカタルシスがあるわけですね。
最近の時代劇は凝った作品も多いので、こういうシンプルな時代劇はほっとするところがあります。
コメディ的な面で観ても王道中の王道、旅をしながら様々なトラブルに出会うという「珍道中」タイプのお話です。
家老役の西村雅彦さんがいい感じです。
西村さんは真面目な役もやりますが、「古畑任三郎」の今泉ような、こういうコメディでの役回りが合いますね。
本作で特に良かったのは佐々木蔵之介さん演じる小藩のお殿様内藤政醇ですね。
普段は民を想うお人好しのお殿様なのですが、いざとなったら剣を振るって襲いくる者たちを斬って捨てる。
普段は凡庸な感じなのにいざ刀を持つと強い、というのはこれも時代劇の王道タイプのキャラクター(「暴れん坊将軍」の吉宗とか、「必殺!仕事人」の中村主水とか)。
普段は冴えないのに、いざとなったらしっかりと頼りになるという人物像ってのも庶民の願望なのでしょうか。
それにしてもい居合い抜きの構えをしている佐々木蔵之介さんはカッコいい!
「やまびこの術」をやっているときのとぼけた感じとの落差がよいです。
佐々木さんはシリアスな役もコメディタッチの役も演じられる幅の広い役者さんなので、この役はピッタリですね。
書いてきたように本作は王道中の王道の時代劇なのですが、今はあまりそういう作品もないので、安心して誰でも観れる作品だと思います。
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