「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 ミステリーとしての振りは魅力的
イラストレーター石神武人はある日、自宅に帰ったとき、そこに自分の妻の死体を発見する。
それ以降、石神の記憶は混乱していく。
まさに自分の知らない自分がいるかのように。
<ネタバレしてますので注意です>
予告でも触れているのでこれはいいかと思いますが、石神の正体はオ・ジヌという韓国人の天才科学者。
しかしオ・ジヌの記憶は石神という別の人物の記憶に上書きをされてしまい、ジヌは石神として1年間生きてきたのです。
記憶が上書きされてしまったのは、ジヌが行っていたアルツハイマー症候群の治療のための遺伝子研究の際の事故によるものでした。
石神となったジヌにはその記憶はありませんが、その研究の秘密を巡り、謎の男たちが石神を追います。
石神を追う男たちの首謀者が「この研究は不老不死に繋がる」といったことを言いますが、これはなるほどなと思いました。
古来より不老不死というと、いかに肉体を老いから逃れさせるかということでしたが、、精神(記憶)が肉体を乗り換えることができるのであれば、それも不老不死だなと。
コンピューターのバックアップをとっておいて、新しいハードにそれをコピーする、といった感じでしょうか。
そうやって肉体を乗り換えれれば確かに不老不死とも言えます。
それを実現したいと考える人がいてもおかしくはありませんね。
ミステリーとして本作を観てみますと、最初の事件の振りとしては魅力的でした。
自分の目の前に妻の死体がある。
そのときその妻、本人からの電話を石神は受ける。
電話をしてきたのは本当に妻なのか、それとも目の前の死体は妻ではないのか。
普通の人間が主人公であればこれはミステリーにも何にもなりはしません。
目の前の死体が妻であるかどうかということに確信がもてない人間はいないと思いますから。
しかし主人公がその確信を持ちきれない(記憶が錯綜するため)ということが、なかなかおもしろかったです。
ただ後半で謎が明らかになっていくところは、ちょっとご都合主義的なところがあって収束させていったところがあったような感じはしましたね。
<ここから先はほんとにネタバレしてますので注意です>
ちょっとずるいなと思ったのがひとつ。
石神が発見した死体の妻は、オ・ジヌの妻であるユリ(中村ゆりさん)でした。
そして石神の妻は美由紀(真木よう子さん)です。
記憶の混乱がすでに始まっていた石神は本当の妻であるユリの死体を見て「美由紀!」と呼んで駆け寄ります。
石神の記憶の中では「妻=美由紀」という関係性になっていからですね。
その直後、石神は電話をとりますが、その相手は美由紀本人でした。
しかし目の前の死体の妻=ユリ、電話の相手の妻=美由紀という記憶が錯綜し、石神=オ・ジヌにとっては「死体の妻から電話があった」という風に受け取ったのでしょう。
ただずるいところは観客の我々が聞いている電話の相手の声が真木よう子さんとは聞こえにくいのですよね(声質を処理しているような・・・)。
記憶が混乱している石神にとっては美由紀の声でもユリの声に聞こえてしまったというのはわかるのですけれど。
小説で、この部分が一人称で描かれていればそれほどずるくはないのですが、映像だとそれは客観的なものになってしまうのでここだけ一人称というのはちょっとずるい(映画で一人称もありますが、この部分だけってのがちょっとね)。
真木よう子さんの声はかなり特徴的なので、そのまま出すと目の前の死体とは別人だということが一発でわかってしまうので、ミステリーにもなんにもならないのですけれどね・・・。
原作の小説がどんな風に描いているのか、ちょっと読みたくなりました。

| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 ミステリーとしての振りは魅力的:
» 映画『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』★ 西島さんの魅力全開でヨイショ(*^_^*) [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/163577/
↑ あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
西島秀俊 さんの“生アクション付き”のサスペンス☆☆!!!ということで、
とても、楽しみにしていました☆
原作とも違うということ以外、何も、情報を入れずに観ました。
そのほうが、楽しめると思いますが
あらすじなどでは、少..... [続きを読む]
受信: 2014年1月27日 (月) 21時12分
