本 「警官の血」
「北海道警」シリーズ等の警察小説で有名な佐々木譲さんの作品です。
本作は戦後から現在まで警視庁の警官となった親子三代の男たちを描く、言わば警察を舞台にした大河小説ですね。
佐々木さんは「制服捜査」等でも、制服のいわゆる駐在さんをとりあげていますが、本作でも下町の駐在警官を題材にしています。
この方の作品は「北海道警」シリーズなどもそうですが、警察の闇の部分にフューチャーしていきます。
元々「北海道警」シリーズは実際にあった道警の裏金問題からヒントを得たということですが、そういう警察の暗い部分を本作では描きます。
ただいわゆる巨悪を暴くといった物語になっているわけではありません。
警察という組織は、悪を相手にするということもあり、すべてが真っ白な活動であるというわけではありません(建前はそうでしょうけれども)。
白でもなく黒でもないグレーの部分もあるのでしょう。
正義を執行するためにグレーの領域にも踏み込まなければいけない、けれど正義のためという目的をもってグレーの領域に入ったとしても、いつの間にか黒くなってしまうこともある。
佐々木さんの作品はこのグレーの領域で黒くなってしまった者、白のままで留まる者、そういった男たちを描いていると思います。
本作はそういった男たちを親子三代の大河ドラマで描き、かつ戦後の警察史を合わせて読むことができる読み応えのある作品となっています。
上下巻合わせてボリュームはありますが、一気に読めること請け合いです。
「警官の血<上>」佐々木譲著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-122322-3
「警官の血<下>」佐々木譲著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-122323-0
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