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2013年7月28日 (日)

本 「ボックス!」

幼い頃からの親友同士、鏑矢と優紀。
鏑矢は中学生の頃からボクシングを始め、その負けん気と強靭さ天才的な反射神経で大会でも活躍するボクサーとなっていました。
優紀は勉強はできるものの、ひ弱であることから自信がなく、鏑矢の強さに憧れるだけでした。
しかし、優紀もあることをきっかけにボクシングを始めます。
優紀は元々こつこつと積み重ねていく、努力の天才とも言える少年で、顧問の指導を受け、着実に技を身につけ強くなっていきます。
彼はもう一つ、相手のクセを見抜くことができる目を持っていました。
その目と、努力によって身に付いた技で、相手の攻撃を見抜き、的確に技を繰り出すことができるようになっていくのです。
優紀も鏑矢とは違った点において天才だと言っていいでしょう。
ボクシングを題材にした小説や、漫画やテレビというのは以前よりたくさんあり、1対1で戦うスポーツであることから、丈VS力石のようなライバルの物語が多く描かれました。
本作も鏑矢と優紀という親友でありライバルを描く物語ですが、それぞれが相手に勝利するということがテーマではありません。
作中でも二人が戦うことはありますが、それがクライマックスではないのですね。
この物語の真髄は、この二人の少年が自分の良さというものをボクシングを通じて発見していくというところにあると思います。
鏑矢は超高校生級と言ってもいい強さですが、さらに彼の実力を越える稲村という選手に敗北します。
稲村の強さは鏑矢と比べても圧倒的であり、その敗北から鏑矢は暫くの間リングを離れます。
けれども鏑矢という少年のほんとうの強さは、単純にボクシングが強いというところでありません。
一旦は逃げたけれど、そのまま逃げ通すのではなく、戻ってくることができるというところに彼の強さがあります。
ボクシングのスタイルにも表れていますが、タフであり、そしてポジティブであることなんですね。
優紀は自分がひ弱であることが、固定観念のようにありました。
しかしボクシングを始め、そして進歩し強くなっていくに従い、自分の本当の強みというのを発見していきます。
努力し、その結果が着実に自分の身についている。
それが彼の中に自信というものを育んだのでしょう。
優紀は優秀な子でしたが、自信がない少年でした。
彼は自信を得たことにより、よりいっそう伸びていくのです。
相手を観察し的確に手を打っていくという彼のボクシングスタイルは、鏑矢と同様に彼の生き方そのものとなっていくのです。
ボクシングの物語はボクシングそのものが物語の中心になり、ボクシングの試合が終わると実は主人公の行き場がありません。
丈にしても力石にしてもボクシング以外では生きられないのです。
しかし、本作はボクシングを通して、少年の成長、すなわち彼らが自分の生き方のスタイルを見つけていく過程を描きます。
本作を映像化した映画にはありませんでしたが、小説は少し鏑矢のその後、優紀のその後が描かれます。
彼らの10年後は、ボクシングの経験を通して彼らが得たスタイルがやはり表れていて、なるほどなと思いました。

映画「ボックス!」の記事はこちら→

「ボックス!<上>」百田尚樹著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-277535-9
「ボックス!<下>」百田尚樹著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-277536-6

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受信: 2013年8月10日 (土) 11時32分

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