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2013年8月18日 (日)

本 「繋がれた明日」

文庫本でもけっこうな厚みがあり、題材としても重い内容ではありながらも、一気に読んでしまいました。
主人公中道は10代の時にふとした弾みで殺人を犯してしまい、刑務所で刑に服していました。
彼は人を殺してしまったことへの罪の意識はもちろんありますが、裁判官にも警察官にも弁護士にも自分の言っていることが聞いてもらえなかったことに恨みにも似た気持ちを抱いています。
もともと被害者側が中道の彼女にちょっかいをだしていたこと、そして最初に被害者側が手を出したことを彼らは聞いてくれなかったのです。
彼らが見ているのは、ナイフを握って中道が相手を刺し殺してしまったという事実だけを見ているのです。
そして数年が過ぎ、中道は保釈されます。
中道は自分がかつてバカなことをしたという意識はありますし、その罪を背負わなければならないという気持ちもあります。
そしてそういった経歴を持ってしまったことでその後、周囲の目線を気にし、世間でどうやって生きていけばいいのかという不安を持っています。
そして同時に怒りや恨みという感情も捨て切れていません。
保護司の助けもあり、仕事やアパートを見つけ、再スタートを切ろうとする中道ですが、その周囲で彼の前科に触れた中傷ビラが配られます。
彼の前科を知り、彼への態度が変わる周囲の人々。
また自分の家族は彼によって長い間いろいろなものを背負ってきており、その怒りをぶつけられます。
そして被害者の家族にも。
理不尽なこと、そして自分がしてしまったことへの当然の報い。
中道の心の中で、罪を悔いそれの責任を負おうとする気持ちと、理不尽なことへの怒りといった対立する感情がうずまきます。
この中道の感情の揺れ、そしてそれによる彼の行動が物語にダイナミックさを与え、本作を一気に読ませます。
一度犯してしまった罪は一生背負い続けなくてはいけないのか。
許されるべきなのか、許されてはいけないのか。
法律的に考えてということと、感情的に感じてというのは違います。
どちらがどうというよりも人間の中で両方あるんですね。
中道だけでなく周囲の人々も揺れます。
彼を許すのか、許さないのか。
許さなければずっと恨みに見を沈めたまま生きていかなければならない。
恨みを胸に抱いていなければ、心の空隙を埋めて生きてはいけない。
主人公の心、そして周囲の人の心の揺れが描かれ、読み応えのある一冊でした。

「繋がれた明日」真保裕一著 朝日新聞社 文庫 ISBN4-02-264359-5

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