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2013年7月13日 (土)

本 「あかんべえ」

宮部みゆきさんは、現代ものから、ファンタジーなど多くのジャンルの作品を書いていますが、時代ものも多く書かれています。
ご本人が下町出身ということもあり、東京の東側の下町が舞台になることが多いですね。
宮部さんの作品は好きなものが多いのですが、純ファンタジーものは実はあまりいいと思ったものはないのです。
ファンタジーもので個性を出すところの世界設定等が意外とステレオタイプなところがあるからかもしれません。
物語は宮部さんらしいお話でもちょっと気になってしまうのですね。
僕が思うに、宮部さんはファンタジー的な要素が入る場合は本作のような時代もののほうがしっくりといきます。
宮部さんの時代ものは単純な人情ものというより、ミステリーだったりファンタジーの要素が入ってくるものが多いですよね。
本作でも幽霊が登場してきます。
こういう非現実的なものは現代とは違う世界のほうが扱いやすいのですが、宮部さんの場合は時代ものがしっくりくる感じがします。
宮部さんの作品のレビューでたびたび触れるのは、完全なる悪なる者と、純粋なる善のなる者が登場してくるということです。
彼女の作品の登場人物では、本当に救いようのないほどの悪心を持つ人物が登場します。
文字通り救いようがないほどに。
彼・彼女によって何人もの人の人生がめちゃくちゃにされたりします。
しかし、それに対するように純粋なる善のものもかならず登場します。
本作でいうと主人公のおりんです。
宮部作品ではこのような人物は少年・少女であることが多いです。
彼女らの無垢なる心が、救いようになりほどの悪にむちゃくちゃにされた人々の心を救うのです。
残念ながら完全なる悪の者は改心するなどの救いはありません。
これは宮部さん自身も完全なる悪はなくなるものではないと思っているからかもしれません。
本作では幽霊の姿は、その幽霊と同じような心情になった者しか見えないということになっています。
つまり幽霊のこの世に何か未練があるような心持ち、嫉妬などの感情と同じような心のある人がその幽霊の姿を見るというようなことですね。
完全なる悪はなくなることがなく、それほどではなくても悪心は人の心には少なからずある。
それと折り合いをつけていくのが大事なのでしょう。
その悪心は自分のことだけを考えてしまうときに芽吹くもの。
おりんのように自分の周りの人を大切に思う気持ちがそういった悪心をおさえることに繋がるのかもしれません。

「あかんべえ<上>」宮部みゆき著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-136929-7
「あかんべえ<下>」宮部みゆき著 新潮社 文庫 ISBN978-4-10-136930-3

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