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2013年12月 8日 (日)

「利休にたずねよ」 物語の構成に難あり

本作、物語の構成にちょっと難ありなのではないだろうか。

<ということでネタバレありなので、未見の方は注意>

本作は千利休が切腹をする朝から幕を開けます。
そして物語はいったん21年前、利休が織田信長にその才を見せつけるところに時を戻します。
それから動乱の世の移ろいを描くのとあわせ、利休の人生が語られていきます。
織田信長の勇躍、その死、そして秀吉の台頭、天下取り。
彼らが武力によって世を圧倒するのと異なり、まさに美の力によって利休は精神的な影響を武士たちに与えます。
その力を妬まれた利休は、やがて秀吉により死に追い込まれていくのです。
このように茶人利休の人生を描くのですが、切腹の日を迎える場面になると、また物語の時は戻り、利休が茶人として名をなすその前の若き日について語られます。
そこではどうして利休が、天下に並びなき茶人となっていったのかという理由が解かれていきます。
この利休の若き日の秘密は、彼がどうしてこのような男となったのかという謎を解くミステリーと言ってもいいでしょう。
ただし、そうするとこの物語は非常に前振りが長い頭でっかちの構造になっていると思うのです。
この前段(といってもかなり長いが)では利休が究極の美の探求者であったということを彼の生涯を描きながら描かれます。
それは一般的に、一般の僕たちが持っている利休のイメージに近いものだと思います。
ただあまり歴史に詳しくない人もいるということなのか、人物を説明するこの部分がかなり長い。
というより僕は観ているときこの部分が物語の本筋だと思っていたのですが、そうすると利休にしても利休の妻や秀吉にしてもキャラクターの描き方が薄いと思ったのですね。
特に利休の妻はキーパーソンなのかどうなのかよくわからない(それは観終わってもそう思いました)。
利休も感情を出す人物として描かれているわけではないですし、秀吉にいたってはただの欲深な男というだけなので、何か感情的に揺さぶられることがありません。
なにかもの足りないと思いながら観ていたら、また物語上では時が戻って利休の謎が描かれるわけです。
観終わったあと考えれば、物語としてはこちらのほうが本質だと言ってよいかと思いますが、そうなると前振りの部分が非常に長いという印象に変わりました。
前段では美を求める静かながらも揺るぎない心を持つ男、利休というパブリックなイメージに従い描き、そしてどんでん返しのようにその人物像の隠された部分である、激しさを描き、観ている人の驚きをうむと意図だと思うのですが、なにかアンバランスな感じがあります。
ミステリーは状況説明と謎の提示があって、その後いくつかの解決方法が検討されたなかで、最後にその謎が解かれるというのが基本構造だと思います。
しかし、本作は謎の提示というのがはっきりとない。
謎は「利休はなぜこのような人物であったのか」ということだと思うのですが、前半はまったくそのようなことは語られません(最後まであまりはっきりとはありませんが)。
だから結果的には状況説明の前振りであった部分を本筋だと思ってみてしまう。
そもそも謎解きの物語だとは思わない。
だから意外などんでん返しであったとしても、謎の認識がないから驚きにも繋がらない。
どうもしっくりいかないなと思いながら、考えていたらこういうような結論になりました。

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コメント

sakuraiさん、こんにちは!

そうなんですよね〜。
何をたずねるのってのはその通りだと思います。
最後まで観れば「利休が本当に愛していたのは誰だったのか?」ということなのだろうと思いますが、本文に書いたように謎の提示がちょっとなという感じがしますし。
うーむ・・・という感じですね。

投稿: はらやん | 2014年2月 1日 (土) 07時43分

何をたずねよ、、、と言うんでしょう。
雰囲気と道具だけで映画作りました!!て言われてもですよ。
エビゾウさんは、作品に恵まれませんね。
構成もめちゃくちゃだったし、時代考証もあきれるほど。
よくまあ、皆が知ってるキャラを使って、こんな勘違い映画が作れたもんだと逆に感心してます。

投稿: sakurai | 2014年1月30日 (木) 08時17分

Nakajiさん、こんばんは!
こちらこそ本年もよろしくお願いします。

そうなんですよね〜。
どういう謎があるのかという提示がないともやっとしますよね。
そもそもミステリーではないのかもしれないですが、そうすると予告の煽り方が違うかなと思ったりします。

投稿: はらやん | 2014年1月 9日 (木) 23時40分

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

>しかし、本作は謎の提示というのがはっきりとない

って思いました。
だからすっきりとしない映画でもありましたね~

投稿: Nakaji | 2014年1月 6日 (月) 13時38分

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