本 「天使と魔物のラストディナー」
木下半太さんといえば「悪夢」シリーズが有名ですが、こちらは別のシリーズで、「東京バッティングセンター(「美女と魔物のバッティングセンター」へ改題)の続編になります。
「東京バッティングセンター」は読んでいるんですが、ほとんど記憶に残っていませんでした。
本作では理不尽な犯罪等に巻き込まれ死んだ者は時折、魔物として復活します。
その魔物は吸血鬼であったり、人魚であったり、フランケンシュタインであったりと様々なのですが、何かこの世でやらなくてはいけないことを持っています。
ただ彼らは殺された当時の記憶は忘れていて、何をしなくてはいけないかを思い出せていません。
このシリーズのレギュラーの登場人物である土屋とタケシも吸血鬼であり、彼らは復活した魔物たちの復讐を手伝う「復讐屋」をしています。
魔物たちが過去の記憶を取り戻していき、事件の真実が浮かび上がっていくという展開はミステリー。
そこでわかる真実は意外であり、短編ミステリーとしておもしろく読めます。
あといつもの木下半太さんよりも切ない感じがしているように思いますね。
本作の最後のほうで生きている人間でありつつも、その精神はモンスター的である登場人物が出てきます。
彼のやっている所行は恐ろしいものですが、彼の精神は狂っていながらも切ない感じが漂っています。
この切なさみたいなものが本作は全編通してありますね。
木下さんの作品はどんでん返しや、次から次への早い展開など飽きさせない作品という印象が強いですが、その底にはいつも切なさがあるようにも感じます。
本作はそのあたりが強く出ている作品のように思います。
前作「東京バッティングセンター(「美女と魔物のバッティングセンター」へ改題)の記事はこちら→
「天使と魔物のラストディナー」木下半太著 幻冬舎 文庫 ISBN978-4-344-41999-5
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