» 「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」☆巧みな展開 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
はじめから犯人顔だけに犯人が解ったとしても・・・・・その裏に何か企みがあるのがありありと解っていても。
尚、これだけ面白いというのは、やはりサントリーミステリー大賞受賞作品の原作の力強さか。
はたまた鬼気迫る演技が突出している主人公演じる西島秀俊あってこそか。... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 18時08分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 ★★.5 [パピとママ映画のblog]
西島秀俊主演で司城志朗の小説「ゲノムハザード」(小学館文庫刊)を映画化した日韓合作サスペンス。記憶を失った天才科学者の文字通りの“奔走”をノンストップで描いた、スリル満点のエンタテイメントが完成した。
あらすじ:平凡な会社員・石神武人はある日、自宅で妻が...... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 21時03分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [勝手に映画評]
この手の作品は、荒唐無稽な話の場合が多いんですが、これはそうでもありません。ちょっと導入部分が判りにくいですが、一度話に入ってしまえば、中々スリリングな展開にびっくりさせられます。逆に言えば、そこをもう少し丁寧に作って欲しかった気もします。
でも、後か...... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 22時39分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間/西島秀俊 [カノンな日々]
第15回サントリー・ミステリー大賞読者賞に輝いた司城志朗さんの同名小説を西島秀俊さんの主演で『美しき野獣』のキム・ソンス監督が映画化したサスペンス・アクション・ムービー ... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 22時39分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [ダイターンクラッシュ!!]
2014年1月26日(日) 16:30~ TOHOシネマズ川崎7 料金:0円(ポイント利用) パンフレット:未確認 韓国人悪役部隊は何だったのか 『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』公式サイト 原作ありのサスペンス。原作は読んだことがない。 少々入り組んでいる設定だが、辻褄は合っているし、上手く纏めている。 どういう理由か知らないが、韓国との合作になっており、西島の協力者が韓国人の女性記者であり、謎の韓国悪役部隊が西島を追い回す。 しかし、真の黒幕が少々矮小で、韓国悪役部隊は在っ... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 23時15分
» 劇場鑑賞「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 [日々“是”精進! ver.F]
“記憶”の真相は…
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201401240001/
【送料無料】ゲノムハザード [ 司城志朗 ]価格:690円(税込、送料込)
【送料無料】ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト [ NICO Touches the Walls ]価格:2,80...... [続きを読む]
受信: 2014年1月29日 (水) 06時25分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [★yukarinの映画鑑賞ぷらす日記★]
2014/01/24公開 韓国/日本 120分監督:キム・ソンス出演:西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり、パク・トンハ、イ・ギョンヨン、伊武雅刀
彼は記憶を上書きされた。
誰もが僕を騙している――!
