「謝罪の王様」 早く、誠意をもって
阿部サダヲ主演、宮藤官九郎脚本、水田伸生監督のトリオは「舞妓Haaaan!!!」、「なくもんか」に続いて本作で3作目になります。
宮藤さんはいつも目の付け所が普通の人とちょっと違うんですよね。
「舞妓?」とか「海女?」とか。
今回は「お詫び」ですし。
この他の方とはちょっと違うところに注目し、そのネタをどんどん膨らませてエスカレートさせていくのが、宮藤さんの脚本の真骨頂でしょう。
宮藤さん自身が監督をすると、このエスカレートがずれた方向に行ってしまうこともありますが、水田さんは宮藤脚本の料理の仕方が上手なのかな。
エスカレートしたり大げさになったりするんですけれど、シュールな方向にいかないというか。
割とオーソドックスに笑いをとってくる演出なので、安心感がありますね。
また主演の阿部サダヲさんもハイテンションな演技をするんですけれど、なかなか他の俳優さんではこの味は出せません。
ハイテンションが地のようなというか、自然なんですよね。
無理している感じがしないのが良いです。
阿部さんの役は「舞妓Haaaan!!!」では、他の登場人物とは違う特異なキャラクター(つまりは変わった人)でしたが、本作での役はハイテンションながらも実は登場人物の中で一番常識人という感じでしたね。
謝ることを仕事をしているだけあって、相手目線で行動している。
けっこう他の登場人物は自己中心的な人が多かったですよね。
「泣くもんか」の役は周囲の人に振り回される感じでしたが、本作はこれだけ変わった人がいるのにも関わらず自分のペースを守っている意外と安定感のある役でした。
いくつかのエピソードが展開される本作ですが、それらもどこかで関連している作りになっていて脚本も凝っていた感じがしましたね。
今回宮藤さんが注目した「謝罪」。
確かにこれは日本人ならではかもしれません。
企業のトップや役人がカメラの前に並んで一斉に「申し訳ございません」とやるのは、日本だけかも(最近あまりにこの光景ばかり観るので、重みがなくなってきたような気がしますが)。
本作でも謝罪のポイントがいくつか紹介されていますが、「早く」「誠意をもって」というのは大事ですよね。
何かしてしまっても「早く」「誠意をもって」対応すると、意外とイメージは逆に良くなったりするものです。
企業のクレーム対応などでもよく言われますよね。
でもなかなかこの「早く」「誠意をもって」というのは難しい。
なるべくなら謝りたくなくて、そのままズルズルとしてしまうと、見慣れた「申し訳ございません」という光景になってしまうのですよね。
あと何かされて怒っている側の方も、早く許したいという気持ちもあるんですよね。
怒り続けるというのもなかなかエネルギーがいるもの。
怒ると疲れるわけです。
でもなんとなく怒るのを止めると、相手も許されると思うのがシャクで怒り続けるんですよね。
カッとしたときに相手がすぐに「すみませんでした」って言ってくると、「ま、わかってくれればいいよ」って感じになります。
スッと怒りの炎が沈静化するというか。
日常的な怒りの部分でいうと、相手がしでかしたことに対して何か保証してくれるということが大事なのではなくて、自分の気持ちをくんでくれているとわかるということが大事なんですよね。
逆に本作でも出ているように「なんか〜、すみません」とくると、カチン!ときちゃいます。
「口では謝っているけど、本気でそう思っていないだろ!」って。
やはり「早く」「誠意をもって」が大事ですよね。
| 固定リンク | コメント (4) | トラックバック (36)
最近のコメント