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2013年10月12日 (土)

「R100」 わけわかんないことへのエクスキューズ

松本人志監督は今までに3作品撮っていますが、どれもクセがある映画です。
人によっては「わけがわからん!」という方もいらっしゃるとは思いますが、僕は今までの作品は大好きというまではいかないですが、個性的であると評価してきました。
最近の日本映画はどちらかというと冒険心がなく、観客に受けることを考え、手堅く作っているものが多いですが、そんな中で自分の個性、クセというものを押し出すという作品作りは嫌いではなかったのです。
けれども、本作では作品への向かい合い方みたいなものがどうにも鼻につき、作品そのものよりも気になってしまって仕方がなかったのでした。
作品自体は今まで同様にわけがわからない感じというのはあります。
「しんぼる」もわけがわからない感じはありましたが、あれは「不条理さ」がひとつの作品の軸になっていたので安定感はあったのです。
本作はどっちかというとどこに行くかわからない感じ、そしてそこへの道筋が行き当たりばったりな感じというところがあります。
ま、今回は作品そのもののわけのわからなさにはこれ以上触れません。
僕が気になった作品への向かい方についてです。
タイトルの「R100」というのは映画の年齢制限「R15」などにかけているものでしょう。
「R15」は15歳以下への観覧制限ですから、「R100」は100歳以下への観覧制限という意味合いでしょうか(作品の中にも100歳の映画監督なる人物が登場。おそらくこれは松本監督本人という意味合い)。
100歳まで生きて映画を観るなんて人はそう多くはいないでしょうから、これは「ほとんどの人はこの映画を観るのは制限します」という意味と解釈できます。
ぶっちゃけ「ほとんどの人はこの映画観てもわかんねーよ」という意味と考えられるわけです。
まず、この映画を見てほとんどの人は「・・・よくわからん」と思うでしょう。
そう言われることを見越して、「キミたちにはわかんないよね」と言っているような気がするわけです。
あと、作品中に時折、この「R100」という映画を観ている映画会社の関係者のシーンというのが挿入されます。
メタ的なシーンですが、ここでは映画関係者が「R100」を評して、「わけがわからない」「辻褄があわない」などと言うわけです。
これも実際観ている観客が言いそうな感想なわけですね。
このシーンがすごく気になったんです。
「俺らは、お客のみんなが言いそうなことはわかってんのよ、わかった上でこういう映画を作ってんの」と言っているような気がしたんですね。
こんなことはわざわざ表現しなくていいんじゃないでしょうか。
わけがわからない映画、けっこう。
作ればいいじゃないですか。
それを観て、観客がああだこうだという、そういうわけのわからない映画もおもしろい。
逆説的ですが、そういう映画を作る人は、観客のことなんて考えずにその人の持つ独自のワールド、世界観を自信をもって作ってほしい。
本作のタイトルや挿入されるメタ場面からはかえって「観客の感想をすご〜く気にしてる」感じが伝わってくるんです。
松本監督は過去の作品(特に最初の2作品)はほとんど観客の評価など気にしないで作っていた気がします。
しかし「さや侍」はちょっと観客の目線を気にし、多くの人に受け入れられるようクセをやや抑えた感じがしました。
そのためか評価としては、どっちつかずであまり高くなかったかと思います。
そういうことから本作は初心に帰り自分の世界観を押し出そうとした意図を感じるのですが、しかしそこの観客を意識したようなエクスキューズを感じてしまったのです。
これがひどく醜いものに感じられ、どうにも観ていて居心地が悪い気分になったのでした。

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