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2013年8月14日 (水)

「SHORT PEACE」 3DCGによる新しい表現へのチャレンジ

昨年大友克洋さんの「GENGA展」を観に行ったときに、本作のプロジェクトについても展示がされていまして公開を待っていました。
とは言うものの公開館が少なかったため、なかなか劇場まで足を運べず、本日ようやく観てきました。
本作は5編(オープニング・アニメーション、「九十九」、「火要鎮」、「GAMBO」、「武器よさらば」)の短編映画集です。
本作はアニメーションという進化し続ける技術で、どのような新しい表現ができるのかということへの表現者たちのチャレンジだと思いました。
アニメーションは手描きの時代からスタートし、現在ではコンピューターによる3DCGを多くの作品で使っています。
ただし3DCGアニメと言われて、多くの人が思い浮かべるのは下記のふたつのタイプのアニメでしょう。
ひとつはピクサーやディズニーによって作られる3DCGアニメーション。
もうひとつは「ファイナル・ファンタジー」等のゲーム内のムービーのようなリアルタッチのアニメーションです(ロバート・ゼメキスの作る作品もこっち側ですね)。
アニメーションはひと頃「マンガ映画」と呼ばれていたように、本物のような写実的な表現ではなく、マンガのように簡略化、形式化された絵柄を動かすものでした。
ただ3DCGの発達により実写のようにリアルな表現が可能になってきたことにより、「不気味の谷」問題が発生します。
これはこちらのブログでも時々取り上げています。
ピクサーの作品はこの「不気味の谷」を回避するために、キャラクターを適度に形式化(ようはマンガっぽさを残す)しているのだと思います。
逆にリアル派のほうは、どんどん技術を進化させてリアルと区別がつかないほどまでに表現がいきつけば「不気味の谷」は越えられると考えているように思います。
今度公開される「キャプテン・ハーロック」などはこっちの考え方でしょうね。
とはいえ、この二択以外にも答えはあるだろうということで、最近盛んになってきているのが、トゥーンレンダリングという技法です。
これは昨年の「009 RE:CYBORG」などでも使われているものですが、3DCGアニメで作られているけれどもリアルなレンダリングをするのではなく、みなが見慣れているアニメ調にレンダリングする技術です。
3DCGでしかできないカメラワークなどをしつつ、「不気味の谷」は回避するという考え方ですね。
さて長々と昨今の3DCGアニメーションの技術に書いてきましたが、本作は「不気味の谷」を回避するということではなく、この新しい技術を使って新しい表現ができないかということを考えた実験だと思いました。
3DCGの弱点を書いてきましたが、手描きアニメーションにも弱点はあります。
そもそも手描きアニメーションが簡略化した絵柄で作られていたかというと、人の手であまりに複雑な絵柄は描けない、動かせないということがあったと思います。
またカメラワークも手描きアニメーションでは限界があります(それでもジブリのアニメーションは手描きでかなりカメラを動かしますが)。
逆に3DCGアニメは複雑なテクスチャや線が多い絵柄などは得意ですし、また複雑なカメラワークも可能です。
手描きではできない3DCGアニメだからこそできる、でも疑似実写志向ではなく、あくまでアニメーションとしての可能性を探ることを本作は志向していると思います。
「九十九」にはそのチャレンジと可能性を感じることができました。
日本の着物の和柄などは手描きのアニメーションで本作のように動かすのは不可能だと思います。
小さな和室で色とりどりの傘や着物が舞うように飛び、それを縦横無尽にカメラが動き捉える。
登場人物はトゥーンレンダリングで描かれているとは思いますが、ほどよい体温というか手触り感を感じるテイストになっています。
このあたりの匙加減は上手だなと思いました。
「火要鎮」は大友克洋さんが監督で、絵巻物のような構図、タッチといった新しい表現を試みていました。
作品の中身は情感のあるもので3DCGのイメージとは逆の方向性のストーリーですが、それはあえてこういうこともできるのではないかというチャレンジであったと思いました。
「GAMBO」は石井克人さんらしい生々しい感じの話。
この生々しさみたいなものはやはり3DCGが苦手とするような感じだと思いますが、筆っぽいタッチの線画や、荒々しいキャラクターの動き等が見事に表現できていたと思います。
最後の「武器よさらば」は手描きアニメーションだと何年かかかるかわからないほどの高密度の線で構成された武器やプロテクションスーツがやはり縦横無尽に動き回ります。
これはCGでないとできない。
「武器よさらば」は元々大友克洋さんの短編漫画ですが、本作も大友さんのタッチで描かれています。
大友さんの漫画は見ればわかるように線が多い(建物とかメカニックとか)。
これを動かすのは手描きだと限界があります。
大友さんの作品の本当のアニメ化は3DCGがないとできないのではないかと思います。
そういう点でこの作品も3DCGアニメの可能性を探る作品であったと思います。
総じてどれも今までとは違った3DCGの使い方を志向している作品であると思いました。
ストーリーという点で言うともう少しというところはなきにしもあらずですが、新しい表現をしてみようということではそのチャレンジと成果は感じられました。
こういうチャレンジ、他にもいろいろな人がしてくれるともっと豊かになると思うんですよね。

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