[Story]ある日、石神(西島秀俊)は自宅で殺害された...... [続きを読む]
受信: 2014年1月29日 (水) 10時17分
» 『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』('14初鑑賞10・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆-- (10段階評価で 6)
1月25日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター4にて 13:15の回を鑑賞。 [続きを読む]
受信: 2014年1月29日 (水) 20時51分
» ゲノムハザード〜ある天才科学者の5日間〜 [はるみのひとり言]
試写会で観ました。西島さん主演の邦画とばかり思っていました。デザイン会社に勤務する石神武人は、ある日帰宅し自宅リビンングで妻が死んでいるのを発見。しかし突然鳴った電話の声は傍らで死んでる妻の声。状況が分からない石神のもとに警察を騙る2人の男が現れるが、...... [続きを読む]
受信: 2014年1月30日 (木) 22時33分
» 【ゲノムハザード ある天才科学者の5日間】信用できるのは記憶よりも記録 [映画@見取り八段]
ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 監督: キム・ソンス 出演: 西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田学、中村ゆり、パク・トンハ、イ・ギョンヨン、伊武雅刀 公開: 2014年1月24日 2014年1月29日。劇場観賞 どうなってるの?どうなってる…... [続きを読む]
受信: 2014年1月31日 (金) 02時26分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [象のロケット]
ある日、デザイナーの石神武人は自宅で殺された妻を発見する。 呆然としながら突然鳴った電話に出ると、受話器から聞こえて来たのは傍らで冷たくなっている妻の声だった! 正体不明の男たちに追われるようになった石神は、自分が韓国人科学者オ・ジヌであると知らされる。 彼の記憶は“上書き”されていたのだった…。 サスペンス・アクション。... [続きを読む]
受信: 2014年1月31日 (金) 17時59分
» 「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 [ここなつ映画レビュー]
面白いとは限らないよ、いやぶっちゃけもしかしてつまんないかも、だよ、と予め布石を打ちつつ…誰に対しての布石?いや同行を依頼した息子に対してと自分に対して…原作未読のまま鑑賞。日韓合作は互いのいいところが打ち消される不思議がこれまでの常だったし、まあ誰にも言えない本音は西島秀俊を観るためだけだったので。こんな事でいいのか、私…?と思いつつ。 で、観終わった感想。まずは息子から。「途中までびみょ~だったけど、最後の方は面白かった(結構ポップコーンなどのスポンサー=私に気を遣ってます)」。あ、そうね、それ... [続きを読む]
受信: 2014年2月 4日 (火) 13時07分
» 映画『ゲノムハザード』 [ほし★とママのめたぼうな日々♪]
先日のミリオン座、第1回上映前の番組 「おすぎの『この映画、観なさいっ』」で プッシュされていた映画です。 韓ドラに [続きを読む]
受信: 2014年2月 4日 (火) 21時42分
» 『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」□監督・脚本 キム・ソンス □原作 司城志朗 □キャスト 西島秀俊、キム・ヒョジン、真木よう子、浜田 学、中村ゆり パク・トンハ、イ・ギョンヨン、伊武雅刀
■鑑賞日 1月26日...... [続きを読む]
受信: 2014年2月 7日 (金) 08時21分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [愛猫レオンとシネマな毎日]
韓国のキム・ソンス監督が、司城士朗さんの同名小説を実写映画化したもの。
主人公はデザイン会社に勤務する石神武人。
帰宅すると妻が殺されていて、すぐに警察を名乗る男達から追われることに・・・
混乱の中、彼の頭の中には別の記憶が蘇り始め、本当の自分は韓国人の天才科学者で
あることがわかります。
自分の記憶は上書きされていた・・・なぜ?
西島秀俊さんのアクション・サスペンスということで鑑賞。
西島さんの細マッチョの鍛え抜かれた身体にホレボレ(笑)
多分、ワタシのように西島さん目当ての女子は多いので... [続きを読む]
受信: 2014年2月 9日 (日) 22時41分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [Break Time]
今朝は、気温−5と この時期らしい・・・ [続きを読む]
受信: 2014年2月10日 (月) 06時06分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [迷宮映画館]
ちょーーっと、乱暴すぎるお話で、若干興ざめ [続きを読む]
受信: 2014年2月11日 (火) 08時50分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [映画と本の『たんぽぽ館』]
本当に自分は、自分が思っているとおりの自分なのか・・・?
* * * * * * * * * *
楽しみにしていた西島秀俊主演作。やっと見ました!
ねえ、考えてみたらこれまでたくさん西島秀俊出演作を見てきたけれど、
劇場で見るのはこれが初めてなのでは...... [続きを読む]
受信: 2014年2月16日 (日) 21時08分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [だらだら無気力ブログ!]
