「劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日」 目をそらさない
失礼ながら大きな期待をしていなかったのだけれど、かなり楽しめました。
元々はシーズン5まで放送されているNHKの番組なのだそうですが、ドラマではなくフェイクドキュメンタリー形式の歴史教養番組ということ。
知らなかったですが、おもしろそうな番組ですね。
主人公沢嶋(要潤さん)はタイムスクープ社の時空ジャーナリスト。
彼の仕事は過去にタイムワープして、そこに暮らす人々の姿をレポートし、それをアーカイブすることです。
時間旅行を題材にした映画は数あり、その多くは過去に干渉したことによる歴史の改変をどうするかっと言ったものが多いですよね。
本作も基本的にはその流れなのですが、上で触れた時空ジャーナリストという設定がおもしろい。
沢嶋がレポートする場面は、ニュースやドキュメンタリーでもお馴染みなハンディカムを使ったような映像や、沢嶋が観ているような主観映像、または小型カメラを使ったような映像を使っています。
これは映画的ではなくテレビ的な映像であるのですが、それがライブ感を醸し出していて、中継映像を観ているような感じがしてきます。
この立ち会っている感に新鮮な印象を受けました。
そして沢嶋が所属するタイムスクープ社の第二調査部という部署は、歴史の中でも市井の人々の様子を記録していくのが仕事ということです。
ちなみに第一調査部というのもあり、こちらは大きな歴史上の事件を扱う部署なのですが、普通に映画的に考えるとこちらの部署のほうを題材にしそうですよね。
大きなイベントや歴史上の大人物を登場させられそうですし。
けれど本作は本能寺の変から安土城炎上までといった日本史の中でも超大イベントを描きながらも、織田信長や明智光秀、豊臣秀吉や徳川家康などといった有名な歴史上の人物を登場させていません。
あくまでも描くのはその時代を生き、歴史の大事件に巻き込まれた人々。
この視点はユニークですね。
あとこういうタイムトラベルものでは、未来から訪れた者が歴史の改変、特に人の生死や恋愛などで干渉してしまうというのがよくあるパターンです。
本作では沢嶋たちはあくまでジャーナリストという立場を守り、歴史の改変は防ごうとするものの、目の前で起こる人の生死には関与しようとしません。
関与すること自体が歴史の改変につながるということがあるかもしれないですが、やはり彼らはジャーナリストで事実をしっかりと見つめ、伝えるということに使命感を持っているのだと感じました。
印象的なのは、沢嶋と新人ジャーナリストの細野(夏帆さん)が野盗に捕らえられ、そして人買いに売られたあとのシーンです。
彼らの目の前で村人は痛めつけられ、いっしょに行動していた侍も殺されようとします。
まだ未熟な細野はそれを止めさせようと叫び、そして目を逸らそうとします。
けれども沢嶋は「目をそらすな」と彼女に言います。
いくら悲劇的なことであろうと、いや悲劇的なことであろうと目をそらせてはいけない。
起こった出来事をしっかりと見て、それをありのままに伝えるというのがジャーナリストであるというのが沢嶋の考えなのでしょう。
タイムトラベルものというのは歴史に関与するというのが話の肝だったりするのですが、本作は歴史に関与しないというスタイルを貫くということで物語を作っているのがおもしろいなと感じたところです。
テレビのシリーズも気になったので今度観てみようかな。
あと本作の見所のひとつは夏帆さんかな〜。
初登場シーンはセーラー服での潜入だったのですけれど、まだまだ高校生役いけるじゃん!と。
と思っていたらその後はタイムスクープハンターの制服になるのですが、これはこれで大人っぽくてよろしい。
手足長くてスタイル良いですね。
というところで眼福でありました。
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ドキュメンタリー風に作られた、NHK歴史教養ドラマの劇場版。
時空ジャーナリストがタイムワープして、その時代の様子を映像で記録。
教科書には載らない真実をスクープしようとします。
ドラマの方は未見です。
スルーするつもりだったけど、安土城消失のミステリーに惹かれて鑑賞。
う~ん・・・これほど映画のレベルが低いとは思わなかった。
映画は、テレビと違って、お金を払って見るからね。
レディースデイの千円でも不満でした。
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ところがその道中、一行は“未来の武器”を使う謎の山伏に襲われ、楢柴は滝壺へと消えてしまう。
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タイムスクープハンター スペシャル「お正月パニック!改暦大騒動」から興味を持ち、劇場版を見てみました。キャスティングも、要潤、夏帆、杏、時任三郎、上島竜平、小島聖、カンニング竹山、嶋田久作、宇津井健と、なかなかに豪華。意外にも、お笑い方面の上島竜平とカンニング竹山が、味のある存在感で、想像以上にハマっていて、ヨカッタです。NHKの人気歴史教養番組だそうですが、茶器を追い、戦国時代、昭和60年、戦時中、と様々な時代をワープし、安土城消失の謎に迫る、完全にSF活劇でした。突っ込みどころは満載ですが、ふと... [続きを読む]
受信: 2015年1月22日 (木) 08時28分
コメント
sakuraiさん、こんばんは!
テレビシリーズは観ていなかったのですが、こちらを観て、観てみたいなーと思いました。
おっしゃるとおり、市井の人々を追うっていうのがありそうでなかった視点ですよね。
投稿: はらやん | 2013年11月 8日 (金) 23時06分
宇津井健さんのわかんなーーい・・と言っておこう。
TVシリーズは、全部じゃないけど、結構見てました。
歴史の先生としてはなかなかよくできてる!といつも感心してました。
月代とか、マジに沿ってるんですもの。で、それで結ったらこうなる・・・みたいな感じで。
何より、いつも市井の人たちを追う!という視点がとっても好きでした。
今回も題名は大風呂敷でも追うのはちゃんと市井の人。
でも何より怖かったのは、1940年代だったということで。
投稿: sakurai | 2013年11月 6日 (水) 13時23分
ふじき78さん、こんばんは!
「天然コケッコー」からずいぶん経っていますが、夏帆さん、まだまだセーラー服いけますねー(笑)。
たしかに眼鏡っ娘好きな方には溜まらないかも。
>宇津井健がスーパー・ジャイアンツの衣装
なかなかこれわかる方、少ないでしょうね・・・(笑)。
投稿: はらやん | 2013年10月27日 (日) 20時42分
こんちは。
夏帆ちゃんのセーラー服が本当に全く違和感がなかったですね。童顔だからかな。メガネかけた瞬間可愛すぎてビビりました。
夏帆ちゃんも随分セーラー服でならした過去があるって事で(銭形零とか天然コケッコーとか)、わしも昔の衣装でって、宇津井健がスーパー・ジャイアンツの衣装で本部にいたらビビルだろうなあ。
投稿: ふじき78 | 2013年10月27日 (日) 10時13分