予告編観てなければ、もっと楽しめたかも。 [続きを読む]
受信: 2014年2月23日 (日) 17時21分
» 14-094「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」(韓国・日本) [CINECHANが観た映画について]
記憶は消えても、思い出は残る
ある日、帰宅した石神武人は妻の死体を発見し、動揺する。そこへ突然の電話が鳴る。しかし受話器から聞こえてきたのは、目の前で死んでいるはずの妻の声だった。
その直後、石神は警察を騙る2人組に掠われかけるが間一髪で逃走し、偶然通りかかった韓国人女性記者のカン・ジウォンに助けられる。
2人は協力して事件の解明に乗り出すが、次第に石神の不可解な記憶の混乱が明らかとなっていく。
何が本当の記憶で、自分は何者なのか、真相の核心へと懸命に迫っていく石神だったが...... [続きを読む]
受信: 2014年6月22日 (日) 13時39分
» ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 [いやいやえん]
スーツ着てたらわからないけど、西島秀俊さんのムキムキの上腕筋が凄いー。監督は韓国のキム・ソンス氏。
韓国映画のサスペンスフルな展開を日本人俳優が演じてくれるのかと思ったら…いや、そうなんですよ、そういうことになっているんですよ。でも、なんか違うんだなあ。
運転できないはずなのに車が動かせたり、突然記憶が曖昧になったり、薬品に対しての知識をもっていたり、ハングル語が理解出来たり。あれっ…自分は、一体誰なんだ?
わけもわからず薬品を持ち歩いたり、記憶についてやたら知識が豊富だったり。ただ邦... [続きを読む]
受信: 2014年7月15日 (火) 17時06分
» 「ゲノムハザード ある天才科学者の5日間」 [ゆっくり歩こ。]
ちょっと期待してたんだけどな〜
ん〜〜・・・・ 気になってしまったのです、話す言葉が・・・
石神武人は韓国人なんですよね
途中、チラっと韓国語を喋りますが・・・
本格的に話すのはラストのところだけ
韓国人の女性編集者が喋る日本語のように
不自然さが...... [続きを読む]
受信: 2014年7月24日 (木) 14時24分
コメント
sakuraiさん、こんにちは!
ツッコミどころはいくつかありましたよね。
都合のよい展開も少し気になりました。
真木よう子さんの出演が少なかったのはさもありなんで予想の範囲でしたが、個人的には中村ゆりさんがきれいだなーと思ってそちらを堪能しておりました(笑)。
投稿: はらやん | 2014年2月11日 (火) 13時55分
最初のつかみのところもそうですが、途中の展開も乱暴すぎて、どんどんと興ざめして行きました。
男性陣も真木さんの出演が少なくて、がっくり感があったんじゃないですかね。
西島君は堪能できたんですが、もうちょっと丁寧な脚本にしてほしかったです。
投稿: sakurai | 2014年2月11日 (火) 08時50分
Nさん、こんばんは!
いえいえ、こちらこそご指摘ありがとうございます。
原作にも興味が出ましたので、今度読んでみたいと思います。
投稿: はらやん | 2014年1月29日 (水) 23時18分
返信ありがとうございます。
こちらも「真木さんです」と断言するのは間違っていましたね。失礼しました。
元の人格を韓国人にしてしまったことや、真木さんの設定など、残念な部分も多々ありました。
原作はとても面白いのでお勧めです。
投稿: N | 2014年1月29日 (水) 10時56分
Nさん、こんにちは!
確かに「もしもし」のところは真木さんのしゃべり方のようですが、声質を変質させている処理をしているような。
「実家に来てるの」のところは本人の声とは違っているように感じます。
誰だかわからないように処理しているのでしょうか。
中村ゆりさんであるというのは言い過ぎでしたね。
投稿: はらやん | 2014年1月29日 (水) 07時02分
電話の声は真木さんですよ http://www.youtube.com/watch?v=3B75BbzshyY
投稿: N | 2014年1月28日 (火) 23時12分